レポート

2020.06.15

Afterコロナ時代に適応するオフィス環境のあり方とは?

省庁のオフィス事例に見る、Afterコロナのワークスタイル

新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言が解除され、感染予防と経済活性化の両立に向けて多くの企業が対策を検討するなか、官公庁でも“Afterコロナ”への対応が議論されている。そうしたなか、「Afterコロナ」もしくは「withコロナ」の時代における働き方とオフィス環境を考察し、具体的な道筋を見出すべく「Afterコロナ時代に適応するオフィス環境のあり方」と題したオンラインセミナーが2020年5月20日、5月22日に開催された。
今回は概念的な議論を中心に、新型コロナウィルス感染症防止の視点から働き方や労働観が大きく変化するなかで、オフィスや在宅での「働く環境のあり方の変化」についての考察や問題提起が行われた。また、紙文化が根強く、リモートワークが難しいのではないかと思われがちな官公庁のなかで、壁を乗り越えて新しいオフィスで新しい働き方に挑戦している省庁の取り組み事例も交えながら、コクヨ株式会社で働き方やオフィスづくりのコンサルティングに携わるメンバーが、遠隔でセッションを行った。

セッションテーマ

1 Afterコロナ時代 ワークスタイルはどう変わる?

2 ワークスタイルの変化と3密防止 オフィス環境はどう変わるべき?

スピーカー

モデレーター:吉澤利純氏(コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント)

スピーカー:坂本崇博氏(コクヨ株式会社 働き方改革アドバイザー)
スピーカー:杉山統彦氏(コクヨ株式会社 官公庁営業部5/20登壇)
スピーカー:柿崎優貴氏(コクヨ株式会社 官公庁営業部5/22登壇)






Afterコロナに向けて
仕事そのものを見直し、
ワークスタイルイノベーションを

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モデレーターを務めた吉澤氏は冒頭でAfterコロナ時代に向けた出口戦略の動きが出はじめていることに触れ、Beforeコロナからの社会の変化をどう捉えているか、働き方改革アドバイザーである坂本氏にコメントを求めた。

坂本:「今回のコロナ禍の混乱の裏で、社会は強制的にアップデートされました。Beforeコロナと今とでは社会的価値観が大きく変わり、新しいサービスへのニーズも生まれています。社会が明らかに変わった今、過去に戻ろうとするのではなく、変化に適応しようとすることが大事です。これからのAfterコロナ、いや、Withコロナ時代には、システム、スタイル、製品、価値...といったものを新しい価値観に適応、進化させていくことが求められるのです」

続いて、1つ目のテーマである「Afterコロナ時代、ワークスタイルはどう変わるか」について、坂本氏は次のように述べた。

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坂本:「これまでは"会社(オフィス)にいる=仕事をしている"という感覚が少なからずあったと思いますが、今回テレワークが進んだことで、そうではないことに多くの人が気づいたはずです。大事なのは、チームで連携していかに価値を生み出すか、です」

「また、テレワークが進み働き方も大きく変わっていくなかで、これからは会議も変わるでしょう。『情報の伝達・共有のためにわざわざ集まる必要はないよね(チャットや掲示板でいいよね)』、『進捗管理のために部署のメンバーを集めて状況確認するならプロジェクト管理ツールを使えばよいよね』...ということで、リアルな場に大人数が一堂に会してほとんどの人が話す機会なく情報共有や進捗管理を行うような会議は不要になるはずです」

さらに坂本氏は、「オンラインへの適応は必須だが、今までオフィスでやっていた仕事をオンラインでどううまくやるか、という話で終わってはいけない。今までやっていた仕事そのものを見直し、やる必要があるのかを根本から考えて、まずは新しい仕事のスタイルに変えたうえでオンラインを活用してイノベーションを起こしていくことが重要」とし、「WAO(Work At Online)」から「WSI(Work Style Innovation)」の視点へとシフトしようと呼びかけた。

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坂本氏の発言を受け、官公庁向けの営業・提案を担当してきた柿崎氏が、省庁での業務はどう変わるかについて、次のように述べた。

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柿崎:「オンライン化でワークスタイルが変わることで、例えば会議は会議室で、といったハード必須の働き方はなくなるでしょう。現状では、会議室の予約はわずらわしい業務だと思いますが、今後は、会議室が空いてなければオンラインでやればいいと変化していきます」

「オンライン会議が主流になれば、会議室のサイズも10人用より予約無しで使えるブースや個室を設置しよう...と、ワークスタイルに連動してオフィスのあり方も変わってくると思います。さらに、官公庁のデフォルトになっている紙文化も、デジタルへと変わることが予想されます」



短期・長期の2つの視点で、
事例をもとにオフィス環境の変化を考える

話題は2つ目のテーマである「ワークスタイルの変化によりオフィス環境はどう変わるか」に移り、坂本氏が次のように発言した。

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坂本:「オフィスも適応していく必要があります。まずは、3密防止。ただ、座席を2メートル間隔に配置するとオフィスに膨大なスペースが必要になるうえ、大幅なリニューアルが必要になるので、在宅勤務やテレワークを組み合わせて、既存のレイアウトのままで座席を空けて座る、つまり自分の席という概念をなくしてある程度自由に席を使えるようにする、密にならないように混んでいるときは他のエリアで仕事ができるようにするなど、フレキシビリティをもたせることが重要になってきます」

「また、飛沫防止のために、座席を背面対抗にする、打合せのときは対面ではなく45度の角度で座るよう会議テーブルを並べるなどのレイアウト面での工夫も有効です。緊急事態宣言や外出自粛によって悪化した経済を早急に立て直していくためにも、今すぐできることから取り組む。席の使用前後は手が触れた場所をアルコールを含ませたティッシュで拭く、そのティッシュは密閉容器に廃棄するなど、衛生管理のルールなどもつくっていく必要があります」

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続いて柿崎氏は、「Beforeコロナから、省庁・行政では新しい働き方に対応したオフィスづくりが進んでいる」とし、その事例をAfterコロナ時代の短期・長期の課題に沿って紹介した。

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柿崎:「ソーシャルディスタンスを保ち衛生に配慮する、という喫緊の短期課題への対応については、国土交通省や総務省のオフィスが参考になると思います」

「国土交通省では在席率に合わせて座席数を減らしグループアドレス制とシェアデスクを導入し、空いたスペースをミーティングスペースにしています。席を自由に選べる働き方なので、Afterコロナでは距離をとった仕事が可能になり、ミーティングスペースはウェブ会議スペースとしても活用可能です」

「総務省ではウェブ会議もできる個別ブースやオープン会議室の検証を行いました。ブースであればウェブ会議の声の問題もありません。またオープン会議室のデスクは移動やレイアウト変更が簡単なので、現在は密にならないオープンで少人数会議用に、感染症のリスクがなくなった後は大人数用にも対応できる、といったフレキシブルなワークスタイルが可能です」


柿崎:「テレワークを定着させるためにどこでも仕事ができる環境を整える、という長期課題への対応について参考になるのが、神戸市庁舎のサテライトオフィスです。今回のような有事の際に公共交通機関が止まるなどして本庁舎に行けなくても、自宅の近くで仕事ができるため業務が継続できる、移動時間を削減でき生産性が向上する、というメリットがあり、柔軟な働き方に対応できるようになります」

「また、経済産業省が省外の人との連携を進めるために設置したコラボレーションスペースや、一人で集中したいときに利用できる集中業務スペースなどの事例もあります。Afterコロナでは自宅でもオフィスでもない働ける環境の整備や、自宅にはないオフィスの価値をつくることが求められます」


坂本 崇博(Sakamoto Takahiro)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント/働き方改革PJアドバイザー/一般健康管理指導員
2001年コクヨ入社。資料作成や文書管理、アウトソーシング、会議改革など数々の働き方改革ソリューションの立ち上げ、事業化に参画。残業削減、ダイバーシティ、イノベーション、健康経営といったテーマで、企業や自治体を対象に働き方改革の制度・仕組みづくり、意識改革・スキルアップ研修などをサポートするコンサルタント。

柿崎 優貴(Kakizaki Yuki)


コクヨ株式会社 官公庁営業第2部


2018年コクヨ入社。国家機関のオフィス改革、働き方改革のサポートに従事。経済産業省のデジタルプラットフォーム構築事業への参画など、国家機関の新たな取り組みとそれに合わせた、あるべきオフィスのありかたの提案、構築を手掛ける。

吉澤 利純(Yoshizawa Toshizumi)



コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部/ワークスタイルイノベーション部/ワークスタイルコンサルタント
1級ファイリング・デザイナー/オフィスセキュリティコーディネーター ストア事業、営業、新規事業企画部門を経てワークスタイルコンサルティング部門に所属。 主に、ナレッジシェアリング構築のコンサルティング、オフィス構築、運用改善コンサルティングを担当し、お客様の働き方改革をサポート。

文/笹原風花