リサーチ

2020.10.26

企業からの関心が高まる「ジョブ型雇用」とは?

「メンバーシップ雇用」から「ジョブ型雇用」へ移行の懸念と課題

近年、日本の雇用制度に変化の兆しがある。Unipos株式会社は2020年2月、一部上場企業に勤めるビジネスパーソンを対象に、『「ジョブ型雇用への以降に伴う組織課題」に関するアンケート』を実施した。その結果をもとに、従来のメンバーシップ型雇用から欧米型のジョブ型雇用に移行する際の課題を考察する。

終身雇用時代が終わり、転職が一般的になって久しい。日本特有の雇用慣行であった「メンバーシップ型雇用」は世界各国の感覚と齟齬もあり、ダイバーシティが広がりつつある現代において、欧米型の「ジョブ型雇用」を本格導入しようとする日本企業が増えている。

2020年春に世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大した際、ジョブ型雇用が主体の諸外国や一部の国内企業では、スムーズにテレワークに移行することができたという事象も起きており、危機管理という観点からも注目が集まっている。

■メンバーシップ型雇用
メンバーシップ型雇用とは、終身雇用、新卒一括採用、年功序列など、日本特有の制度を前提とした、職務や勤務地を限定しない就労形態。企業の都合に応じて配置転換を行いながら、能力を幅広く身につけていく。メンバーシップ型雇用には、雇用が安定的に確保される、年齢と共に昇給するなどのメリットがあるが、希望しない転勤や配置換えが行われることもある。

■ジョブ型雇用
ジョブ型雇用とは、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を交わすことにより、職務(仕事内容)や勤務地などが明確に定められた雇用契約。雇用のミスマッチを防ぐことができる、ワークライフバランスが取りやすい、スペシャリストが育成されるなどジョブ型雇用のメリットがある一方で、仕事内容や勤務地が限定されているために雇用は不安定で、企業の経済状況悪化や方針転換などによって、失業するリスクも高くなる。

『「ジョブ型雇用への以降に伴う組織課題」に関するアンケート』では、2020年4月の「同一労働同一賃金(※)」施行に伴い、72%の経営者・事業責任者が「日本型雇用システムの再検討(ジョブ型雇用への移行)」に向けた制度を整備(議論)し始めている」と回答した。

しかし、63%が「再検討時に反対意見が出た(今後検討する際に反対意見が出ると思う)」と回答しており、雇用システムの見直しは容易でないことがわかる。

※同一労働同一賃金(別名:パートタイム・有期雇用労働法)/同一の労働に従事する正規雇用従業員と非正規雇用従業員の待遇格差をなくすための制度で、2020年4月から大企業で一斉実施された。中小企業でも2021年4月から適用される予定。

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ジョブ型雇用への移行に対する懸念1位の「会社の良い企業風土や一体感が失われる」、3位の「会社の経営理念・ビジョンが浸透しづらくなる」は、極めて日本企業的な感覚といえる。メンバーシップ型雇用から離れることによって、企業とビジネスパーソンのつながりが希薄化することを懸念する人が非常に多く、新型コロナウイルス影響下のテレワークにおいても、同じような弊害が指摘されていた。

また、それをシステム整備等で補おうとすると、5位の「チームのコミュニケーションコストが上がる」という問題が浮上する。6位の採用に関する問題も軽視できない。ジョブ型雇用で、より専門的な人材を見極め獲得しようとすると、マッチングを外部に委ねたり、コンサルタントの介入が必要になったりするケースも増えると推察される。

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日本の社会はメンバーシップ型雇用の風土がまだまだ根強いため、ジョブ型雇用に移行すると、企業対労働者間のエンゲージメントが下がるという懸念が大きい。しかし、2017年に米国の調査会社ギャラップ社が実施した従業員エンゲージメント調査では、日本企業の「熱意あふれる社員」の割合はわずか6%で、139カ国中132位だった。この結果からも、日本特有のメンバーシップ型雇用によってエンゲージメントが高まる、とは言えないようだ。

調査では、一般社員が「会社に大切にされていると感じる瞬間」に、1位「成果を上げた仕事に感謝されたとき」、2位「ちょっとした貢献を認められたとき」が挙げられていた。これらはジョブ型雇用でも実現でき、むしろ各々が得意分野を活かすジョブ型雇用でこそ、機会が増えるのかもしれない。

労働人口の減少、ダイバーシティへの対応、そして新型コロナウイルスの影響もあり、働き方の改革は急務となっている。ただ単に労働環境を改善するというだけではなく、生産性や効率性を高めながら新しい働き方に移行しなければならない。ジョブ型雇用は今、それを実現する方法の一つとして多くの企業から関心を集めている。




作成/MANA-Biz編集部
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