リサーチ

2020.02.19

フレックスタイムで「希望どおりの出退勤」は実現できる?

メリットとデメリットのバランスを取り、効果的に制度を利用するためには

働き方改革施行前から導入している企業もあった「フレックスタイム」。柔軟な働き方を実現するための制度の一つであるが、実際に利用している人はどう感じているのだろうか。2018年2月、マイナビ転職では、24歳~66歳の社会人1,314人を対象に実施した、フレックスタイムの利用実態についてのインターネット調査の結果を発表した。その結果をもとに、フレックスタイムのメリット・デメリットや課題について考える。

フレックスタイムとは変形労働時間制の一つで、就業規則で決められた一定期間(清算期間)の総労働時間のなかで、労働者自身が出退勤時間や労働時間を自由に決めることができる。働き方改革の内容にある「柔軟な働き方がしやすい環境整備」という方針に対して、フレックスタイムが有効であるとして、導入する企業が増加してきている。また、国もフレックスタイムの普及を推奨しており、働き方改革に関する法整備においても、フレックスタイムをより利用しやすくするための法改正(清算期間の上限を1か月から3か月に延長)が行われ、2019年4月から施行された。
 
マイナビ転職が発表した調査結果によると、勤め先にフレックスタイムが「ある」と答えた人は全体の22.8%だった。2018年2月の段階でも、すでに一定の企業がフレックスタイムを導入していたことがわかる。働き方改革施行に際して導入した・導入の検討を始めた企業もあることを考えると、この数字はさらに伸びていくだろう。しかし、フレックスタイムがあると答えた人の中で、「フレックスで働いている」と答えたのは、半数以下の43.3%に留まっており、制度の普及に向けて大きな課題といえる。
 
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フレックスタイムのメリットは、「通勤が楽」という回答が59.0%で1位に挙がった。ラッシュ時を避けて出退勤できることで、満員電車等の通勤ストレスから解放される。また、2位、3位に挙がった項目をみると、平日の日中しか開いていない病院や役所、銀行窓口などに行きやすい、自身の都合に合わせて時間管理ができることで、プライベートが充実するといったメリットもあるようだ。
 
一方、デメリットについては、「デメリットは感じていない」が38.1%で1位だった。2位の「社内のコミュニケーションが取りにくい」や、4位の「勤務時間外でも仕事の連絡が来る」、6位の「取引先とのコミュニケーションが取りにくい」は、同僚や他社と勤務時間がずれることによって生じる弊害だ。3位の「出退勤の勤務記録提出や自己管理が大変」という問題を解消するには、システムと各々の意識の双方を見直さなければならない。フレックスタイムの導入によって勤怠管理が煩雑になっている場合は、管理しやすいシステムの構築が必要である。また、自身の勤務や生活リズムに対する管理能力の向上も求められるだろう。
 
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フレックスタイムのデメリット5位には「実質、希望の時間に出退勤はできていない」という回答が入った。「出退勤の時間を思うように決められないことは、どれくらいの頻度でありますか?」という質問に対する回答では、「毎日」が1位に挙がった。フレックスタイムが利用できる環境であっても、勤務時間帯を希望どおりに調整できなければ、制度のメリットを感じにくくなる。
 
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じつは、フレックスタイムを導入している企業でも、コアタイム(全員に出勤義務のある時間帯)」が設定されている場合が多い。調査では、自身が勤める会社で実施されているフレックスタイムにおいて、「コアタイムが決まっている」という回答が64.9%にのぼっていた。
コアタイムは共同で業務に臨む時間やミーティング時間の確保等を目的に設けられるものだが、コアタイムが長いと、あまり通常の出勤時間との違いを感じることができないようだ。調査によると、コアタイムの開始時刻は10時(50.6%)、終了時刻は15:00(51.7%)が最多であった。
 
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コアタイムによる不自由さを解消するためには、設定時刻を見直したり、思い切ってコアタイム無しの「スーパーフレックス」を導入したりするという方法もある。ただし、コアタイムは社内コミュニケーションや連携の希薄化など、フレックスのデメリットを軽減するための施策でもあるため、スーパーフレックスでは社内のコミュニケーション・連携不足はもちろん、取引先とのやり取りに支障が生じやすいというリスクもある。また、業務に携わっている以上、コアタイムの有無にかかわらず、相手に合わせなければならないシチュエーションは避けられないだろう。
しかし、完全自由ではないにしても、フレックスタイムをうまく使えば、通勤ストレスの緩和や体調管理、プライベートとの両立にも効果的なのは間違いない。働き方改革の推進に加え、2020年には東京オリンピックが控えており、通勤に及ぶ影響が懸念されるなか、フレックスを導入する企業は増えていくだろう。勤め先にフレックスタイムがある人、近い将来導入される予定がある人は、まずは業務上やむを得ない拘束が少ない時期などに、積極的に制度を利用してみてはいかがだろうか。
 
 
作成/MANA-Biz編集部