仕事のプロ

2016.06.15

起業家に学ぶ アイデアを生み出す思考術〈後編〉

“アイディエーション”でアイデアを磨く

後編では、Founder Institute(ファウンダー・インスティテュート)のプログラムの中でも特に重要な“アイディエーションステージ(ideation stage)”について、引き続きファウンダー・インスティテュート東京ディレクターの奥田聡さんに伺った。

形態にとらわれていては、
イノベーションは生まれない

このアイディエーションのプロセスは、組織内で新事業を考える際など、起業以外のシーンでも活かすことができる。そのときに大切なのが、形態ではなく価値から考えることだと、奥田さんは言う。
 
「現在の形態にとらわれていては、新事業やイノベーションを起こす発想は生み出せません。形態を変えただけのアイデアは、商品開発に過ぎないのです。しかしながら、必ずしもまったく新たな価値を見いだす必要はありません。既存の価値へのアプローチ法を少し変えるだけで、大きな変革につながることもあるのです」
 
末尾に挙げるFI発のスタートアップ企業の成功例を見ても、その多くが、いわゆる“斬新なビジネス”ではない。既存の価値にプラスアルファを加えた価値を提供するサービスが、大成功を収めているのだ。「ここがもう少しこうなればいいのにな、という利用者の不満をいかに解消するかが、成功を左右します」と奥田さん。ユーザーのネガティブな感情にこそ、ビジネスチャンスが潜んでいるのだ。
 
 
 
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FIでは、アイデア絞り込みはプログラムのほんの入り口だ。その後も、「サービス(企業)名称とブランディング」、「会社設立の法務と知財」、「製品開発」、「セールスと普及策」、「資金調達」といったテーマで、毎週実践的な内容を基にビジネスがより洗練され、現実的なものに変わっていくという。
このような過程を経て、丁寧につくりあげていくビジネスアイデアだからこそ、起業してからの生存率、発展率が高いともいえる。FI自身も、アデオ・レッシのPassion(情熱)・Curiosity(興味)・Anger(怒り)のアイデアから生み出されたスタートアップなのだ。先輩の起業家と先輩のスタートアップが後進を支え、導く。これこそ“競争ではなく協力”であり、“シリコンバレーのエコシステム“そのものなのだ。
 
【FI発のスタートアップ企業の成功例】
Udemy:アメリカ発のオンライン学習サービス。4万以上のコースから自由に講座を選択でき、世界で1000万人以上が学んでいる。日本では2015年よりベネッセコーポレーションとの業務提携によりサービスを提供している。
 
iCars club:シンガポール発のレンタカーサービス。“RENT YOUR NEIGHBOUR’S CAR”をコンセプトに、近隣住民同士で車を貸し借りできるサービスを提供している。
 
APPOTA:ベトナム発のモバイル広告プラットフォーム。LINEなど世界で1万社以上の開発・媒体企業と提携し、スマートフォンユーザーに効果的に広告を打てるサービスを展開している。
 
起業を考えている人はもちろん、組織の中で活躍していこうと考えている人も、日々の思考の中にこのアイディエーションのプロセスを取り入れることで、発想力豊かな“アイデアマン”を目指せるのではないだろうか。

 

 

ファウンダー・インスティテュート(Founder Institute)

シリアルアントレプレナーのアデオ・レッシ氏により、2009年にアメリカのシリコンバレーで設立された世界最大級のスタートアップアクセラレーター。シリコンバレーのグローバル化を目指し、世界60カ国110都市に支部を展開(2014年東京支部開設)。これまでに2,000社以上のスタートアップ起業の立ち上げと15,000人以上の雇用の創出をサポートしてきた。 【Founder Instituteについて詳しく知りたい方はこちらまで】 株式会社プライムスタイル 代表取締役奥田聡     Tel:03-6685-0022 email:info@primestyle.co.jp

文/笹原風花 撮影/石河正武