組織の力

2019.12.04

あなたのオフィスはフリーアドレスにすべき?

オフィスリニューアルの際に、社長から「フリーアドレスオフィスも検討してみてはどうか?」と言われたとすると、何からどのように対応すればよいでしょうか?「部下がどこにいるかわからない」「全員出社しても席が足りるのか」「資料が手元にないと仕事がやりにくい」などワーカーからの様々な抵抗が予想されますよね。「社長の椅子を目指す」などという言葉もあるように席=自分の地位や居場所という考えは根強いものです。さらにフリーアドレスオフィスというと賃料コスト削減の効果が強調され、ワーカー自身にとっては自席という既得権を手放してまで得るメリットが何なのかがわかりづらいかもしません。今回はファシリティコスト削減の視点だけでないフリーアドレスオフィスを考えてみましょう。

コクヨでは1997年より導入

1_org_084_01.pngコクヨは1997年より自社でフリーアドレスを取り入れ、失敗も含めて様々な経験値を得ています。近年では席を減らすのではなく多様な席を社員数以上に用意する会社もあるなどフリーアドレスの形態も多様になり、働き方の変化やそれを支えるIT技術の進展によって現実的な選択肢のーつとなってきています。

 
 

フリーアドレスオフィスのメリット

ではファシリティコスト以外のメリットとは何でしょうか?
 
●普段話さない人とのコミュニケーション
日によって異なる様々な人と席を接して会話することで、チーム内に固定しがちなコミュニケーションか柔軟になり、新たな情報や発想を得ることができます。例えば違う部署の管理職の人にも話しかけやすくなったという声もあります。
 
●業務内容や好みに応じた場所を選べる
自分の集中しやすい場所など好みの場所を選んだり、今日の仕事に必要なものや環境を考えて仕事に向かうことで、仕事の組み立てに対して自律的に取り組むことができます。またすべて片付けて帰宅することで終業のメリハリもつきます。
 
●組織変更や人員増に柔軟に対応できる
組織変更やプロジェクトだけでなく、メンバー増員やヘルプで来た人の席などもフリーアドレスであればレイアウト変更工事が不要なため臨機応変に対応できます。
 
 
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どんなメリットを期待してフリーアドレスを導入するかをあいまいにしたまま進めるとワーカーの納得感は得ることは難しいでしょう。
 
 
 

フリーアドレス導入時に注意しておくべきこと

その上でフリーアドレスが成功するために事前に検討しておくべき課題があります。
 
●チーム内のコミュニケーション

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様々な人とコミュニケーションが取れる反面、チーム内での暗黙知や一体感といったものが弱まる恐れがあります。最近ではエリアを決めて席を選ぶグループアドレスを採用する企業が増えています。また、チーム内に新入社員や若手社員がいる場合には、席を固定したり、指導社員と同席するなどの方法があります。
 
●自由に動けるツールの整備
ワーカーは自席の代わりにどこでも仕事ができる環境を手にしたわけですが、それを支えるツールが十分でないと仕事のしづらさばかりを感じます。無線LANやノートPC、携帯電話はもとより、ロッカーやメールボックス、スケジュール共有で所在をわかりやすくする、紙書類を増やさないようミーティングはモニターを活用するなど新しい働き方に適したツールを整える必要があります。
 
●運用が維持できる体制

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オフィス運用を維持できる仕組みづくりはどんなオフィスでも必要ですが、特にフリーアドレスオフィスでは、放置された荷物で席が埋まっている、毎日同じ席に座り実質的に自席化されるなど、なし崩し的に運用が破綻する恐れがあります。維持に無理が生じないよう、計画時には在席率は最も出社率の高い日時を基準としているか、必要以上に面倒な行動を強いていないかなどの確認が必要です。また、途中からオフィスを利用する人にも運用ルールがわかるようマニュアルを整備するとよいでしょう。

 
このようにフリーアドレスオフィスとはただ席を共有すればよいというものではなく、働き方を大きく変革し、運用やそれを維持する仕組みづくりによってはじめて期待する効果が発揮できます。また、自分で考え行動できるような自律したワーカーほどフリーアドレスオフィスが働きやすいと答える傾向にあります。フリーアドレスを検討する際には上記のようなメリットや検討事項を考慮してください。
 

オフィスのチカラ

この記事は、コクヨ株式会社が発行する冊子『オフィスのチカラ』に掲載されたものです。冊子『オフィスのチカラ』をご希望の方は、こちらのフォームの「カタログのご請求フォーム」の「家具単品カタログ」の枠に『オフィスのチカラ』最新号希望とご記入の上、ご送信ください。

オフィスのチカラ vol.3より転載