組織の力

2020.01.14

激変する金融業界をABWとオフィス改革で生き抜く、信金中央金庫が目指す未来の働き方とは

WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS vol.2

2019年11月22日(金)に開催した「WORKSTYLE INNOVATION PROJECTS」から、信金中央金庫 井川貴志氏が登壇した「激変する金融業界を生き抜くために取り組んだABWとオフィス改革~信金中金 7つの変化~」の様子をレポートする。オフィスリニューアルに伴う新しい働き方にチャレンジする信金中央金庫の取り組みについて、コクヨのコンサルタント 吉澤利純が話しを聞いた。

信用金庫の中央金融機関である
信金中央金庫の役割とは

吉澤:金融といえば一般的には決められたことをルールに沿って堅実に仕事をするイメージがあり、ABWや自由な働き方からは縁遠い業界と思われがちですよね。そんな金融業界での今回の改革についていろいろとお話しいただければと思います。まずは信用金庫業界について教えていただけますか。 
 
井川:信用金庫というのは、相互扶助・非営利を基本理念とした、中小企業や地域住民のための金融機関です。銀行との対比で見ると、信用金庫は事業エリアが限定されており、地域社会繁栄への奉仕などを使命としています。
信用金庫業界の規模は、店舗は全国に約7,300店舗、役職員数は約10万人、ATMは約2万台あり、ひとつの金融グループとして見ると圧倒的な営業基盤を有します。
 
信金中央金庫は、全国の信用金庫からの出資で成り立っている、信用金庫の中央金融機関です。信用金庫のセントラルバンクとして、各々の信用金庫の業務および経営のサポートを行っています。また、信用金庫業界の資金運用機能として、国内外の金融市場で約38兆円を運用している側面もあります。
 
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吉澤:今回のテーマに “激変する金融業界”とありますが、金融業界では今どんなことが起こっていて、その中で信用金庫業界がどのような状況に置かれているのか、教えていただけますか?
 
井川:経営環境としては、人口の減少や高齢化の加速、中小企業数の減少などに伴う地域経済の疲弊といった根源的な問題が挙げられます。信用金庫は、事業エリアが一定の地域に限定されていますので、まさに、こうした地域課題の解決のため尽力しているのが現状です。
 
加えて、大きな影響を受けているのが、デジタライゼーションの急速な発展とフィンテック企業の台頭です。フィンテック企業は金融機関と営業面でバッティングする部分もあり、大きな脅威になりつつあります。とはいえ、私どもとしては、信金中央金庫が信用金庫業界のハブ、コーディネーターとして、業界を越えフィンテック企業も含めたさまざまな外部機関と連携することも視野に入れ、業界のネットワークを「課題解決システム」へと進化させようと取り組んでいるところでもあり、ビジネスチャンスとしても捉えています。
 
吉澤:そのような激変する環境下でビジネスを発展させるということは、信金中央金庫様においてどのような状態になることをイメージされていますか?
 
井川:今年度からスタートした中期経営計画に基づき、信用金庫とともに、各々が強みとする分野への経営資源の適正配分を実現することで1つの金融グループとして、より一体的な業務運営態勢を構築し、業界の競争力を高め、信用金庫が地域において最も信頼される金融機関となることを目指しています。各々の信用金庫の経営はもちろん独立していますが、これからは1つの金融グループとして、役割分担をしていこうという趣旨ですね。
 
 
 

オフィス改革のパートナーとして
コクヨを採用した理由

吉澤:では、いよいよ実際の働き方改革の話に移っていきたいと思います。今回、大規模なリニューアルプロジェクトということで、信金中央金庫様のトップである理事長の想いも強かったのではないかと思いますが、どのようなメッセージを発信されたのでしょうか。
 
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井川:理事長からは、「面白い仕事・楽しい職場を実現する」、「新しいことにチャレンジし、失敗も受け入れる風土を創る」という2つのメッセージがありました。これからは業界の中央金融機関として、クリエイティビティを発揮することが求められます。そのためには、面白い仕事、楽しい職場を実現することで、新しい挑戦を推奨していかなければなりません。みんながイキイキと仕事ができて、職場に誇りをもてるようにしたいという想いがありました。
 
吉澤:堅実で失敗をしないことが是とされるこれまでの働き方とは対極にあるように思うのですが、これを聞いた職員のみなさんの反応はいかがでしたか?
 
井川:正直、最初は戸惑いもあったかもしれません。ただ、実際にオフィスの改装が始まると、若手は目を輝かせてピュアに受け止めてくれていたと思います。しかし、私のような中間管理職以上の人間は、これまでの環境に大きな変化が生じることに対し、恐怖感のほうが強かったのではないかと思います。これまでは決められたことを着実にやることで評価されてきた文化がありましたので、今までの自分のやり方は通用しなくなるのではとの懸念があったのだと思います。
 
吉澤:ところがアンケートを取ってみると、実は職員の方々も「提案型の仕事に変えたい」、「今までと同じ仕事の繰り返しは嫌だ」といった想いが表れていましたよね。理事長の想いと職員の方々の想いは、一致している部分も多いことがわかりました。しかし、そうは言っても実際に働き方を変えていくのは、そう簡単なことではありません。今回の働き方改革のプロジェクトに、外部パートナーを入れた理由、またコクヨを選んだ決め手などがあれば教えていただけますか?
 
井川:私どもは2007年に京橋から現在の八重洲本店に移転してきました。本当はそのときに什器を全面刷新することも検討したのですが、結局、京橋から持ってきたものをそのまま使うことになりました。そのため今、使用している什器は20〜30年も使ってきたものなんです。これを全面刷新し、時代の変化を捉えた新しいオフィス改革を推進するには外部の知見をかりる必要がありました。
また、コクヨさんはオフィス改革の経験・実績ともに豊富ですし、ライブオフィスもされている。コクヨさん自身が実践されている点を高く評価しました。
 
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オフィスが完成したら終わりではない
オフィス改革の難しさ

吉澤:新たな働き方を考える中で、3回にわたって職員参加型のワークショップを開催しました。各部署から幅広い年代の方に、30名ほど集まっていただきました。
 
井川:ワークショップでは、職員の積極的に参加する姿勢がうかがえ、これからの働き方や、新しいオフィスに対する想いの強さを肌で感じることができました。ここで出たアイデアは極力採用するように努めてきました。
 
吉澤:これから自分たちはどうなっていきたいのか、どういう働き方をしていきたいのかを自分ごととして考えた濃密な3日間だったと思います。その想いが新しいオフィスの設計にも活かされています。このワークショップを経て『ENJOY! 〜for the next innovation〜』というワークスタイルコンセプトが決まりましたが、この言葉に込められた意味や背景をお聞かせいただけますか?
 
井川:この“ENJOY!”という言葉は、ワークショップのメンバーのアイデアをそのまま採用したものです。理事長の掲げる「面白い仕事」、「楽しい職場」をシンプルに表現し、その上で何のために楽しく仕事をするのか、という目的を明確にするために“for the next innovation”を付け加えました。コクヨさんのコンサルティングを受けていなければ、私どもの会社のキーワードとして“ENJOY!”は、まず選ばなかったと思います。
 
吉澤:このコンセプトワードをもとに、信金中央金庫にABWの導入などの変化を起こしていこうと、提案させていただきました。今年の7月に全社に先駆けて、井川様の所属する総合企画部がパイロットオフィスとして改装されました。実際に新しいオフィスにおいて変化は起こっていると感じますか?
 
井川:新しいオフィスには、集中スペースやハイカウンター、ソファー席などがあります。当初は「こんなの使う人、いるのかな?」と思うものもありましたが、想像以上に有効活用されている印象ですね。ABWは、かなり進んでいると思います。
 
吉澤:パイロットオフィスでの業務が始まって、しばらく経ってから、総合企画部のみなさんに、7つの変化について自己評価していただきました。その結果を見ると、ABWな働き方も取り入れられているし、タテ、ヨコのコミュニケーションも活性化したと感じているようです。
 
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吉澤:このようにパイロットオフィスは順調に進んでいますが、総合企画部は経営層とも距離が近くて、比較的コンセプトを理解されている方も多い。逆にこれから全職員に対して、コンセプトや働き方改革にかける想いを浸透させていくのは、ハードルが高いのではないかと思います。その辺りはどうお考えですか?
 
井川:まさにおっしゃる通りです。総合企画部は他部門に先駆け、パイロットとしての意識が高めだったので、このようなアンケート結果になったと思いますが、他の部署はこういうわけにはいかないでしょう。パイロットオフィスを自由に見学できる期間を設けたり、各部署に説明会の機会を設けたりと、工夫はしています。説明会についても、総合企画部のメンバーが話すのではなく、各部署から参加していたワークショップのメンバーに、自分が所属する部署の上司を連れてきてもらい、彼らの言葉で直接説明してもらうことで、意識改革を図ってきました。
 
これからは私のような上にも下にも働きかけができる中間管理職層の意識をいかに変革していけるかが課題になるだろうと考えています。
 
吉澤:そうですね。「ABWとは何か」、「オフィス改革の狙いは何か」といったことを解説した「これからの働き方ガイドブック」を作成して、説明会をさせていただきました。オフィスを変えて終わりではないです。その先を見ないといけない。管理職の方々の行動が変わっていかないと、若手職員の気持ちも萎んでしまいかねません。
 
井川:管理職層の意識改革にオフィス改革の成否がかかっていると言っても過言ではないと思います。また、オフィス改革だけではなく、ペーパーレス化や、館内の無線LAN化といったシステムインフラの整備にも取り組んでおり、こうした一連の取り組みによって、より大きな効果を得ることができるのだと思います。
 
吉澤:では最後に、今回の働き方改革の経験を基に業界の発展など、展望されることがあればお聞かせいただけますか。
 
井川:本店には、常日頃から全国の信用金庫の方々が来訪されています。その際、希望される全ての方に対して、パイロットオフィスの案内をしてきました。多くの方は、良い意味で信金中央金庫らしくないオフィスを見て、驚かれると同時に、非常に高い関心をもっていただいていると思います。また、ソファー席を設置するにあたり、長時間くつろぐ職員もいるかもしれないと懸念もしましたが、幸いそうした職員は一人も目にしたことはありません。リスクだけに気を取られるのではなく、このオフィスで何を起こしたいのかをポジティブに考えていくことが大切であり、そうすることでオフィス改革の効果は大きくなると思いますし、目的の達成にも近づくのではないかと考えています。
 
吉澤:普段はなかなか聞けない改革の本音をたくさん語っていただきました。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
 
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井川 貴志

信金中央金庫 総合企画部 事業戦略グループ 

吉澤 利純
コクヨ株式会社 ワークスタイルイノベーション部

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