リサーチ

2020.05.22

障がい者が真に活躍できる社会を実現するために

職場定着率の低さが課題。改善のポイントは?

障がい者雇用が政府主導で推進され、法定雇用率の引き上げといった法律の見直しも行われている。しかし当事者目線でみると、課題や不安が解消されているとは言い難い。2019年8月、株式会社スペシフィックが運営する障害者向け求人サイト『エラビバ』において、会員を対象に行われた『転職活動に関する調査(※)』からは、障がいを持つビジネスパーソンの切実な窮状が浮かび上がった。

※調査対象:エラビバユーザー(身体障がい者、精神障がい者、知的障がい者) n=309名

障がい者雇用は法律で義務化されており、『障害者雇用促進法』では、企業の障がい者法定雇用率(常時雇用するべき障がい者の割合)が示されている。障がい者を雇う義務がある企業と、働きたい障がい者。一見Win-Winのようにも感じられるが、実際にはそう単純なものではなく、当事者の多くが就労に対して切実な悩みを抱えている。
エラビバユーザーを対象に行われた『転職活動に関する意識調査』によると、回答者の中で「転職経験なし」はわずか21%。また、転職回数も多く、「5回以上」がトップにあがっている。この結果は、障がい者の職場定着がいかに難しいかを物語っている。
 
 
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転職するときに人材サービスを利用したことがある人は、全体の78%にのぼった。しかし、そのうち55%が、「断られた経験がある」と回答している。
断られた理由は、「音信不通になったので理由がわからない」という回答が、身体障がい者・精神障がい者ともに1位だった。2位~3位には「対象外」や「範囲外」という言葉が並んでいる。人材サービス側が設定する条件に合致する人しか、サービスを利用できない現状があると推察される。そして、その“範囲”の中に入ることは、障がいのある人にとっては容易ではないのだ。
 
  

 

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障がいのある人の職場定着率が低く、転職を繰り返してしまいがちな原因は何なのだろうか。その答えは、「転職を決めた理由」の回答から見えてくる。一般的なビジネスパーソンと共通する項目もあるが、「心身の状態の変化」や「障害への配慮不十分」は、障がいのある人ならではの不安や悩みの最たる例であろう。ここに十分な理解と配慮が成されない限りは、職場で感じる困難を取り除くことは難しい。
 
また、中身を紐解くと、精神障がい者と身体障がい者では、転職理由が大きく異なっていることがわかる。精神障がい者では、「心身の状態への変化」、「人間関係」、「障害への配慮不十分」の合計が半数以上を占めるが、身体障がい者に関しては、同項目が3割に留まる。
身体障がい者の多くは、「会社/業界の将来性が不安」、「待遇への不安」等、キャリアアップを意識した項目や、「勤務地への希望」といった物理的な環境の問題を挙げている。精神障がい者よりも身体障がい者のほうが、一般的な転職理由としてよく聞かれるものに近い感覚を持っているようだが、身体の事情と関係する事柄への不安は大きい。
 
 
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調査では、障がい者が職場に求める配慮事項が問われた。その回答で、全体の54%が「通院や服薬管理等の医療上の配慮」を挙げている。医療上の配慮は、障がいの種類に関係なく重要だ。特に、ハンディキャップが目に見えない精神障がい者や知的障がい者に対しては、理解を深める必要があるだろう。
2位の「業務量への配慮」については、精神障がい者49%、身体障がい者25%が訴えている。3位の「業務習得を明確化する配慮」については、知的障がい者75%、精神障がい者39%、身体障がい者28%という結果だった。
 
 
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身体や精神にハンディキャップを抱えている人も、生きていくために働かなければならないし、働くことは生きる喜びにもつながる。しかし現実には、複数回の転職を余儀なくされ、転職活動もままならない当事者がいる。企業は法律によって障がい者の雇用を義務づけられているが、障がいのある人々にどう配慮したらいいのか、どう活躍してもらったらいいのか、途方に暮れているケースも少なくないだろう。
 
調査結果には、障がい者の職場定着率の低さが如実にあらわれていた。障がいのある人がもっと社会で活躍するためには、まずはここを改善する必要があるだろう。「転職理由」や「職場に求める配慮事項」の回答から、職場環境や労働条件など、改善すべきポイントが見えてくるのではないだろうか。
障がいの種類によって配慮してほしい点が異なるため、それぞれの障がいに対する一定の理解も必要になる。産業カウンセラーや本人の主治医は、企業にとっても有力なアドバイザーになるので、密に連携することが望ましい。障がいがあっても環境さえ整えば能力を発揮する人や、思わぬ才能を秘めている人も多いので、障がい者への理解と配慮は企業側にもメリットがある。
 
さらに、障がいのある人が「転職せざるを得ない」という状況が改善され、よりポジティブな理由で「転職したい」と望んだときに、一般のビジネスパーソンと同じようにチャンスが与えられる世の中になることを期待したい。それもまた、障がいへの理解と配慮の方法が社会全体に定着することにより、実現させていくことができるのではないだろうか。
 
 
【出典】株式会社スペシフィック 障害者総合求人サイト「エラビバ」ユーザーを対象とした『転職活動に関する調査
 
作成/MANA-Biz編集部
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