リサーチ

2020.08.27

転職に「成功した」と感じられるのは全体の3割

転職当事者が感じる「転職のリアル」とは

転職が一般的になった近年では、転職成功者の事例を耳にする機会も多くなり、「転職=キャリアアップや年収アップができる」といった、ポジティブなイメージがある。しかし、その実態は決して明るい側面だけではないようだ。株式会社ライボは2019年11月、キャリアや転職に特化した匿名相談サービス『Job Q』において、『転職に関する意識調査』を実施し、転職活動経験者253人から有効回答を得た。

転職者数は年々増加傾向にあり、企業も中途採用に積極的だ。終身雇用時代は終わり、転職はビジネスパーソンにとって、ごく普通の選択肢の一つとなった。現職に何らかの不満(給与、労働時間、人間関係等)がある、キャリアアップや年収アップをめざしたい、会社の将来性が不安、他にやりたいことがある等、転職には様々な理由がある。いずれにしても、「今より良い環境や待遇」や「自身にとって有益な変化」を求めて、転職を視野に入れる人が多いことは間違いないだろう。
 
しかし、株式会社ライボが『Job Q』内で行った『転職に関する意識調査』では、転職に「成功した」と感じているのは3割程度に留まっていた。1割の人は転職に「失敗した」と感じており、残りの半数強の人には、「失敗した」とも「成功した」ともいえない、複雑な思いを抱いているようだ。
 
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転職に「失敗した」と回答した人にその理由を聞くと、「新しい職場が思っていた雰囲気と違った」が1位となった。契約内容や職務内容のギャップは、2位の「情報収集が不十分だった」に集約されるが、職場の雰囲気や人間関係は、入社してみないとわからない部分もあるため難しい。選考の過程で会社を訪問した際に社内の様子をよく見ておくほか、入社前の見学や体験入社等に積極的に参加して交流を図り、企業とのミスマッチを防いだうえで入社を決めることが大切だ。
 
6位の「給与がダウンしてしまった」というのは、じつは転職経験者からよく聞かれるリアルな実態の一つ。転職による年収アップは、万人が実現できるものではないという認識は持っておいたほうがいいかもしれない。7位の「転職動機が曖昧だった」は、転職前・転職後の理想と現実のギャップを大きくする要因でもある。軽い気持ちで転職に踏み切るのは危険といえるだろう。冷静に判断せず勢いのみで転職すると、5位の「前職の方が良かった」という、不本意な結果に終わる可能性もある。
 
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転職に「成功した」と感じる理由は、「具体的な転職理由があった」が4割を超えて1位となった。失敗した理由の7位にランクインした「転職動機が曖昧だった」の対極となる回答だ。また、失敗理由の2位「情報収集が不十分だった」の対極である「情報収集を積極的に行った」が、成功理由の6位にランクインしている。
 
理由が明確であれば、そこに合致する企業を慎重に見極め、納得したうえで転職を決める。ギャップを埋めるためには、まず自らの目標を明確にすることが重要なのであろう。失敗理由と成功理由を見比べてみると、明確な目的・目標を持ち、それを達成するための情報収集を入念に行うことが、転職成功の必要条件といえるのではないかと推察される。
 
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「転職活動中にしておけばよかった、と後悔していることはありますか?」という質問では、意外な結果が出ていた。回答者全体で「ある」と回答した人は29%であったが、転職成功者では36%と、成功者のほうが高い数値を示している。自身の転職活動の結果に満足していても、「もっとできることがあった」と後悔することはあるようだ。
 
具体的には、「業界、職種についての調査」が約半数を占めトップとなった。情報収集の重要性がここでも強調されている。2位の「自分の市場価値の理解」もまた、3位以下と大きな差をつけて多くの人が感じているものであり、転職活動における自己分析の重要性を物語る。
 
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社会全体で転職が一般的になったことで、ビジネスパーソンにとって「新卒で就職した会社」がキャリアのすべてではなくなり、より多くの可能性の扉が開かれるようになった。しかし、軽い気持ちで転職に踏み切ると、「想定していた結果が得られなかった」というリスクを伴うことも確かである。
 
そのリスクを回避する一手となるのは、明確な目標を持つことだ。目標が明確であれば、情報収集や自己分析にも余念がなくなるだろう。もし不安がある場合は、専属アドバイザーが付く転職エージェントを利用して、じっくりと自分に向き合ってみることも一つの方法だ。
 
本当に転職したいのか、何のために転職するのか。転職によって自分の目標が達成できるのか、あるいは、もう少し今の会社で踏ん張ってみる価値があるのか。自分自身のことであるが、俯瞰して冷静に考えてみることも大切だ。そのうえで踏み切った転職であれば、"3割の成功者"の一人になれる可能性が上がるだろう。
 
 
【出典】株式会社ライボ 『JobQ:転職に関する意識調査
 
作成/MANA-Biz編集部