組織の力

2019.12.25

組織風土改革を加速させる三菱マテリアルのオフィス移転〈後編〉

誰もが当事者意識をもって新しいマテリアルをつくる

組織風土改革の一環として行われた三菱マテリアル株式会社のオフィス移転。移転プロジェクトを進めたメンバーたちは、それぞれの役割を果たしながら多くの社員を巻き込み、移転後に理想のワークスタイルを実現するための土壌づくりを進めた。また、新オフィスの空間デザインや移転後のワークスタイルには、同社の課題解決につながる要素がふんだんに盛り込まれている。後編では、プロジェクト推進を担ったメンバーたちの活躍ぶりや、移転後にみられる同社の変化についてお聞きする。

左から)彌永宏之さん(主に建築計画を担当)、秀真里奈さん(主に空間・家具デザインを担当)、藤田悠さん(主に働き方改革・風土改革を担当)、田中健太さん(主に書類削減を担当)、廣川英樹さん(移転PJリーダー)

『枠をこえてつながるオフィス』
のための空間

同社では、各事業が枠組みや領域を超えて切磋琢磨する開拓・共創精神の復活と、今の時代に求められる新しい価値の共創を目指して組織風土改革に取り組んでいた。改革に着手するにあたって行われた社員アンケートなどから挙がった「部門が異なる社員同士のコミュニケーション不足」「一般社員と経営層との間に距離がある」「業務の進め方が非効率」「チャレンジ精神不足」といった課題を解決するための施策のひとつとして計画されたのが、本社の移転だ。新オフィスで実現したい働き方として『枠をこえてつながるオフィス』というコンセプトも決まった。
移転プロジェクトを担ったメンバーは課題を解決するべく、他社のオフィス見学なども行い、新オフィスの空間デザインや設備の構想を固めていった。
 
オフィス空間の構想や家具選定を担当した総務部総務グループの秀真里奈さんは、「社員同士のコミュニケーションが生まれる空間」を意識したという。
「社員が執務フロアを行き来できる内階段をつくり、周囲にはカフェスペースや打合せスペースを設置して「人が集まる空間づくり」を心掛けました。また、旧オフィスになかった社員食堂を新設し、仕事以外でもリフレッシュしながらコミュニケーションをとれるよう、当社の社有林材でつくった卓球台を食堂の個室に置くことにもこだわりました」
 
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右)秀真里奈さん(主に空間・家具デザインを担当)

 
「一般社員と経営層との間に距離がある」という課題も、空間デザインによって解決をはかった。社長室はじめ役員個室をガラス張りにし、社員の執務エリアから互いを確認できるゾーニングにしたのだ。
 
 
 

業務の効率化に向けて
会議やソロワークの環境を整える

建築計画を担当した生産技術センターの彌永宏之さんは、「非効率な業務」という課題を、オフィスレイアウトを通じて解決できるよう力を尽くした。
「旧オフィスでは、『会議室が予約でいっぱいだからミーティングができない』という声が社員から挙がっていました。しかし会議室の利用状況を確認すると、大会議室を少人数で使うケースも。そこで新オフィスでは、執務エリアに十分な打ち合わせスペースを計画し、思い立ったらサッと打ち合わせができるよう、ソファーブースやテーブルを点在させました」
さらに、業務や気分に合わせて場所を選択してソロワークができるよう、窓際に集中スペースなどをつくって、社員がベストパフォーマンスを発揮できる環境も構築した。
 
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右)彌永宏之さん(主に建築計画を担当)

 
  • ソロワークもミーティングもできるオープンスペース。フロア中央には各階を繋ぐ内階段を設置。
  • モニターを使ってペーパーレスな会議ができるソファーブース。
 
 
 

社員の当事者意識を醸成させる
タイムリーで継続的な情報発信

プロジェクトを進めるにあたってチームメンバーが意識したのは、社員に「オフィス移転は自分たちのための施策」と思ってもらうことだった。そこで改革推進部の藤田悠さんは、東京・大手町地区の社内報『つながるまてりある』の本社移転特別号をつくり、移転プロジェクトに関する情報を定期的に発信する取り組みを始めた。
 
「社長をはじめとする経営陣の想いや移転プロジェクトの進捗などを多くの人に伝えるため、トップや各部門長へのインタビュー記事のほか、プロジェクトの進行状況や各種調査からわかった社員の希望を掲載しました。少しでも興味を持ってもらえるよう、オリジナルキャラクターなども登場させ、親しみやすい誌面を心がけました」
 
 
 

口コミマーケティングを
社員の意識改革に活かす

社員からの多様な意見を反映するため、移転プロジェクトを進める主要メンバーとは別に、ワーキンググループも設置した。年齢や性別が偏らないよう、各部署からメンバーを1名ずつ選出。藤田さんは、「多様なアイデアがほしかったし、口コミ効果も狙いたかった」とワーキンググループ結成の意図を語る。
 
「グループのメンバーたちが自分の部署で活動内容を他の社員に口コミで広げてくれれば、移転に向けて意識醸成がスムーズに行われるのではと期待しました」
ワーキンググループのメンバーには、理想の働き方、空間設計や共有コーナーのネーミング等について意見を出してもらった。社員食堂のメニューを検討するための試食会や、他社のオフィス見学にも加わった。内階段周りの共有スペースに付いた「PLAZA」というネーミングは、ワーキンググループから出てきたアイデアだという。
 
 
 

7割の書類を減らしたら
働き方も変わった

移転に際して欠かせなかったのが、書類の削減だ。新オフィスでは、書棚が占めているスペースを削減したうえで、執務スペースの一角にゆったりしたコミュニケーションスペースをつくることにした。
そこで立てられたのが「7割の書類を削減する」という目標だった。書類削減を担当した総務部総務グループの田中健太さんは、削減活動イベントを3回実施し、イベントが終了する度に各部署を回り、進捗確認と困りごとを聞いた。廃棄をしやすくするために、「ファイルから外さなくていいので、そのまま箱に詰めて出してください」と声をかけ、各部署に負担をかけないよう配慮した。
 
「どの部署も日々の業務で忙しい中で、書類を仕分けるのは時間も手間もかかります。それでも根気強くお願いしたら、移転直前にはどの部署も大量の不要書類を出してくれました。お願いに行く中でいろいろな人と話せて人脈が拡がり、異動してきたばかりの私にとって個人的にも意味がある業務でした」
最終的な削減率は66%で目標をほぼ達成。各部署が書類削減に取り組む中で「そもそも書類をつくらない」という意識が醸成されて、オフィス移転後は会議などでペーパーレス化が進んでいるそうだ。
 
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左)田中健太さん(主に書類削減を担当)

 
 

三菱マテリアル株式会社

1871年に岩崎弥太郎が創設した炭鉱・金属鉱山事業を発端とし、1990年に三菱金属と三菱鉱業セメントとの合併によって誕生した総合素材メーカー。「人と社会と地球のために」を企業理念に、セメントや銅地金といった基礎素材の供給・加工などを通じて、21世紀のより豊かな地球社会実現に貢献する企業を目指す。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ
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