リサーチ

2020.06.02

独立・起業はビジネスパーソンの光明となるか

7割以上が「個人が会社を買って(M&Aで)独立」に興味あり

年金受給年齢の引き上げや老後2000万円問題に不安を抱えるビジネスパーソンたちは、独立・起業に興味を示し始めている。2018年12月、株式会社経営承継支援は、独立・起業に関心がある20~59歳のビジネスパーソン男女400名を対象に、『独立・起業に関する意識調査』を実施した。

終身雇用時代が終わり、転職が一般的になった現代では、次のキャリアに「独立・起業」を選ぶビジネスパーソンも増えている。
 
『独立・起業に関する意識調査』で、独立・起業に関心を持つ理由として最も多く挙げられたのは、老後の収入への不安や収入アップへの期待だった。平均寿命の延伸や少子高齢化にともなって、年金受給年齢が引き上げられたことにより、定年退職後の生活資金に対する不安が高まっている。
 
独立・起業すれば、企業が決めたリミットに制限されずに働き続けることができる、会社員として働くよりも高収入が得られる(=老後資金を貯められる)というメリットを感じる人が多いようだ。
 
また、働き方の多様化への興味関心、ワークライフバランスの確立、自己実現に関する要素も挙げられていた。労働価値観の変化もまた、独立・起業への関心に影響を与えていることが読み取れる。
 
 
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「独立・起業するための資金を貯めている」と回答した人は179人、全回答者の44.8%だった。「興味関心はあるが、資金を貯めるまでには至っていない」という層が半数以上を占めていることがわかる。
 
貯めている平均額は、全体1,259万円に対し、40代が最も低く918万円。最大値も40代が最も低い。中央値では、30代の500万円が他の世代と比べて著しく低い結果だった。30代、40代の数値が低いのは、就職氷河期世代にあたることや、景気低迷の影響もあるのではないかと推察される。また、子の教育資金等の負担が大きい世代でもあるため、貯金にまわす余力がないという背景もあるだろう。
 
一方、老後の不安や働き方の多様化が顕在化してから社会人生活をスタートしたであろう20代は、早くから準備に余念がないようだ。50代の突出した数値は、準備期間の長さもさることながら、定年を目前に控えて、よりリアルに独立・起業を計画していることのあらわれとも考えられる。
 
 
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独立・起業に対する関心が高まる世の中であるが、ゼロからの起業は容易なことではない。そこで今、注目されているのが、「M&A」という手法だ。
 
M&Aとは「Mergers & Acquisitions」の略称で、日本語では「合併と買収」と訳される。合併とは、2つ以上の企業が1つの企業に統合されること。買収は、企業が別の企業の経営を支配することを目的として株式を取得することである。
 
これらは企業間で行われることが多かったが、個人が既存の会社を買って(M&Aで)、独立して経営者になるという手法がある。既存のノウハウを承継して効率的に経営をスタートできる、リスクを軽減できるといったメリットがあり、独立・起業の際の有力な選択肢となりつつある。
 
調査では、7割以上が「個人がM&Aで独立・起業する」という手法に「興味がある」と回答した。しかし、そのプロセスや実務についての認知度はわずか2割程度に留まっていた。
 
 
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調査では、さまざまな理由から独立・起業に対するビジネスパーソンの興味が高まっており、実際に資金を貯めている人も半数近くにのぼっていた。しかし、ゼロからの起業はハードルが高いと感じる人も少なくないだろう。
 
M&Aは、独立・起業のハードルを下げ、より多くの人にチャンスをもたらす手法だ。しかし、そのためのプロセスや実務について知っている人はまだ少ない。個人によるM&Aのニーズは高まっているものの、ノウハウが広く浸透しているとは言い難いので、案件探しや交渉、契約手続き等については、専門家によるサポートを要すると考えられる。ライフにかかる費用もあるため、資金繰りについても慎重に判断していく必要がありそうだ。
 
終身雇用時代が終わって転職が一般化し、働き方改革も推進されている。そして、人生100年時代の幕が上がっている。M&Aでの独立・起業を含め、新しい働き方、そのきっかけづくりやサポートのあり方も、これからますます多様化していくのではないだろうか。
 
 
【出典】株式会社経営承継支援『独立・起業に関する意識調査
 
 
作成/MANA-Biz編集部