リサーチ

2020.03.13

英語に苦手意識のあるビジネスパーソンは約7割

苦手意識の一方で「英語が好き」が過半数。「英語学習中」は19.2%

グローバル化が進む現代社会においては、英語の重要性が増している。日本でTOEIC Programを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、2019年6月に『英語学習の実態と意欲に関する調査』を行った。2020年の東京オリンピックを控え、ますます国際交流に対する興味が高まる中、英語に対するビジネスパーソンの意識や、習得レベルの実態も紹介する。

近年はグローバル化が進み、仕事の中で外国の人とコミュニケーションを取る機会が増えた。以前なら、外資系や一部の企業を除き、一般的な企業においては「海外事業部」など、外国語が堪能な一部の人々が担っていた分野だったかもしれない。しかし今は、同じ職場に外国の人が勤務しているケースも増え、取引先の担当に外国の人がいることも珍しくない。そこで最も使われる言語は“英語”だ。現代のビジネスパーソンは、英語が専門であろうとなかろうと、仕事において「英語を話さなければならない機会」や「英語を話したほうが好ましい機会」に、しばしば直面する。
 
国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が実施した『英語学習の実態と意欲に関する調査』において、「あなたは英語が得意ですか」という質問に対する回答は、「苦手」、「どちらかと言えば苦手」の合計が69%だった。多くのビジネスパーソンが英語に苦手意識を持っている。しかし、「あなたは英語が好きですか」という質問に対しては、「好き」、「どちらかと言えば好き」という回答が過半数にのぼっている。苦手意識はあるものの、英語に好ましい印象を持っている人が多いようだ。
 
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仕事における英語の必要性が高まっているうえ、今の日本は2020年東京オリンピックを控えている。これまで英語が必ずしも必要ではなかった職業の人でも、オリンピック開催期間には訪日外国人の対応をする機会があるかもしれない。会場周辺の飲食店などでは、英語が話せるスタッフの有無が売上に左右する可能性もある。今の日本は、「英語が話せないと仕事ができない」わけではないが、さまざまな分野において「英語が話せるに越したことはない」という気風が、ますます強くなっている。
 
しかし調査によると、現在英語の学習をしている人は19.2%に留まっており、実際に学習するまでの壁は厚いようだ。忙しくて勉強に費やす時間がない、英会話教室に通ったり教材を買ったりする経済的余裕がない等、さまざまな理由があると推察されるが、世の中がまだ英語習得に危機感を抱くほどの状況にはないととらえることもできるかもしれない。
 
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英語学習を「している」と答えた人に、英語学習をしている理由、学習しようと思った理由を聞くと、1位は「海外旅行で現地の人とコミュニケーションを取りたいから」、次いで「キャリアアップ・転職活動のため」だった。ビジネスシーンにおける英語の必要性よりも、個人的な理由で英語学習をしている人のほうが多い。「洋書を原文で読んだり、映画・ドラマを字幕なしでみたいと思っているため」も、あくまで個人的な動機だ。「国内で訪日外国人の方とコミュニケーションを取りたいから」は、仕事とプライベート両方のシーンが想定される。「オリンピック・パラリンピックなど国際的なイベントのボランティアに参加するため」という回答も2割以上あり、英語学習に対するハードルが高い中で、一つのきっかけになっていることがわかる。
 
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外国人従業員を雇用している企業において、社内コミュニケーションの難しさが課題になっているという話がある。もちろん日本で就業するからには、それなりに日本語を話すことができる人が多いのであるが、細かいニュアンスが伝わらず意思疎通できない場面も出てきてしまう。その結果、他の社員と関係を築くことができずに悩む外国の人も多いし、企業側もまた具体的な改善策を出せずに悩むケースがあるようだ。
 
言葉の壁を超えて外国の人と仲良くなることはできるが、共通の言葉があるとさらに親密になれることが多い。2019年秋、大盛況のうちに終わったラグビーワールドカップ日本大会では、他国のアンセム(国歌など)を歌う日本人観衆の姿が、外国の観客の感動を誘った。言葉を話すことは、コミュニケーションの“手段”であるとともに、「コミュニケーションを取りたい」という“意思表示”でもある。ビジネスシーンにおいても、こちらからも日本語以外の言語で語りかけることによって、相手とより良好な関係を築くことができるかもしれない。
 
英語の勉強法にも、今はさまざまな選択肢がある。ICTを活用して、安価で隙間時間を使った学習ができる方法が増えており、Skypeを利用して他国の英会話学習プログラムを受講することもできるし、YouTube等でも英語学習のための動画が配信されている。高校や大学、専門学校で取り組まれているリカレント教育(※)を活用することもできる。また、最近は英会話カフェや多言語カフェが流行しており、低価格で参加できることが多いのでオススメだ。ネットorリアルを問わず、英語を話す友人ができれば、英語学習への意欲も高まるのではないだろうか。英語学習の動機はさまざまであるが、これからますますグローバル化が進む中で、英語がビジネスシーンで役立つことは間違いないだろう。
 
※義務教育や基礎教育を終えて労働に従事するようになってからも、個人が必要とすれば教育機関に戻って学ぶことができる教育システム
 
 
【出典】国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)『英語学習の実態と意欲に関する調査
 
作成/MANA-Biz編集部