リサーチ

2019.10.21

リモートワークのメリット1位は「対人ストレスの軽減」

産業医500人がリモートワークを考える

働き方改革関連法が施行されてから、残業時間の削減や有給休暇取得の義務化と同時に進められているのが、働き方の多様化。その一つとして特に注目されているものに、“リモートワーク”がある。産業保健支援サービス「first call(※)」を提供する株式会社Mediplatでは、2019年6月に産業医500人を対象として『リモートワークに関するアンケート調査』を行っている。産業医の目から見るリモートワークのメリット・デメリットを紹介する。

first call 産業保健支援サービスとして、「オンライン医療相談」、「オンライン産業医」、「ストレスチェック」を提供し、2019年6月現在での導入企業は300社以上。

リモートワークとは、在籍している会社のオフィスに出勤せず、自宅やコワーキングスペース、カフェなど自由な場所で仕事をする働き方のことで、テレワークとも呼ばれる。近年は、インターネットの普及によってオフィス以外で仕事がしやすくなっていることもあり、働き方改革の一環としてリモートワークを導入する企業も徐々に増えてきている。
「通勤のストレスがなくなる」、「通勤時間を節約できる」、「出産や育児、介護と両立しやすい」といった実質的なメリットが注目されているが、メンタルヘルスの観点からもリモートワークにはメリットがある。産業医500人を対象に実施された調査では、「リモートワークを活用するメリットとデメリットは、産業医の視点でどちらが大きいと思いますか?」という質問に、12%が「メリットが大きい」、67%が「どちらかというとメリットが大きい」と回答している。
 
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では、メリット・デメリットの具体的な内容に迫ってみよう。リモートワークを活用するメリットとして、最も多い回答数を集めたのは「対人ストレスが軽減される(334件)」だった。対人ストレスが原因で心身に支障をきたす人や、離職まで追い込まれる人も珍しくないが、オフィスに出勤しないリモートワークなら、その原因を取り除くことができる。
 
7位の「休職者が復職しやすくなる(39件)」は、復職に向けた支援プログラムとしてリモートワークが活用できるという、産業医ならではの見解が含まれているようだ。また、メンタルの不調によって休職した場合、いきなりフルタイムでの復帰は負担が大きい。しかし、短時間勤務や短日勤務(週5日より少ない勤務日数)からスタートし、体調と相談しながら徐々に復帰できるようにサポートする企業も増えてきた。
2位の「自分のペースで仕事ができる(280件)」や、3位の「通勤ストレスが軽減される(229件)」と比べて、5位の「家庭・プライベートとの両立がしやすい(89件)」は、一般的にメリットとしてよく挙げられているわりに票が伸びていない印象だ。育児や介護などが多忙な人にとって、在宅勤務は両立の活路となるが、育児・介護をしながら同時に仕事をするのは想像以上に過酷である。表面的には両立できても、孤独な環境のなかで本人がオーバーワークにならないために、細心の注意が必要になるだろう。
 
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「リモートワークを活用するデメリットは?」という質問では、「コミュニケーションが不足する(235件)」、「人間関係が希薄化する(209件)」という、類似した内容の回答が1位と2位になった。補足コメントには、「顔を見ないと疑心暗鬼になる」、「実際に顔を合わすのとは大きく異なる」といった意見が寄せられており、多くの産業医が対面しないコミュニケーションの難しさを感じている。3位の「コミュニケーションエラーが起きやすい(153件)」は、その結果として生じるリスクであろう。
また、5位の「生活のリズムが崩れる(94件)」や7位「サボりやすくなる(75件)」など、自己管理面を不安視する回答も目立つ。「周囲からの目がないので、自分に甘えすぎてしまう傾向になる」、「無理をして過労にならないようフォローしていく必要がある」という、対極的なコメントも寄せられており、“やりすぎ”と“サボり”の両面に対して注意しなければならないようだ。
 
6位の「メンタルの不調に気づきにくい(81件)」は、ハッとさせられる意見である。メンタルの不調は、遅刻や休みが増える等、通常の勤務に支障が出て気づくことや、本人の表情や振る舞いを見て周囲が気づくケースも多いが、リモートワークではそういった“気づき”のきっかけが得られないことがある。
 
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リモートワークを導入することで、働き方の選択肢が増え、育児や介護問題等に直面している人も、仕事を続けやすくなる。また、職場の対人関係や長時間の通勤がつらい人にとっても、ストレスを軽減するための有効な手段の一つとなる。産業医からの回答では、主に「対人ストレスの軽減による、心身への負担が減る」という点に、リモートワークのメリットが見出されていた。
ただし、デメリットとして挙げられていた「コミュニケーション不足」や「人間関係の希薄化」は、対人関係を悪化させる要因にもなる。「対人ストレスの軽減」のためのリモートワークが「対人関係の悪化」をまねく危険性がある、ということだ。
また、「メンタルの不調に気づきにくい」という点も指摘されていた。考えられるデメリットへの対策としては、対面以外のコミュニケーションツールを充実させることや、連絡に関するルールを確立する必要も出てくるだろう。
 
一人で黙々と仕事をすることは、対人ストレスが減る一方で、外との繋がりが希薄になるがゆえに、不安が増大する人も少なくない。こうした不安を払拭するためには、積極的にネット会議(コミュニケーション機会)を取り入れる、社内SNSやチャットをリモートワーカーの生活リズム確立のサポートに利用するなどの方法が有効だと思われる。情報収集等も含めて、ネットを使ったつながりの拡大が、より良い形でのリモートワーク普及に役立っていくだろう。
 
 
作成/MANA-Biz編集部
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