組織の力

2019.08.29

明治安田ビルマネジメントが実現した全社レベルの業務標準化〈後編〉

実際に作業しながらファイリングのメリットを体感

全国のビル管理を手がける明治安田ビルマネジメント株式会社では、2018年の春以降、全国に9カ所あるセンターの業務標準化に取り組んでいる。中でも目に見える成果が得られたのがファイリングの標準化だ。後編では実際にファイリングの改善作業に取り組んだセンターの一例として中部センターにスポットを当て、センター長の白山忍氏、管理事務所長の加藤勇氏、事務担当でありファイリングクラークも務める堀志穂さんに、これまで抱えていた課題やファイリング改善時の苦労、現在の状況などをお聞きした。

非効率だとわかっていても
変えられなかったのがファイリング

「私自身、複数のセンターでの勤務経験があるのでわかるのですが、センターごとに書類の名称や保管方法がバラバラで、異動直後は書類を探すのにいつも苦労していました。もちろん中部センターに転勤してきたときも、慣れるまでにだいぶ時間がかかりましたね」
このように語る白山氏の声には実感がこもっている。
 
管理事務所長として日々多くの書類に目を通していた加藤氏は、センター内の誰よりも現行の業務状況に危機意識を感じていた。
「異動があると、そのたびに新しく入ってきた職員が前に勤務していたセンターの書類管理法を持ち込んでくる場合もあり、同じセンター内でもファイリングのやり方が異なるケースもみられました。現状のままでは非効率だとは思っていたのですが、つい日々の業務に追われて手をつけられないままでした」
 
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左から)加藤勇氏、白山忍氏、堀志穂さん

 
 
 

センター独自で業務標準化に取り組むも
維持が難しかった

中部センターでは数年前に一度、大規模な書類キャビネットの整理を行ったことがある。不要な書類を処分し、どの書類がどこにあるかわかるように、書類の名称を書いたシールをキャビネットに貼って「見える化」したのだ。その取り組みには堀さんも携わったという。
「しばらくは書類が整然と保たれていたのですが、きちんとルール化できていなかったこともあり、時間が経つと異動してきた職員によって新しいやり方が持ち込まれ、統一感がなくなってしまったんです。気になっていましたが、また整理するとなるとセンターのスタッフ全員で取り組むことになるので、なかなかアクションを起こせなくて……というのが正直なところでした」
 
 
 

業務効率化への期待と
実作業に対しての不安

2018年春、業務標準化の一環としてファイリング標準化のタスクフォースがスタート。本社の意向を知って、白山氏の心には期待と不安が同時に押し寄せたという。
「現場で日々の業務を行っている私たち自身も、いつかはファイリングのやり方を統一することが必要だと感じていました。ただ、日常の業務に比べて優先度が低いため、どうしても後回しになってしまっていたので、今回の統一化は意義のあることだと思いました。ただし、改善作業は2019年の1月から3月ということで年度末の忙しさが予想されたので、不安も大きかったですね」
 
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改善作業に取りかかるにあたり、全国のセンター間での知識の共通化をはかるとともに、具体的な手順を伝えるため、12月には本社でドキュメント管理基準統一の説明会が行われた。中部センターの代表として参加した加藤氏は、3か月でファイリングのやり方を一気に変えると聞いて、真っ先に頭をよぎったのは「これは大変だな」という負担感だった。
「手間がかかるのは確かですからね。ただ同時に、作業が終わったらストレスはなくなりそうだな、という明るい展望もありました。今までは、ファイリングに関してはっきりしたルールがなかったので、なんとなくモヤモヤしたまま業務を進めることもありました。しかし、今回統一されたルールは実に明確で、書類管理が楽になるだろうと感じました」
 

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本社メンバーの本気度にふれて
センター内の空気が変わった

中部センターのメンバーたちも、初めは新しいファイリングのルールに戸惑いをみせた。今まで多くのメンバーが行っていたやり方とはかなり差があったからだ。それでも、1月に本社のタスクフォースメンバーが中部センターを訪れ、改善作業の手順を一つひとつ指導しながら一緒に作業してくれたことで、センターの雰囲気は明らかに変わっていった。
 
改善作業の現場に立ち合った白山氏も、現場の変化を実感した一人だった。
「綴じてある書類をばらして分類し直し、ファイリングし直すのは大変な作業です。もしやり方を指示されるだけだったら、センターの中には『現場の苦労も知らないで』と言い出す者もいたかもしれません。ですが、本社からわざわざ出向いて一緒に手を動かしてくれたこと、また社長自らも他のセンターでファイリング作業されたと聞き、自分たちもやらなくては、という空気が生まれたのです」(白山氏)
 
 
 

作業を進める中で
新しいファイリング法のメリットを実感

中部センターでは3月末までに、ファイリングの改善作業を進めていった。白山氏は、「期限が決まっているからというのもありますが、センターのメンバーはみな、本当によく頑張ってくれました」と振り返る。
「時間がかかる作業なので、集中する日や時間を決めて、できるだけメンバー全員で行いました。参加できないメンバーには退社前に1時間ぐらいずつ取り組んでもらうなど、人任せにせず、自分にできるやり方をみつけて作業してもらいました。力を合わせて取り組んでいるうちに、センター内で結束力が高まった気がします」(白山氏)
 
また、作業の効果を目に見える形で実感できたのも印象的だったという。
「特に驚いたのは、廃棄書類が予想外に多かったことです。仕分けによって、ロッカー3つ分の書類をまるまる廃棄できました。長年気になっていたことが解消されて、気持ち的にもスッキリしましたね」(白山氏)
 
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廃棄される書類(年3回の一斉廃棄に向け分別された廃棄書類)

 
事務担当の堀さんは、「全センター統一のファイリング用品を使うようになって、業務効率がアップした」という。
「これまでは書類に穴を空けて綴じ込み式のファイルに保管していたのですが、この方法だと穴を空けて綴じるのが面倒なので、ある程度たまってからやろう、となりがちでした。しかし新しい方式では、穴を空けずに紙のファイルに挟みこむだけなので、資料の出し入れが簡単です。毎日いろいろな点検書類が発生する中で、一連の流れがスムーズにできると業務の効率化につながります。また捨てるときも、保存期間が過ぎたらフォルダごと捨てればいいだけなので簡単です。手順がシンプルだと、気持ちよく仕事を進められて、日々のストレスがぐっと減りました」
 
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ファイリングクラークを中心に
現場から本社に課題を提案していきたい

こうして中部センターのファイリング標準化はひと通り完了した。しかし、整備された状態を維持していくための取り組みを行っていくことも欠かせない。中部センターでは、月1回の整理や年3回の廃棄といった活動に全員で取り組むことで、書類をためない体制を保っていくという。
 
またファイリングクラークとなった堀さんは、「現場だからこそわかる課題を本社に提供し、全センターレベルの改善に活かしていきたい」と意欲を見せる。
「例えば、ファイルをどのようにロッカーやキャビネットに保存するかなど、統一見解が必要な要件はまだまだあります。現場の声を届けていくことで、全センターの業務品質を高めることに貢献したいと願っています」
 
ファイリング改善の一つひとつの取り組みは決して難しいものではない。ただし現状や問題を調査し、適切なファイリングルールを策定して実行するのは、それほど簡単ではなく、だからこそ、課題を感じていても着手できていない企業も多いだろう。今回の全センターのファイリング標準化成功の一端には、プロのファイリングコンサルタントの存在も大きい。本社スタッフとして今回のファイリングシステム導入のリーダー務めた増田氏も「現状を知れば知るほど、問題の大きさと難しさを感じ、社内のメンバーだけでは厳しいと感じ、ファイリングコンサルをコクヨに依頼しました」とふりかえる。
 
もし、課題があるのに解決のための一歩がなかなか踏み出せていないのなら、プロの手を借りる、というのも一つの選択肢だろう。
また、ファイリング改善のような地道な取り組みも、全社レベルで実施することによってめざましい効率アップにつながることもある。「ムダが多い」となんとなく感じていることを見つめ直してみれば、業務品質改善の大きなヒントが見つかるはずだ。
 
  • 改善前の収納庫
  • 改善後の収納庫
 
 

明治安田ビルマネジメント株式会社

1963年設立。経営理念として「安全・安心・快適なオフィス環境を、いつまでも」を掲げ、明治安田生命保険相互会社の所有するビルの工事管理や設備管理、オーナーに代わってリーシング(空室対応)やテナント対応などのプロパティマネジメント(不動産所有者に代わり不動産収益性を最大化し価値を向上させるマネジメント)を担う。顧客のニーズにきめ細かく対応し、企業ビジョンである「オーナーならびにテナントから、常に信頼され選ばれるプロパティマネジメント会社」をめざす

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ
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