組織の力

2019.02.25

ヤッホーブルーイング流の「フラット」なチームビルディングとは?〈後編〉

一人ひとりが行動指針を自ら考えながら実践

クラフトビールの製造・販売を手がけ、『よなよなエール』をはじめとするエールタイプのビールでファンを増やしつつある株式会社ヤッホーブルーイング。同社では、『ガッホー文化』(「頑張れヤッホー」に由来するネーミング)を行動指針として掲げ、社員に限らずすべての社員がこの指針を常に意識しながら働いている。代表取締役社長井手直行氏は、「一人ひとりが本当の意味で経営理念に基づいて仕事ができるようになってきたのは、文化の共有・浸透に取り組み続けてきた成果だと思います」と語る。同社の社員が『ガッホー文化』をどのようにとらえ、具体的な行動に落とし込んでいるのかを井手氏にお聞きした。

部門縦断で協働・支援型の組織体制によって
仕事の質をスピーディーに高める

同社で掲げる『ガッホー文化』の具体的な項目は、「フラット」「究極の顧客志向」「自ら考えて行動する」「仕事を楽しむ」「切磋琢磨する」「知的な変わり者」の6つである。なかでも特に井手氏の口に多く上るのは「フラット」というフレーズだ。
 
「フラットとは、社長でも先輩でも他部門のメンバーでも関係なく、縦横無尽にコミュニケーションをとれる関係性のことを意味します。フラットな環境の中で意見を自由に言い合えれば、日々の仕事から大掛かりなプロジェクトの企画まで、どんな内容でもたくさんの知恵によってブラッシュアップしていくことが可能になります。このような協働・支援型の体制の中では、イノベーションをスピーディーに実現していけるのではないでしょうか」
 
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クラウドを活用し、
チームを超えたサポートが当たり前に

「フラット」の一例として挙げられるのが、ITを駆使したコミュニケーションだ。例えば、あるユニット(部署)が会議の議事録をクラウド上にアップすると、内容に関心を持ったほかのユニットのメンバーから次々と共感する意見や補足情報などのコメントが入る。
また、繁忙期を迎えた部門がクラウドでヘルプを発信すると、「週末の出荷手伝います!」などと応援を申し出るコメントが他部署のメンバーから寄せられる。ちなみに他部署の手伝いをするかどうかは一人ひとりの自由裁量で決められるので、自分の仕事や周りの状況を見ながら、柔軟に自律的な働き方ができる。
 
「クラウドにアップされた情報を見るかどうかは一人ひとりに任せていますが、どのメンバーも互いの仕事に関心を持っているので、クラウドを通じたコミュニケーションは非常に活発です。議事録に書き込まれたコメントを参考に、内容を改良していくケースも多数みられます」
 
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フラットな組織を体現する
ユニットディレクター立候補制度

同社の社員は社長・ユニットディレクター・プレイヤーという3つの階層しかなく、部長職にあたるユニットディレクターは立候補によって決定する。新卒1年目以外の正社員なら、誰でも立候補は可能だ。候補者は、自分が担当したいユニットが抱える課題と解決策をプレゼンし、今後のビジョンを示し、パートタイマーやアルバイトスタッフも含めた全メンバーが、候補者のプレゼンテーションを評価し、その評価を参考に井手氏が決定する。
 
「ディレクターを最終決定するのは社長である私ですが、メンバーが選んだ候補者と私が推したいと思った人はほぼ100%一致しています。『自分たちで選んだ』という納得感があるため、ユニットのメンバーは一生懸命ディレクターを支えようとします。また、プレゼンテーションによって結果が決まる公正な制度なので、リーダー交代による当事者間でのわだかまりは生じにくく、よい形での切磋琢磨になっていると感じます」
 
 
 

一人ひとりの「自ら考えて行動する」力を
結集した「よなよなエールの超宴」

ファンのための感謝イベントとして同社では毎年、「よなよなエールの超宴」というイベントを開催している。2018年10月には東京・お台場の屋外会場に5000人が集い、ビールのテイスティングなどを楽しんだ。このイベントは、企画立案から当日の運営まで、すべて同社の社員たちで執り行っている。コアメンバーは5人と少人数だが、ITを通じて全社で情報共有を行いながらアイデアを練り上げ、当日のメンバーを募っていく。18年には軽井沢から約100人のメンバーが駆けつけ、見事な協力体制でイベントを成功に導いた。
 
「イベントは突発的なできごとの連続ですが、一人ひとりが自ら考えて行動する習慣を身につけ、普段からチームとして仕事をしているので、どんなトラブルに対しても、メンバー全員が柔軟に対応してくれます。会場でお客さまが貴重品を落としたときも、メンバー同士が即座に連携をとって探したので、数分後には見つかりました」
 
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株式会社ヤッホーブルーイング

長野県・軽井沢で1996年に設立され、97年にビール製造を開始。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、日本ビール市場にバラエティを提供し新たなビール文化創出を目指す。『よなよなエール』や『水曜日のネコ』などのクラフトビールがビールファンの間で人気に。Great Place to Work® Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキングにおいて、2017年から従業員100~999人の部門で3年連続ランクインを果たす。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ
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