仕事のプロ

2016.06.15

起業家に学ぶ アイデアを生み出す思考術〈後編〉

“アイディエーション”でアイデアを磨く

後編では、Founder Institute(ファウンダー・インスティテュート)のプログラムの中でも特に重要な“アイディエーションステージ(ideation stage)”について、引き続きファウンダー・インスティテュート東京ディレクターの奥田聡さんに伺った。

アイデアを出し合い
価値を見極め、精査する

アイディエーションとは、アイデアを発想し、出し合い、精査していくこと。Founder Institute(ファウンダー・インスティテュート)(以下FI)のプログラムでは、5つのステップで実践的に取り組む。
 
最初のステップは、“Brainstorm”。チームでブレインストーミングを行い、できるだけたくさんのビジネスアイデアを出し合う。ルールは3つ。①人のアイデアに“No”は禁止、②タブーはなし、③最低でも25のアイデアを出す。これらを守れば、どんなアイデアでも構わない。「アイデアの源泉は、Passion(情熱)・Curiosity(興味)・Anger(怒り)にあります。情熱や興味はわかりやすいですが、現状への怒りや不満といったネガティブな要素も、それを乗り越え覆そうとするエネルギーになり得るのです」と奥田さん。
 
2つめのステップは、“Evaluate”。「このアイデアを20年間追求し続けることができるか」と自分自身に問い、アイデアへの熱意と価値の持続性を審査する。「アイデアをビジネスとしてかたちにするためには、そのアイデアの追求に情熱を持ち続けなければなりません。加えて、アイデアの本質的価値を見いだすことも重要です。そのアイデアにより提供するサービスに、人や社会はどのような価値を感じるのでしょうか。その価値は、テクノロジーに依存したものではないでしょうか。今や、テクノロジーは数年で変化します。技術ありきのアイデアは、非常に危険です」
 
 
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独りよがりのアイデアを、柔軟で
広がりあるものにストレッチする

3つめのステップは、“Research”。同じ業態や業界での失敗例や成功例にあたり、自分が始めようとしているビジネスが本当に必要とされているものなのかどうかを見極める。「広く事例をリサーチし、先例から学ぶことが大切です。とくに重要なのは、なぜ成功したのか、なぜ失敗したのかという原因を探ること。一見ニーズがないように見えても大成功を収めるビジネスもあれば、ニーズがあっても失敗することもあるのです」
 
4つめのステップは、“Discuss”。各自のアイデアについて、チームでディスカッションを重ねる。各ステップではアサインメント(課題)が出されるのだが、例えば“Discuss”のステップでは、「(B to Cのビジネスアイデアについて)市場調査として、1週間で500人にアンケート、25人にインタビューをせよ」といったものが課される。いかにして「1週間で500人」という高いハードルを乗り越えるのか、チームで知恵を出し合い解決策を探る。
 
最後のステップは、“Kill”。1から4のステップを通して、最初に挙げた25のアイデアを段階的に絞り込み、このステップで最終的に3つに絞る。残った3案は、自分が情熱を持って長期にわたって追求することができ、先例に照合して成功する可能性が高く、仲間からも賛同を得た、選ばれしアイデアなのだ。
 
「チームでアイディエーションに取り組むことで、客観的な視点を得て、視野を拡げることができ、アイデアに柔軟性と拡がりが生まれます。プログラム参加者の多くが、すでに何らかのビジネスアイデアを持っている人です。しかし、自分一人で考えたアイデアというのは、主観的で思い込みが強いもの。こうしてストレッチすることが重要なのです」
 
 

ファウンダー・インスティテュート(Founder Institute)

シリアルアントレプレナーのアデオ・レッシ氏により、2009年にアメリカのシリコンバレーで設立された世界最大級のスタートアップアクセラレーター。シリコンバレーのグローバル化を目指し、世界60カ国110都市に支部を展開(2014年東京支部開設)。これまでに2,000社以上のスタートアップ起業の立ち上げと15,000人以上の雇用の創出をサポートしてきた。 【Founder Instituteについて詳しく知りたい方はこちらまで】 株式会社プライムスタイル 代表取締役奥田聡     Tel:03-6685-0022 email:info@primestyle.co.jp

文/笹原風花 撮影/石河正武