リサーチ

2020.12.15

中堅企業経営者の意識調査から見る、世界の景況感

日本人が感じる景況感は世界最低水準

2020年7月、太陽グラントソントンが『第36回 中堅企業経営者「景況感」意識調査~世界29カ国同時調査~』の結果を発表した。この調査はグラントソントン主要加盟国 (※)が年に2回実施している世界同時調査で、調査対象は非上場企業を中心とする中堅企業経営者。紹介するのは、世界中が新型コロナウイルスの驚異に襲われた、2020年上半期(2020年5~6月実施)の調査である。
※グラントソントンとパートナーシップを結び提携している140か国を加盟国と呼び、調査に参加する国は実施回ごとに異なる。第36回調査は、29か国・約10,000名の世界の中堅企業ビジネスリーダー、または経営トップを調査対象としている。

景気に対する印象を意味する「景況感」。以前の景気の状態と現在を比較して、好転/悪化/停滞していると判断するといった主観的な側面があるうえに、国民性などにも左右されることから、景況感の高低がそのまま景気の良し悪しを示すものではないが、世界各国の経済状況を鑑みる1つの要素として紹介したい。

2020年春、世界中の国々が新型コロナウイルスによって経済に大打撃を受けた。当初は経済を完全に度外視して感染拡大防止対策に注力する国も目立ったが、現在は日本を含めた世界各国で「経済優先」「経済と感染拡大防止対策の両立」といったワードが盛んに見られるようになってきた。

『中堅企業経営者「景況感」意識調査』では、各国の全回答数のうち「非常に楽観的」「やや楽観的」と回答した企業の割合を当該国の景況感と定義している(単位:%)。

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新型コロナウイルスの影響を多大に反映した2020年上半期の調査では、直近の2019年下半期調査と比べて、全調査対象国平均が16ポイント下落の43%となり、過去10年間で最大の落ち込みだった。

29か国中27か国がマイナスに転じ、そのうち半数以上が2桁マイナス。世界中で記録的な低水準となった。

日本は国民性や過去の経済拡大期との比較もあってか、元々の景況感が低いうえに、今回もマイナス10ポイントで、調査対象国唯一の景況感1桁台を記録した。

下図は、2016年上半期~2020年上半期の、主要国における景況感の推移。日本・中国・米国・英国の4か国においても、2019年下半期~2020年上半期の下落が著しい。

特に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻だった米国では23ポイントの大幅減。諸外国に先立って経済再開に踏み切った中国では、マイナスではあるものの下げ幅は少ない(マイナス9ポイント)。

日本は元々の景況感が低いため図では他国よりも厳しい状況にみえるが、マイナス10ポイントは全調査対象国平均よりも小さく、欧米と比べると新型コロナウイルスによるダメージが少ないとも考えられる。

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「今後の市場回復に備えた計画」では、「将来の職場の安全性の確保」との回答が調査対象国平均で最も多く、米国・英国では過半数に至った。一方、中国の最多回答は「優先する製品およびサービスの選定」、日本は「人材とリーダーシップに関する課題への対応」が最多だった。

今後の事業戦略で改定が求められると思う分野については、中国・米国・英国では「テクノロジーの活用とデジタル・トランスフォーメーション(DX)」と回答した割合が最も多く、ITの重要性への認識が一層高まったことが伺えるが、同項目の日本の数値は低い。

日本でも新型コロナウイルスを契機に、かつてないほどIT化への意識が高まっているのだが、元々先鋭的だった他国と比較すると低水準にあり、ようやくスタートラインに立った段階といえるかもしれない。

状況や文化の違いもあるため、国ごとに施策が違うのは当然のことであるが、日本は市場回復に直結する取り組みよりも、新型コロナウイルス問題によって浮き彫りになった現状の課題解決に追われているようにも見える。

働き方改革も未だ道半ばであるし、テレワークへの移行がスムーズにいかなかった、テレワーク下で効率良く働くことが難しかった、マネジメントがうまくいかなかったなどの課題もあった。

現況の課題を改善することが間接的に市場回復に繋がっていくと期待したいが、各国と比べて市場回復に備えての具体的な計画が「いずれでもない」としている日本企業が多いことに、少々心もとない印象もある。

また、「市場回復に備えた複数のシナリオの想定」の数値が低いことからも、日本企業は明確な目的意識や指針を持てていない可能性が懸念される。

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日本の景況感は元々低かったうえ、新型コロナウイルスによる打撃も受けた。もちろん、景況感は主観的であり、過去との比較によるものであるため、実際の景気や生活水準を示すものではなく、世界各国と比較して日本が著しく厳しい状況というわけではないが、他国との意識差から学ぶべきことは多いのではないだろうか。

日本経済はかつて世界のトップレベルに登りつめるほどの全盛期があったが、その後バブル崩壊を経験し、浮上しきれないうちにリーマンショック、このたびの新型コロナウイルスと追い討ちを受け、ネガティブな景況感を抱く人が多い。しかし、苦境にあるからこそ貪欲になり、プラスに転じるための原動力としたい。そのうえで具体的な指針を持ち、市場回復に直結するような施策を練り、果敢に取り組んでいきたいものだ。


作成/MANA-Biz編集部
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