仕事のプロ

2020.08.12

コロナ禍の社員の心をつないだ10分セミナー

強制的な在宅ワークから生まれた新しいコミュニケーションのカタチ

新型コロナウィルス感染拡大を防ぐために発令された緊急事態宣言により、急遽在宅ワークへの対策に追われた企業も多いだろう。初動対策としては在宅で業務が行える環境を整えることが求められたが、緊急事態宣言が解除された現在でもこれからの働き方として、在宅ワークがオフィスワークとともに日常化してくる。そのような環境下で企業側も、またワーカー個人としても、よりよい働き方を実現する方法を模索している。
今回は、緊急事態宣言下での在宅ワークによるコミュニケーション機会の喪失やワーカーの孤立への危機感から、新しいコミュニケーションのカタチを模索し、光明を見いだした、コクヨ株式会社小笠原純女氏の取り組みを紹介する。
小笠原純女氏は、『スキルパーク』という人材育成ビジネスの責任者をする一方で、チームをマネジメントする立場にあり、組織力やチームビルディングに関心を持っていたという。

参加1600名、満足度95%の
人気オンラインセミナーへと成長

企画当初の目的は「自分たちの事業の社内認知向上」と「在宅ワーク中の社員のモチベーションと帰属意識の維持のための場づくり」でしたが、直接的な業務とは関係ないことに時間を割いて参加してもらうからには、「この10分間をより有意義な時間にしたい! 」「社員の生産性を上げてコロナをみんなで乗り越えたい! 」という思いが強くなり、『オンライン10分セミナー』の内容も在宅ワークで役に立つ仕事術に重点を置くようになりました。

〈実施コンテンツ例〉
・Gmailのショートカット術
・PC活用術
・遠隔で激増!チャット活用術
・遠隔での上司部下コミュニケーションのお作法
・Web会議システムを活用した遠隔会議のコツ
・心理的安全性を踏まえたWeb会議での雰囲気づくり
・在宅でのセルフコンディショニング
・今こそやろう!電子ファイル整理術

『オンライン10分セミナー』は週2回、火曜日と金曜日に実施。オープンセミナーを多数開催してきた経験値から時間帯は夕方とお昼にするなど、参加しやすさを第一に考えました。また、毎回セミナー後にはアンケートを実施し、今だからこそ求められている内容は何か? すぐにでも役立つビジネススキルは何か? といった社員のニーズを探りながら『オンライン10分セミナー』のコンテンツをつくっていきました。

その結果、毎回100名近い申込みがある社内でも人気のセミナーになったのです。最初は事業部限定で開催していましたが、情報を聞きつけた他部署からもリクエストがあり、6月後半には部を超えて多くの社員が参加してくれるようになったのです。

この『オンライン10分セミナー』は4月に始め、緊急事態宣言中とその後の外出自粛が厳しい期間として6月末まで続けてきました。結果、23回実施して延べ1600名の社員が受講、出席率も毎回8割以上で満足度も95%以上。参加しやすい時間帯を設定したりニーズに合わせて都度内容を吟味したりした結果、多くの社員にとって有意義なセミナーになったと実感しています。


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「がんばろう! 」ではなく、
「新しい価値を一緒に生み出そう! 」を合言葉に

『オンライン10分セミナー』の最後は毎回このような言葉で締めくくりました。

「この『オンライン10分セミナー』で学んだことで、みなさんの働き方が1日5分でも10分でも短縮できたら、新しい価値を生み出すことにもっと時間を費やせますよね? 一緒に新しい価値を生み出しませんか? 」。

この言葉に反論する人などもちろんいませんし、参加した社員は一様に「そうですよね! 頑張ります! 」とにこやかに答えてくれました。今思うと、参加者の思いを一つにしたメッセージになっていたと思います。『大変だけど、がんばろう! 』ではなく、『こんなときだからこそ、新しい価値を生み出す! 一緒に生み出そう! 』が、コロナに負けず前を向く原動力の一翼を担えたのだと。そして、『オンライン10分セミナー』を主催した私たちにとっても必要なメッセージだったと感じています。

この『オンライン10分セミナー』によってコクヨ社員の生産性が上ったか......、その効果はもう少し先にならないとわかりませんが、オンラインという環境下でもお互いのぬくもりを感じながら、10分という学びの時間を共有できたことの価値は確実にあったと感じています。また当初の目的でもあった、在宅ワーク中の社員のモチベーションと帰属意識の維持に、少しは役に立てたのではないでしょうか。



Withコロナの時代だからこそ
新しいことを始めよう!

自粛期間の長期化によって生まれた物理的な距離は心理的な距離感をも生み、組織内から不協和音が起こる可能性は高まっています。緊急事態宣言が解除されましたが、感染リスクの観点から在宅ワークを続けざるを得ない企業も多くあるなかで、なおさら危惧しなければなりません。

物理的な距離を縮めることが難しい今、部門を超えてつながる、『オンライン10分セミナー』のようなオンライン上の居場所が、在宅ワーク中の社員同士の心の距離を縮める場、気軽にインフォーマルコミュニケーションが取れる場として有効だと実感しています。

在宅ワークが増えた今だからこそ、『オンライン10分セミナー』のようにオンラインで集まる機会があれば、その前後に遊び(余白)をつくることで、そこが社員の「居場所」となり、インフォーマルコミュニケーションが生まれ、孤独やモチベーションの低下を防げるのではないでしょうか。

オンライン会議などでも効率化一辺倒ではなく、業務の中に遊び(余白)をつくりインフォ―マルコミュニケーションが自然と生まれる仕掛けをつくっていくことが新しいコミュニケーションのカタチ、なのではないでしょうか。
そして、これからのWithコロナの時代も、新しいことにチャレンジできる好機ととらえ、同僚たちと一緒に前進していきたいと思っています。


『オンライン10分セミナー』サービス

お客さまからの要望を受け、6月より『オンライン10分セミナー』をサービスとして提供開始。コンテンツ数をさらに増やし、お客さまの要望に合わせたコンテンツのカスタマイズも可能。詳しくは、コクヨの研修【スキルパーク】までお問い合わせください。




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小笠原 純女(Ogasawara Junko)


コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント/一級建築士
建築学科卒業後、1998年にコクヨに入社。入社後10年ほどはモノづくり(文具開発、家具開発、働き方の研究、オフィス構築)に携わり、その後、ヒトづくり(人材育成、意識改革、働き方改革など)を中心にサービスを提供し、現在に至る。

コクヨの研修【スキルパーク】

コクヨの社内研修から生まれたコクヨの研修【スキルパーク】は、サービス開始から12年目を迎え、お客さまの要望に合わせてコンテンツを増やしながら働き方変革・人材育成のサポートを実施。お客様のニーズに合わせ、対面研修、オンライン研修、eラーニングなどさまざまなサービスを提供。kokuyo.jp/skillpark/