組織の力

2020.02.27

第4次産業革命時代の「働き方変革」vol.3

「はたらく」の主役は企業から個人へ

株式会社リクルートキャリアのHR統括編集長である藤井薫氏が、3回シリーズで「未来のはたらく」を語る連載の最終回。今回は、働き手と企業との関係性についてお話いただいた。藤井氏は「働き方を決める主体は、企業から一人ひとりの働き手へとシフトしていくでしょう」と予測する。さまざまなメディアを通じて働き手と企業をつないできた藤井氏に、働き手と企業の今後のあり方をお聞きする。

企業主体の働き方改革では
真の変化は起こせない

近年、多くの企業で働き方改革が行われ、企業も働き手も、これまでとは違うワークスタイルを模索し、新しい働き方に実際に取り組み始めています。
 
働き方改革をきっかけに働き方を見直していくこと自体はすばらしいと思いますが、一つ気になるのは、働き方改革の主体が企業であるケースがほとんどだということです。働き手の意向を考えずに、労働時間の上限といった枠組だけを決めてしまうと、働き手は「退社時間が決まっているから顧客としっかり向き合うのが難しい」「労働時間の上限が決まっているので、スマホで隠れ残業をしている」などと不満を感じがちです。納得感のないまま上辺だけ取り組んでも、真の変化が起こせないのは自明の理と言えるでしょう。
 
 
 

「働く」を決める主体は
経営側から働き手へとシフトする

私は数年前から、「働き方においては、改革ではなく変革が必要」と主張しています。「今より少しよい状態」の積み重ねを指す「改革」という言葉に対して、「次元が違う変化」という意味で「変革」という言葉を使っています。
 
また、歴史学において「変革」は「主権が変わること」といったニュアンスを表す用語でもあり、私はその意味でも「変革」という言葉にこだわっています。というのは、今後は「働く」を決める主体者は、企業・経営側から個人へとシフトしていくと考えているからです。
 
例えば働き方のスタイルにしても、「今は介護中なのでリモートワークで働く」「子育てが終わったからグローバルに国内外を飛び回りたい」など、決めるのはあくまでも働き手側という流れになっていくことが予想されます。
 
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野球型組織から
サッカー型組織へ

ではなぜ、「働く」の主体者が個人に移っていくのでしょうか。それは、企業において従来のピラミッド型組織における限界が表面化しつつあり、一人ひとりの働き手が平等に権限と責任をもつ組織形態へと変わることが求められているからです。
 
ピラミッド型組織は、スポーツでいうと野球に例えられます。野球では、チームの監督がすべての決定権をもち、プレイヤーは監督の指示に従って動きます。何か問題が起こっても、プレイヤーは監督の最終決定を待たなければなりません。
これに対して、個人の裁量が大きい組織は、サッカーに例えられます。サッカーの試合では、戦況が刻々と変わるため、一人ひとりのプレイヤーは一瞬ごとに「今、何をするのが最善の方法か」と状況を判断し、同時に同じフィールドの仲間と連携を取りながら行動しています。
 
ビジネスをめぐる状況がスピーディに進化する今の時代、ビジネス成功のカギを握るのはスピードです。現場で判断を行わず、いちいちトップやマネジャーの判断を待っていたら、競合に先を越されてしまいます。その意味で、今後の組織は野球型からサッカー型に移行し、一人ひとりの働き手がクローズアップされると思われます。
 
 
 

一人ひとりがプロフェッショナルとして
オーナーシップをもっていく

サッカー型の組織では、一人ひとりがオーナーシップをもち、役割をその場ごとにどんどん変えながらメンバー全員で意志決定を行っていきます。誰が中心というわけでもなく、一人ひとりがプロフェッショナルとして誇りを抱き、自己を活かしながらプロジェクトごとに連携し合うことによって、喜びをもって働くことができます。また、働き手が喜びをもって仕事をすることによって、アウトプットの質が上がり、顧客にもより多くの喜びを提供できるようになると考えられます。
 
このような喜びの連鎖によって、働き手は効力感や貢献感を感じ、ますます喜びを感じながら仕事ができるようになります。AIやコンピュータなどのテクノロジーに単純労働を任せることが可能になるこれからの時代、人は喜びの授受をベースとする仕事に集中できるようになり、「働く機会をいただいて、他人に喜びを提供できてうれしい」と感じながら生き生きと働けるようになるのではないでしょうか。
 
また企業側も、働き手を管理しようとするのではなく、一人ひとりの才能やスキルが開花する働き方ができるように、サポートやマネジメントを行っていくことが大切です。個々の働き手がイキイキと輝くことによって、強い組織になれるのです。
 
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藤井 薫(Fujii Kaoru)

株式会社リクルートキャリア HR統括編集長。入社以来、人材事業のメディアプロデュースに従事し、『TECH B-ing』編集長、『アントレ』編集長などを経て現職。また、株式会社リクルートのリクルート経営コンピタンス研究所を兼務。現在、「はたらくエバンジェリスト」(「未来のはたらく」を引き寄せる伝道師)として、労働市場・個人と企業の関係・個人のキャリアにおける変化について、新聞や雑誌でのインタビュー、講演などを通じて多様なテーマを発信する。デジタルハリウッド大学と明星大学で非常勤講師。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)がある。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ
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