組織の力

2019.02.20

ヤッホーブルーイング流の「フラット」なチームビルディングとは?〈前編〉

経営理念の浸透のカギはコミュニケーションの仕組み化

株式会社ヤッホーブルーイングは、全国で400社近くあるクラフトビールメーカーの中でトップシェアを誇る注目企業であり、人気製品である『よなよなエール』には根強いファンが多い。また、Great Place to Work® Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキングにおいてベストカンパニーに3年連続で選出されるなど、働き方や組織体制においても支持を集めている。代表取締役社長井手直行氏は、「強いチームづくりに向けて社員間のコミュニケーションを仕組み化し、さまざまな場面で経営理念の浸透をはかっています」と話す。同社が実践するチームビルディングと経営理念浸透の取り組みについてお聞きした。

業績が回復したにも関わらず
「全社一丸」とは言えなかった

株式会社ヤッホーブルーイングの設立は、1996年。94年に規制緩和が実施され、小規模の会社でもビール醸造免許が取得できるようになってから間もなくだ。創業者である星野リゾート代表の星野佳路氏は、「アメリカで飲まれているようなクラフトビールを日本でもつくりたい。日本のビール文化を豊かなものにしたい」との思いから同社をつくり、97年からビール製造を始めた。
 
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規制緩和によって全国に多数の小規模ビールメーカーが設立され、地ビールブームが起こる。ヤッホーブルーイングもブームの影響を受け2000年頃まで急成長を遂げた。その後、地ビールブームの終焉と共に売上げが落ち込み、8年連続の赤字決算が続き経営の危機に直面したが、インターネット通販によってV字回復を実現する。井手氏が代表取締役社長に就任したのは、それより少し後の2008年だった。
 
「売上げが伸び始めていたものの、業績低迷期に多くのメンバーが去っていったこともあり、社内の雰囲気がよかったとはいえません。一人ひとりのモチベーションが高いとはいえず、『売り上げが上がるのはいいけれど忙しすぎるのは困る』という雰囲気さえ感じました。業績が伸びてきたといっても、全社が一丸となっていない今の状態では成長し続けることはできない、と歯がゆさを感じました」
 
 
 

チームビルディング研修が
3年目から業績に結びついた

全社で同じ目標を持ち、一致団結して成果を出す組織をつくりたい。そのために井手氏は、ネット通販のパートナー企業でもあった楽天が主催する楽天大学のチームビルディングプログラムを受講し、3か月間(全5回)にわたってチームビルディングを学ぶ。
 
「全国から集まった仲間と一緒に共同作業に取り組む中で、『チームが団結すればどんなに困難な課題もなんとかクリアできるものなんだ』と感動しました」
 
自分が味わった達成感を社員にも体感してもらいたい。その体験こそチームづくりに必要だと考えた井手氏は、楽天大学で学んだものと同じプログラムを、自社でも自由参加の形で実施した。第1回目の参加者は7人。当時は全社員数が20名だったので、講師役の井手氏を含めると8人が業務時間中に研修に参加したわけだ。残りのメンバーは、「仕事が滞って困る」と怒りを露わにした。しかし井手氏は、「申し訳ない」と謝罪しながら翌年も同じ研修を続けた。
 
「研修を譲らなかったのは、会社が生き残れるかどうかのカギはチームづくりにあると確信を持っていたからです。賛同してくれないメンバーには参加を無理強いしなかったものの、『お客さまにもっと喜んでいただくには、全社が一丸になって頑張っていく必要がある。会社が成長していくために、スタッフももっと増やさなければならない。そのためにチームビルディング研修が不可欠なんだと理解してほしい』と一生懸命説明しました」
 
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井手氏の熱意が形になりだしたのは、社内に研修卒業生が増えてきた研修実施3年目から。それぞれのメンバーが自分の持ち場で強いチームをつくって成果を発揮するようになってきたのだ。例えば研修参加前はネガティブな発言が多かったというあるメンバーは、研修を通じて「結果を信じて力を合わせれば思った以上のことができる」と実感したのをきっかけに、率先して社内プロジェクトを動かすようになった。その頃から売り上げの伸び方も著しくなり、チームビルディング研修を肯定する雰囲気が社内に生まれた。
 
「チームで成果を出せるようになったメンバーは確信を持って行動できるようになり、それがまた成果につながる。このサイクルが業績に反映されたのではないでしょうか」
 
 
 

ミッション実現に向けて
行動指針を明確化し社内で共有

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では、同社はどのような目標に向けて強い組織をつくろうとしているのか。それは、「ビールに味を!人生に幸せを!」という同社のミッションを実現することだという。井手氏は、「日本ではあまり普及していなかったエールタイプのクラフトビールを消費者に届け、新たなビール文化を創出したい」と語る。
 
ミッション実現のために同社では、より具体的な将来像(ビジョン)として「クラフトビールの革命的リーダー」を掲げ、ミッションビジョンを達成するための「価値観」、ヤッホーらしさを表す「ヤッホーバリュー」、目に見えない当たり前の文化「ガッホー文化」を定め、それらを総合したものを経営理念としている。またそれらは機会あるごとに全社で共有されている。中でも、「ガッホー文化」(「頑張れヤッホー」を縮めたネーミング)は社員の行動指針を示し、全社員が常に意識して仕事の中に落とし込んでいる。
 
「この行動指針は、親会社である星野リゾートで共有されている指針に基づいています。私が社長に就任するにあたり、企業文化を明確にするために、行動指針として打ち出すことにしました。ただ、個性を思いっきり出しながら働くことを奨励したくて、『知的な変わり者』という項目を新たにプラスしました」
 
 

株式会社ヤッホーブルーイング

長野県・軽井沢で1996年に設立され、97年にビール製造を開始。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、日本ビール市場にバラエティを提供し新たなビール文化創出を目指す。『よなよなエール』や『水曜日のネコ』などのクラフトビールがビールファンの間で人気に。Great Place to Work® Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキングにおいて、2017年から従業員100~999人の部門で3年連続ランクインを果たす。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ
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