組織の力

2020.06.24

中学校における働き方改革の取り組み

学校の「当たり前」を問い直す
                

熊本市教育委員会では2017年度から、「学校改革!教員の時間創造プログラム」と銘打って、小中学校などの教職員を対象にした施策を行っている。目的は、教職員の長時間勤務を改善すること。つまり多くの学校では、多くの企業が今まさに試行錯誤している働き方改革と共通の課題を抱えているのだ。今回は、このプログラムを軸に創意工夫を加えて業務改善を展開する中学校二校の取り組みを紹介する。

 しかし、白川校長の意図は「楽しんで取り組む」ことだけではなかった。
「果たし状のミッションを具体的にどうクリアするのか、また完成した施設をどのように使うのかを考えてもらいたかったため、あえて詳しい指示は出しませんでした。自ら考えて取り組むことで新鮮な発想が生まれますし、教職員と生徒の中に主体性も生まれます。今後も折に触れて果たし状を出して、創意工夫を発揮してもらおうと考えています」

この業務改善のなかで取り組んでいた「テレワーク武蔵」が、2020年春の新型コロナウイルスによる休校措置にも混乱せずに教職員が対応することができた。その後も同行の進化は続いている。

1_org_119_08.jpg

校内を案内してくださった原先生(左)、工藤先生(右)。プロジェクトは2人を含むプロジェクトメンバーによるリーダーシップの下で進められた。


 長嶺中学校と武蔵中学校は、働き方のあたりまえを見直すきっかけとなった研修から、「毎週ニュースレターを発行して取り組み内容を繰り返し周知」「小さくても目に見える成果を出し、賛同者を増やす」といった地道な取り組みをコツコツと続けてじっくり意識改革をはかり、大きな成果を出した。その根本にあるのは「生徒によりよい学びを提供したい」という強い思いである。両校の取り組みは、基本となる想いをプロジェクトメンバーのみならず全員が共有することが変革の成功には欠かせないのだと教えてくれる。


熊本市立長嶺中学校

1991年開校。「創造」「誠実」「躍動」を校訓に、自主的精神に充ちた心身ともに健康で 調和のとれた生徒の育成をめざす。男子バレーや軟式野球、女子ハンドボールなどの部活動が県大会にたびたび出場。2017年度から「長嶺中業務改善プロジェクトS」を実践。

熊本市立武蔵中学校

1975年開校。「21世紀をたくましく生きる自律し協働できる生徒の育成」を教育目標に、本校ゆかりの人物である宮本武蔵にちなんで文武二道(文武両道)をめざす。2019年度から業務改善に取り組んでいる。

文/横堀 夏代