リサーチ

2020.01.10

ワーママ、ワーパパで「家庭の時間が十分に取れている」は約1割

幼保無償化を「働く時間の削減」につなげたい層も

幼児教育・保育の無償化の施行が2ヶ月後に迫った2019年8月、総合人材サービス、パーソルグループのパーソルキャリア株式会社は、運営する転職サービス「doda(https://doda.jp/)」内において、『幼児教育・保育無償化制度についての調査(※)』を実施した。
※調査対象:全国のフルタイムの会社員、共働き夫婦、幼保無償化の対象家庭20~40代男女計600人

2019年10月、幼児教育・保育の無償化がスタートした。主な対象となるのは3歳~5歳児のいる世帯で、非課税世帯のみ0歳~2歳児も無償化の対象となる(認可保育施設利用料を4.2万円/月まで補助)。通園する施設の種類や、子育て支援制度の対象になっているかどうかなど、条件によっては完全無償ではなく利用料が発生するが、その場合も補助金が受けられるので、従来よりも支払い額が大幅に減る家庭が多い。
転職サービス「doda」で実施された『幼児教育・保育無償化制度についての調査』では、「幼保無償化の補助金をどうするか」という質問に対して、「子育ての費用に充てたい」という回答が71.6%で1位に挙がり、「貯金したい」、「家族での旅行や娯楽に充てたい」、「生活費に充てたい」と続いている。いずれも具体的な補助金の“使い道”に関する内容が並ぶ中で、意外性のある回答が5位の「その分仕事を減らして時間を増やしたい(23.0%)」である。2割強の人が、補助金を何らかの資金にあてるだけではなく、必要経費に補填し、なおかつその分の仕事を削減したいと考えているようだ。
 
 
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別の質問では、全回答者の70.6%が「家庭の時間を得るために仕事の時間を減らしたい」と答えている。幼保無償化によって、保育園だけでなく幼稚園の預かり保育にも補助金が出るようになったが、多くのワーママ・ワーパパの本音は、「仕事がしやすくなる」よりも、「家庭の時間を増やす」ことを望んでいるのかもしれない。幼保無償化の補助金を「収入の補填→仕事の削減」の手段として考えている人は2割強であったが、幼保無償化によって経済的に余裕ができる分、仕事を減らせるのではないかという期待感を持つのは、ごく自然なことであろう。
 
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「現在、家庭の時間を十分に取れていると思いますか」という質問に対して、「十分に取れている」と回答した人は、14.0%に留まっている。「あまり取れていない・全く取れていない」と回答した回答者111人を対象に、「十分に取れていないと思う家庭の時間」の内容を聞いたところ、「子どもとの触れ合いの時間」と「自分のための時間」が、ともに92.8%で1位だった。子どもを保育園や幼稚園に預けて働いているワーママ・ワーパパは、帰宅後も家事や育児に忙しい。その結果として、ゆとりを持って子どもと接する時間や自分のために使う時間が削られていく。3位の「休息のための時間」や4位の「夫婦で過ごす時間」は、十分に取れているから1位よりも数値が低いのではなく、そこに目を向けている余裕すらない人がいることの表れなのではないだろうか。
 
 
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仕事を「収入を得る手段」として考えれば、幼保無償化によって浮くお金で収入を補填し、その分仕事を減らすという発想は理にかなっているように思われる。しかし、「幼保無償化によって補助が受けられたら、はたらく時間を減らすことができますか」という質問に対して、「減らせる」と回答したのはわずか4.1%だった。計算上は仕事を減らして生活が成り立つとしても、働いている以上は責任が伴う。また、近年は人材不足が深刻であり、積極的に働き方改革を進めようとしていても、残業や休日出勤が大幅に減るという成果にまでは至っていない企業も多い。
 
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幼保無償化によって、子育て世帯には確かに従来よりも経済的な余裕が生まれる。しかしその使い道としては、子育ての費用や生活費、将来のための貯金などの“必要経費”が最優先されている。必要経費を補填できる分、仕事を減らして家庭の時間を増やしたいと考えても、一筋縄ではいかない。家庭の時間を増やす方法としては、幼保無償化は間接的すぎて不十分である。
そこで重要になってくるのが、働き方改革の推進である。2019年4月に施行されたものの、人員や業務量が変わらないなかで、働く時間を削減することは難しい。企業ぐるみで取り組まなければならないため簡単ではないが、業務の効率を上げるためのフローの見直しやITツールの導入など、あらゆる手段を探っていくことが必要であろう。また、「柔軟な働き方」として注目されているテレワークやフレックスタイムなどをうまく利用していくことで、家庭の時間を増やすことができるかもしれない。何より大切なのは、そういった制度の利用や有給休暇の取得などに対する抵抗感をなくすことだ。同僚や取引先など、周囲とのバランスも大切であるが、「帰れるときは帰る」、「休めるときは休む」という意識を皆が持つことによって、「働きやすい社会」と「子育てしやすい社会」の歩幅が揃っていくのではないだろうか。
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部