仕事のプロ

2020.06.12

男性マネージャーが育休に挑戦するメリットとは

入念な事前準備が成功のカギ

育児休業を取得する男性が少しずつ増えているが、厚労省のデータによると、2018年における男性の育休取得率は約6%とまだ少ない。そんな中で、コクヨ株式会社で働き方改革のコンサルティングを手がける太田裕也氏は、2020年1月に1か月間の有休を経験した。同社は1月が年度初めであり、太田氏は部下を抱えるマネージャー職だ。それでも、「ポイントを押さえて準備すれば、年初や年末、繁忙期でも、マネージャー職でも、育休を取ることは十分に可能です」と力強く勧める。マネージャー職が育休を取るにあたって押さえたいポイントや、取得のメリットをお聞きする。

「男性の育休」を
自ら体感してみたい想いから

 太田氏が育休を取得したのは2020年1月。1月はコクヨの年度初めであり、社内体制が刷新されるタイミングだ。実際に、太田氏の所属するワークスタイルイノベーション部でも組織変更があった。また、マネージャーはこの時期、部下の評価や面談も行わなければならない。なぜこの時期だったのか。
「第一子が生まれてから2か月間、妻と子は東京を離れて妻の実家で暮らし、私は週末に通って一緒に過ごしました。そんな中で、初めて子育てをする喜びや苦労を夫婦で分かち合いたい気持ちがわいてきました。生後3か月間が山場だと子育て経験者から聞いていたので、育休を取得するなら3か月目にあたる1月しかない、と決めました」
 さらに、ワークスタイルコンサルタントとして働き方のコンサルティングを行っている太田氏は、以前から「子どもができたら育休を取ろう」と決めていたという。
「『男性の育休』は、実際、仕事にどんな影響があるか、どんな工夫ができるのか、などデータだけではわからないあれこれを体感すれば、今後の仕事にも活かせると考えていました」
 太田氏の気持ちを聞いた妻は、「一緒に過ごしてくれると安心」と喜んでくれた。年度初めに休む迷いはあったが、上司や同僚、部下は、「できるサポートは何でもするから、ぜひ取ってほしい」と温かい言葉をかけてくれた。周囲のリアクションに励まされ、太田氏は育休取得に向けて第一歩を踏み出した。
 
 
 

抱えている仕事を3種類に分け
引き継ぐものと
自分で取り組むものを決めて対処

 育休前の1か月間は、自分が休んでも部署の業務が滞らないよう、入念に準備を進めた。同僚で育休取得経験のある男性からアドバイスをもらいながら、まずは業務引継リストを作成した。自分の業務を丁寧に棚卸しし、休んでいる間の業務を3種類に仕分けしてリストに落とし込んだのだ。
「3種類とは、『①直属の上司に引き継ぐ仕事』『②ほかの管理職に期間限定で託す仕事』『③自分で手がける仕事』です。①の上司に託す仕事は、主にお客さまに関することなので、引き継ぎがスムーズにいくよう、育休が始まる1か月前からお客さまを訪問する際に上司にも同行してもらいました。②の他の管理職に委譲する業務は、グループメンバーの社内業務のとりまとめや発信など、比較的負担にならない業務をピックアップしました」
 そして③の自分で取り組む仕事は、「自分にしかできない」と判断した仕事だ。
「具体的に言えば、部下の面談です。1月には、前期の実績評価のための面談が控えていました。制度上は上司に任せることもできたのですが、部下が努力したプロセスを知っている私が面談を行い、評価を自ら上司に進言すべきだと思ったからです。また、仕事からまったく離れてしまうのが寂しく、会社とつながっていたい気持ちもありました」
 
 
 

育休中も
毎日1時間のメールや電話で
仕事との接点をもつ

 自宅で妻子と過ごす生活が始まった。妻が子どもを寝かしつけている間に料理や掃除をしたり、母乳が足りないときのためにミルクをつくったりする毎日。妻と協力しながら家事・育児を手がける中で、「この子を幸せにしなければ」という父親としての責任感もしっかりと心に根を張った。
 ただし、業務を完全に離れたわけではなかった。仕事に関わり続けていたかった太田氏は、育休期間中もあえて1日1時間、会社とつながる時間を設けたのだ。
「自分の性格上、全く仕事をしないと疎外感を感じるのではないかと思ったので、会社との接点を少しでも持ち続けようと決めていました。そこで、毎日メールをチェックし、たくさんのプロジェクトがある中で自分でないとわからないものだけ電話などで対応しました。それ以外は、たとえ重要度・緊急度が高くても“自分必須度”が低いものとして部下に対応を任せました」
 
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太田 裕也 (Ohta Hironari)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント/プロジェクトディレクター
建築学科卒業後、2005年にコクヨへ入社。「働く場」としてのオフィス、「学ぶ場」としての教育施設、「暮らす場」としてのホテル等、多彩な場の空間デザインを手掛け、「日経ニューオフィス賞」等のアワードを数多く受賞。 2011年以降、「意識・行動・空間」を多面的にデザインするコンサルタントとして、「2ndプレイス(オフィス)」のみならず、「1stプレイス(自宅)」や「3rdプレイス(シェアオフィス等)」もスコープに含めた戦略的ワークスタイルの実現を支援している。

文/横堀 夏代
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