リサーチ

2019.08.02

働き方改革の実態調査-取り組んでいる中小企業はわずか3割!?

人材不足や、「休みづらい」「帰りづらい」心理が働き方改革推進の障壁に

良好なワークライフバランスの実現を目指して、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」。しかし、その具体的な取り組みに関しては、各企業に委ねられている状況だ。
その実態を調査すべく、株式会社あしたのチームが中小企業(従業員5人以上300人未満)の経営者300人を対象として、『働き方改革の取り組み実態』に関するインターネット調査を行った。

「あなたの会社では、現在働き方改革に取り組んでいますか」という問いに対して、「取り組んでいる」という回答は、都市部で30.0%、地方で33.3%という数値になっている。施行前から準備を進めている企業は少ない印象だが、「取り組んでいないが、今後行うことを検討している」という回答は、都市部で46.0%、地方で43.3%と、いずれも最も高い割合を示した。また、取り組みの実態や意識に地域差は見られない結果となっている。
 
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「働き方改革に取り組めない理由」についての設問では、都市部・地方の総合値で「人材不足」が最上位となった。「働き方改革が施行されても業務の量は変わらないが、人を増やすのも難しい」というのが実態で、その傾向が如実に表れているのは地方である。若者が都市部に流出していく中で、地方の中小企業では「人材不足」は深刻な問題になっていることが伺える。都市部の企業では最上位となった「売上・利益縮小への不安」には、地域差は見られない。
 
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働き方改革に取り組んでいる人を対象に聞いた具体的な内容には、「残業時間の削減」、「休暇取得の促進」、「労働時間の短縮」など、労働時間や休暇に関する項目が上位に挙がった。理想的なワークライフバランスを実現するためには、心身の健康を保つことが重要であるという意識が表れた結果だ。地方で高い数値を示した「働く環境・場所の改善、多様化」という項目も興味深い。「女性・若者や高齢者の就業促進」も地方の方が高い数値であったこともあり、人材確保という観点からの意識が高いことがわかる。
 
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「残業時間を減らしたい」、「休暇を取りたい」というのは、仕事とプライベートを両立して充実した日々を送りたいと考えるビジネスパーソンが共通して抱いている願望だ。しかし、働き方改革施行後も業務量は変わらないため、人材不足に悩む企業においては、早急な実現は難しいのが実情であろう。
 
そのなかで、企業側が実行できる改革案の一つとして、「有給休暇の取得義務化」が施行された。2019年4月から、労働基準法が一部改訂され、規模を問わず全ての会社に対して、年10日以上の年次有給休暇が付与される労 働者(管理監督者を含む)にに時季を指定めて年5日の有給休暇を取得させることが義務づけられた。
「有給休暇を取りたいけど取れない」という心境を訴えてきたビジネスパーソンは多い。業務上の準備を万全に整えていても、上司や同僚が休みを取らずに勤務していれば、休暇申請は出しづらいものだ。休暇取得の妨げとなる要因は、意識の問題も意外と大きい。
 
有給休暇取得を義務化することで、「正当な理由を示さなければならない」といった心理的障壁はある程度解消するが、従来の意識から脱却して積極的に休暇を取ることを良しとする、企業全体の意識改革も必要となる。また、人材不足が深刻な現状においては、各々が休暇を取得しながらも業務を円滑に進めるための工夫や、生産性の向上も課題となってくるだろう。そのうえで、必要不可欠ではない残業の削減も並行すれば、自ずと働き方改革は実現されていくのではないだろうか。
 
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部