組織の力

2019.05.31

世界の成長企業から学ぶ! イノベーションオフィスのヒント vol.3

第7回働き方大学
「異文化とつながる」編 セミナーレポート

世界の成長企業の実践・実例を通して、イノベーションにつながる働き方やオフィスのポイントを紹介するセミナーが開催された様子をレポート。vol.1では、社内知の衝突につながる「部門を超えて交わる」について、vol.2では、「人財の多様性を高める」について取り上げました。Vol.3では社外知との衝突とにつながる「異文化とつながる」をテーマに、外部のワーカーやナレッジとの関わり方についてお話しします。講師は、国内外の働き方のトレンドや働く環境の研究、リサーチに携わるなかで様々な成功事例に触れてきた、コクヨ株式会社ワークスタイル研究所の研究員・田中康寛氏。

《関連記事》

Vol.2「人財の多様性を高める」編

 
 

社外知との衝突_異文化とつながる

自社とは異なる考え方やナレッジをもった社外人財といかにつながるかという視点では、以下2つのポイントを紹介したいと思います。
 
[出会い方]場を共にする
そもそも自ら出会いに行かないと出会えないのが社外の人たちですので、まずは場を共にする機会を設けましょう。そういった機会を増やす施策についてお話しします。
 
[深め方]同じ熱量になれる
さらに、出会って終わりではなく、同じ目的や同じ課題感をもっているかなど、熱い思いをお互いに享受することも重要です。とくに、社外企業と何かやりましょうと始めて、途中でプロジェクトが頓挫してしまう事態を解消するにはここがポイントだと思います。
 
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[出会い方]場を共にする

■招き魅せる場:自社のシーズを社外に伝える
社外組織を自社内に招き、自社オフィスを拠点に社外との出会いを実現する視点です。この視点では、カナダの大手電気通信会社「TELUS(テラス)」が実践するように自社シーズを活用した商品案を体験できる空間やそれを基に社外組織とディスカッションできる空間を設けることで、コラボレーションのきっかけをつくる例が参考になるかと思います。
 
■コミュニティに参加:大企業もコワーキングへ入居
これは、社外に既にできているコミュニティに参加してつながりを得ようとする視点です。日本でも大企業がオフィスとは別にコワーキングスペースを借りる例が増えつつありますが、こういった組織の枠を超えた不特定多数の人が集まる場に参加する動きも1つです。さまざまな立地のスペースを利用できるので自宅付近でも働けるといった福利厚生的に活用するケースもありますが、つながりたい人々が集まるスペースを戦略的に選ぶことも大切だと思います。例えば、大企業とつながりたいのか、クリエイターやアーティストとつながりたいのか、プログラマーとつながりたいのか、によって契約すべきコワーキングスペースは変わるはずです。
 
■成長支援:起業家を育てる
単に接点をもつだけでなく、ベンチャー企業の成長や活動への支援を通してつながりを増やす方法もあります。例えば、ヨーロッパ最大級のソフトウェア会社「SAP(エスエーピー)」は、活動拠点への出費や投資家との出会いといった、起業家が活動する上での課題を解消しやすいコワーキングスペースを創設・運営し、優秀な起業家をこのスペースに集めています。そして、オープンなスペース環境やイベントによって、やってきた起業家と自社社員をつないでいるのです。
 
また、自動車メーカー「MINI(ミニ)」が運営するニューヨークの「A/D/O(エーディーオー)」という施設では、ワークスペースを提供するだけに留まらずMINIが打ち出しているヴィジョンと共鳴するスタートアップを募り、特定の期間で事業成長を支援する、いわゆるアクセラレータープログラムを運営しています。こういったプログラムを通して、自社のヴィジョンを達成したり、よりシナジーが生まれやすいスタートアップとの提携がしやすくなると考えられます。
 
働きやすさや成長など、社外組織とメリットを提供することで、深い関係に発展しやすい組織と接点を広げるという視点をご紹介しました。
 
 
 

[深め方]同じ熱量になれる

接点をもった後、互いに高い熱量をもってコラボレーションするにはどうしたらよいか。さまざまな方法があるかと思いますが、ここでは2つ挙げます。
 
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■異文化の体験:大企業とスタートアップの文化を相互理解する
先ほど、コワーキングスペースに大企業が入居するケースをお話ししましたが、スタートアップと文化が異なりすぎて交わり合えないことも少なくないそうです。この問題を解消するため、ベルリンにあるコワーキングスペース「betahaus(ベータハウス)」が取り組んでいる施策が、「Startup Immersion Program(スタートアップイマージョンプログラム)」です。これは、大企業のメンバーがスタートアップのチームに入って、一緒に働くというプログラムです。スキルを把握するというよりは、スタートアップの考え方や姿勢を身をもって体感できるため、相互理解のスピードが格段に上がるといいます。ある種、強制的なやり方にもみえますが、こういったショック療法が熱量を共有する近道かもしれません。
 
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■つながりの厳選:価値観に共感する起業家だけが入居する
闇雲にさまざまな人や組織とつながろうとするのではなく、ターゲットを絞ることがより深いつながりを生成することもあります。例えば、先ほどアクセラレータープログラムを運営していると紹介したA/D/Oでは、彼らが掲げる「豊かな都市生活をつくる」という価値観にマッチしない人は、たとえ高いスキルをもっていても参加できないといいます。つまり、コワーキングスペースやプログラムへの参加に「共鳴」という条件を設けているのです。フィロソフィやミッションなど、企業の社員が「なぜ働いているのか」というレベルまで掘り下げてつながりを厳選することが、互いに熱量を持ち続けるポイントの1つになりそうです。
 
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まとめ

本日は、オフィスをうまく活用しながら、「『異なる知の衝突』をいかに起こすか」をテーマにお話ししました。異なる知をもつワーカー同士をつなげる方法として「食」や「学びあい」などさまざまありますが、必ずしもそのすべてを自社オフィスに取り入れる必要はありません。
 
前回のセミナーでワークスタイル研究所所長の若原強から「『床ポートフォリオ』という考え方」についてご紹介させていただきました。これは、Wi-Fi・電源完備のカフェや、コワーキングスペースなどなど、オフィス以外でも働ける場が街中に分散・拡大していく中で、企業は自社の床と社外の床をうまく組み合わせて社員が働く床を構成することで、オフィスコストと社員の働きやすさを同時に最適化できる、という考え方です。この考え方に基づくと、本日ご紹介した機能のうちどの部分は自社オフィスでもつべきで、どの部分は社外でまかなうべきか、という観点が生まれてきます。経営視点と社員視点を両立させながら、社員に必要となる体験を街全体で受け止めるように働く場を設計することが今後さらに重要となっていくのです。
 
このように社員を支える機能をオフィスに留まらず多面的に設計できるようになるわけですが、いずれにしてもまずは社員のニーズを汲み取り(ワークスタイル研究所では、ニーズ解析の一つとして仕事観を診断できる#workTagを開発した)、自社に適した働き方や体験を考えることが大切です。
 
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働き方大学レポート一覧

第1回:WORKPLACEからWISEPLACEへイノベーションを創出・加速支援する場づくりとは KOKUYO×三井不動産

第2回:「働く」を変えてきた日々 TELEWORKDAYS特別イベント

 

 

 

 

 

田中 康寛 (Tanaka Yasuhiro)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部 ワークスタイル研究所研究員。コクヨ入社後、オフィス家具の企画・マーケティングを経て、2016年より現職。国内外の働き方のトレンドや働く環境のリサーチ、研究情報誌「WORKSGHT」の編集に携わる。現在、ワーカーの価値観/行動調査に基づいたサービス開発に従事。

文/株式会社ゼロ・プランニング 写真/新見和美
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