リサーチ

2019.07.24

若手社員のやる気を引き出す言葉とは

今日からできるモチベーションマネジメント

仕事の生産性を時間単位に処理する仕事量として定義した場合、生産性を高めるには、より集中して仕事に取り組むことが求められる。そのために欠かせないのはモチベーション(動機づけ)だ。
新入社員は、新しい環境で新たに社会人生活を始めるという希望を持って入社してくるため、「やってやるぞ!」というモチベーションも高い傾向にあるはずだ。
しかし、わからないことや失敗などを経験して壁にぶち当たり、だんだんモチベーションが下がっていき、退職を視野に入れるようになる……ということは、企業側も望んでいないだろう。
若手社員がモチベーションを維持したまま組織の中で成長し、結果を残していくために、会社や上司は何ができるだろうか。

厚生労働省によると、入社して3年以内の離職率は大卒で約3割にも及んでいる。せっかく入社してくれた優秀な社員がモチベーションの低下が理由で退職に至らないためにも、個人のやる気にゆだねるだけではなく、企業としてモチベーションをマネジメントしていくことが欠かせない。
では、新入社員の仕事に対する思いや周囲のサポート状況はどうなのか。
社会人1 ・2 年目の社員の声に耳を傾けることで、若手社員のリアルな仕事観やモチベーションの変化が見えてくるのではないかと考え、ソニー生命保険株式会社による「社会人1年目と2 年目の意識調査(2019年)」に着眼した。
調査によると「社会人1年目の生活と入社前にイメージしていた生活とのギャップで驚いたこと」では、「忙しい(仕事量が多い)」「覚えることが多い(業務範囲が広い)」「責任を担う」など業務負担に対する回答が多く挙がっていた。
 
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社会人1・2年目であることを考えれば、業務に対してまだ十分にスキルが身についていない状況が考えられる。とはいえ、会社側は当然「業務を通じてスキルアップをして欲しい」と考えているだろう。つまり業務負担の重さは、裏を返せば会社からの期待値の高さを表しているのだ。
しかし、それが「業務の負担が重い、仕事がうまくいかない」と捉えられ、ギャップを感じて落ち込んでしまい、モチベーションの低下につながってしまうのは非常にもったいない。「負担」を「期待」と受け取ってもらえるようにするには、どのような接し方が望まれるだろうか。
 
そこで、「仕事で落ち込んでいるときに、先輩社員に言われたら、やる気に火がつくセリフ」の質問にフォーカスしてみると「君がいて助かった、ありがとう」「本当によく頑張った」など自分の働きぶりを認めてもらうことで、「モチベーションがあがる」ということがわかった。特に女性は承認につながる声掛けや「一緒に乗り越えよう」など寄り添ってもらう言葉をかけられるとやる気が高まる傾向にあるようだ。
 
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逆にやる気を奪われてしまう言葉としては、「この仕事向いてないんじゃない?」「やる気ある?」「ゆとり世代だなぁ」といった否定の声掛けだ。やる気や自身の適性を認めてもらえないセリフについては、モチベーションが大きく低下する。
「男だから/女だからしょうがないよね」の言葉は特に女性が嫌悪している傾向にあるうえ、ジェンダーハラスメントだと受け取られてしまいかねない禁止ワードでもある。
 
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冒頭で示したように、新人の多くが仕事の内容や量が負担だとして辞めたいと思ってしまっている点は大きな問題である。業務の負担が過多だというのは、どこかで「一生懸命やっているのに報われない気がする」と思っている心理も読み取れる。
 
その報われない気持ちに対してアプローチするためには、「仕事で落ち込んでいるときに、先輩社員に言われたら、やる気に火がつくセリフ」で上げられている言葉が参考になるだろう。ここにあるのはどれもポジティブな言葉ばかりであり、かつ、ふとした気遣いから生まれた言葉だ。
 
キャリアを積んだ社員からすると、若手社員に早く仕事を覚えてほしい気持ちも先走ってダメ出しが多くなってしまいがちだ。しかし、ダメ出しよりも「ちゃんと仕事ぶりを見ているよ」ということを伝えるため、ポジティブな言葉に置き換えて言語化することが、若手社員のモチベーションを高める効果的なマネジメントの一つであることは確かなようだ。
 
人材不足が深刻化する中、新入社員に長く元気に働いてもらうために、上司や先輩としてすぐにでも実践できるのが、ポジティブな声掛けによるモチベーションマネジメントであることを認識し、取り組んでみるのもいいかもしれない。
 
 
【出典】平成29年 厚生労働省発行「新規学卒者の離職状況」、ソニー生命「社会人1年目と2年目の意識調査 2019
 
作成/MANA-Biz編集部