リサーチ

2019.06.19

住みよいけれど働くには...?外国人留学生のホンネ

外国人材活躍のヒントは中小企業の取り組みにあり!

経済産業省の調査により、外国人留学生の日本における就職率は低く、年間約1万人の留学生が流出しているということがわかった。住みよい国として魅力は感じているにもかかわらず、日本で働くことに否定的な見方が多いようだ。外国人留学生から日本企業の何が問題視されているのか。また、企業側ではどのような取り組みがなされているのかを考察する。

日本に来た外国人留学生の日本国内での就職率は3割未満。そもそも彼らの就職意欲も、大学(学部)、修士課程、博士課程と、教育が高度化するほどに低くなっている。これらの結果から、日本が高度外国人材の獲得に苦戦している様子が見てとれる。
 
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また、日本に住むことについては8割を超える留学生・元留学生が魅力的だと答えているのに対し、日本で働くことには約半数が否定的な見方を示している。この結果からも明らかに日本の労働環境への不満があることが示唆されるのではないだろうか。
 
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外国人材へのアンケートから浮かび上がった企業側の課題は以下の通り。上位に挙がっている項目を見ると、「キャリアパス」「昇格・昇給」「幹部登用」などのキーワードが目立ち、仕事に対する具体的な評価を重視していることがわかる。「昇格・昇給」については期間の短縮を求めているのが特徴的だ。これは長期雇用や年功賃金が当たり前の日本企業に対する苛立ちとも受け取れる。
大企業と中小企業で大きな差があったのが「キャリアパスの明示」。大きな組織の中に個人が埋没しがちだからこそ、大企業にはキャリアパスの明示が強く求められているのかもしれない。逆に「長時間労働の改善」は中小企業の課題のようだ。組織立てて働き方改革に取り組める大企業に比べ、環境整備の面では遅れをとっているのかもしれない。
 
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本調査の企業へのヒアリングから、こうした課題に受け入れ企業側で有効な対策が取られていることが見えてきた。特に注目すべきは中小企業の施策。「管理職への昇格は立候補制」、「好業績を上げた社員には高い処遇で応え、スター社員を育成しロールモデルに」「各国の旧正月や国慶節などに合わせた長期休暇の取得を認める」などユニークな制度が目立つ。経営者の理念が現場に伝わりやすく、外国人材の個別事情に配慮した柔軟な対応ができることが功を奏しているようだ。
 
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今回は外国人材の仕事に対するモチベーションに注目し、労働環境についての調査結果を紹介したが、外国人材が日本での就労に足踏みする要因は入国管理制度をはじめ、子どもの教育や医療などの生活環境と多岐にわたる。解決すべき課題が多い中でも日本企業が就職先として選ばれるために何ができるのか、当たり前と思っていた制度や慣習を改めて見直してみる時期が来ているのかもしれない。
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部