リサーチ

2019.09.02

増加中の「介護離職」の実態とは?

「国や会社の各制度 」や「会社への相談」が介護と仕事を両立させる鍵

少子高齢化が進む現代では、介護と仕事の両立に悩む人が増加している。全国104箇所で介護資格学校「日本総合福祉アカデミー」の教室運営をする株式会社ガネットが、全国の40代以上の介護経験者男女457名を対象に行ったインターネット調査『介護離職に関する意識調査(2019年2月実施)』をもとに、介護離職の実態を紹介する。

内閣府の調査によると、介護や看護を理由とした離職・転職者は年間10万人を超えており、予備軍は100万人にものぼると推測されている。
日本総合福祉アカデミーが2019年2月に実施した『介護離職に関する意識調査(対象:全国の介護経験者男女457名)』によると、9.0%の人が「介護離職を経験した」と回答している。「介護離職を考えたことがある(19.7%)」、「介護離職を現在考えている(3.3%)」を含めると、実に3割を超える人たちが、現実的かつ身近な問題として介護離職に向き合っている。
 
4_res_093_01.jpg
退職という選択肢を検討あるいは実行する理由とは何なのか。介護離職を「考えたことがある(19.7%)」「現在考えている(3.3%)」「経験した(9.0%)」という人のうち、76%が「仕事と介護の両立が難しい」という実情を挙げている。また、次点の「自分の精神の健康状態が悪化した(30.8%)」にも注目したい。ここにも、仕事と介護の両立に悩み、その過酷さに疲弊する人々の実態が表れている。
 
4_res_093_02.jpg
介護離職を選択するまでには多くの葛藤があり、並大抵の覚悟では決断できないことが想像できる。しかし、介護離職を経験した人のうち66.7%が、「今まで積んできたキャリアがゼロになった」という理由から「後悔している」という結果が出ている。下表の「その他」の中には、「収入が無くなり生活が大変になった」等、金銭面に関する回答が多い。やむなく選んだ介護離職の後に、さらに負担が増えてしまっている実態が伺える。
 
4_res_093_03.jpg
「介護をすることになったとき、会社に相談しますか」という設問に対し、「相談した」との回答はわずか23.4%に留まった。仕事と介護の両立に悩み、リスクを抱えながら離職を選ぶような状況に追い込まれていながら、大半の人が会社に相談しなかったという悲しい結果だ。
「相談しなかった(76.6%)」の理由としては、「会社に相談しても頼りがいがない」「相談できる人がいない」等が挙げられている。一方で、相談した人(23.4%)からは、「今後、会社に迷惑がかかるかもしれないから」「勤務時間を調整したいから」等の声が集まった。
 
4_res_093_04.jpg
 
介護離職を「考えたことはない(68.1%)」と回答した人に、「仕事と介護を両立させるために心がけていること」を聞くと、「施設をうまく活用すること」「一人で抱え込まず誰かに相談すること」が上位にあがった。介護経験者たちは、実質的な負担を減らすことに加え、精神面でのケアも重要であることを実感しているようだ。
 
4_res_093_05.jpg
 
要介護者が大幅に増加する「大介護時代」の今、介護をサポートする制度も着々と整えられている。介護保険、介護休暇、介護休業、介護離職サポートサービスなどの制度はぜひ利用して、実質的な負担を少しでも減らしたい。
 
介護保険:介護必要時に所定の介護サービスが受けられる制度。費用は40歳以上の国民全員が納める保険料で賄われる。申請・認定を受けると、看護やリハビリなどのサービスを自己負担1~3割で受けることが可能。
介護休暇:要介護状態にある人の家族が、年5日(要介護者1人につき)、1日または半日の介護休暇を取得できる制度。たとえば、検査や手術の付き添い、遠方に住む家族へのお見舞い等の際に、有給休暇を使わずに休暇を取得できる。
介護休業:要介護対象家族1人につき3回まで、通算93日介護休業を取得することができる制度。2週間以上にわたって常時介護が必要な対象家族を介護するための休業。同一の事業主に1年以上雇用されている、取得から93日後~6ヶ月後の期間中に契約満了を迎えない等の取得条件がある。
介護離職サポートサービス:親を介護する必要に迫られた社員に対し、雇用主である企業が主体となり、専門家と契約を結ぶことで、介護に対する相談を個別にサポートするサービス。
 
時短勤務やフレックスなど会社の制度を利用しながら、仕事と介護の両立を実現するという方法もある。会社に相談しにくいと感じたときは、まず産業医や産業カウンセラーを通じて会社に伝達してもらうのも良いだろう。
 
会社側にとっても、介護離職によって人材を手放す損失は大きい。介護をする側の年代は管理職クラスである可能性が高く、優秀な人材を失えば、チーム力・求心力低下が危惧される。長引くほど仕事との両立が難しくなる、親が遠方にいる場合があるなど、介護にはシビアな側面が確かに多い。しかし、今後ますます労働力不足が顕著になる世の中において、介護は個人ではなく、会社、社会で考えていくべき課題である。
 
 
【出典】株式会社ガネット 日本福祉総合アカデミー調べ『介護離職に関する意識調査
 
 
作成/MANA-Biz編集部
PAGE TOP