リサーチ

2020.03.30

リカレント教育「経験あり」「興味あり」の社会人は75%

キャリアアップのために「新しいスキルを身につけたい」

社会人になって働きながら学ぶ「リカレント教育」が注目され、学びたいという意欲を持つビジネスパーソンや、従業員の学びを支援する企業も増えている。ディップ株式会社は2018年8月、「はたらこねっと」ユーザーを対象に『リカレント教育(学び直し)についての調査』を実施し、1,314件の有効回答を得ている。その結果から、社会人のリカレント教育に対する意識や学びの実態を紹介する。

世界におけるリカレント教育とは、学校教育を生涯にわたって分散させようという理念であり、職業上必要な知識や技術を習得するために、フルタイムの就学とフルタイムの就職のサイクルを繰り返すことを指す。しかし日本では成人の学習活動全般を「リカレント教育」と呼び、2018年7月より文部科学省によって推進されている。つまり、働きながら学ぶこと、学校以外の場で学ぶこと、心の豊かさや生きがいのために学ぶこともリカレント教育に含まれるが、基礎教育を終えた社会人の学び直しを推進する背景には、以下のような社会の動きに対応しようという意図があった。
・平均寿命が延びたことにより、働く期間が長くなる(定年後も就労を希望する人が増える)
・テクノロジーの進化により、仕事に求められるスキルが変化する
リカレント教育に対する個人のニーズも高まっており、自らのスキルアップ・キャリアアップや、仕事の効率アップのために、リカレント教育を通して新しいスキルを身につけたいと考える人も少なくない。
ディップ株式会社が実施した『リカレント教育(学び直し)についての調査』においては、6割近くの人が「リカレント教育に興味がある」と回答している。しかし、「リカレント教育の経験がある」という回答は2割に満たず、興味はあってもまだ踏み出せない人が多いようだ。
 
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リカレント教育の経験者に「学び直しの方法」を聞いたところ、「教育機関への通学」が最も多く、そのほかにも「教育機関の特設講座の受講」や「オンライン講座の受講」など、公的または民間の教育機関を積極的に利用している実態が浮かび上がった。
文部科学省がリカレント教育を推進していることを受け、オンライン講義や土日の講義、サテライトキャンパス(社会人が通いやすい場所に部屋を借りて講義をする)を設ける大学・専門学校も増えている。しかし、どの方法をとるにしてもまとまった時間やある程度の費用が必要になるため、独学を選ぶ人や一歩を踏み出せない人がいることも推察され、リカレント教育の課題になっている可能性がある。
 
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調査では9%という少数派であったが、リカレント教育をしたいと思わない人にその理由をきくと、時間と費用への懸念が大きいことが明確にあらわれている。
 
 
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実際に学び直しにかかった時間と期間は、「~週5時間」から「3年以上」までが分散している。学び直しに要する時間は学ぶ分野によっても異なってくるが、選択肢のなかでは最も少ない「~週5時間」という時間さえ確保することが難しいビジネスパーソンも多いだろう。
 
 
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リカレント教育をしたい人が学びたい内容は、「PCスキル」が半数以上を占める。今の時代、社会人にとって基本的なPCスキルは必須ともいえる状況になってきているうえ、日々進化するIT環境に適応していくために、学び続けることの重要性を多くの人が認識しているのだろう。社会のグローバル化を反映して、「語学」も4割近くを占めている。また、「今の仕事に関する分野」も3割以上になっており、仕事に関連したスキルの獲得・向上を目指す人が多い。
 
そういった仕事との両立で協力を必要とする企業の支援体制は、現在どうなっているのだろうか。
そこで、「勤務先にリカレント教育(学び直し)の支援制度はありますか?」と聞いたところ、支援制度を整備している企業はわずか9%しかないことが分わかった。リカレント教育を支援することは、社員が積極的にキャリアアップを目指し、より優秀な人材を育てることができるなど、企業にとっても大きなメリットがあると考えられる。今後、時間や費用の問題を、企業が積極的に支援していく仕組みづくりが期待される。
 
 
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リカレント教育の方法や機会は増えており、今後ますます注目されていくであろう。個人にとっては、日々変化する世の中に対応しながら自身のスキルアップ・キャリアアップを図っていく必要があるため、リカレント教育へのニーズは高まっていくことが推察される。また、これから労働人口が減っていく中、企業は生産性を上げるために、社員個々のスキルアップをサポートしていくことが重要であり、積極的に支援する意義がある。
企業が「リカレント教育」を支援し、個々がスキルアップをしていく。個々のスキルアップが企業に還元され、企業の成長にもつながる。このようなスパイラル構造を作っていくことが、労働人口の減少への具体的な対策にもつながっていくのではないだろうか。
 
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部