組織の力

2018.09.10

健康経営を支える「ワーク・フード・バランス」〈後編〉

1食に「3色・3タイプの栄養素」を揃える

全国の企業に向けて健康に配慮したお総菜の提供サービスを行う株式会社おかんでは、導入企業に向けて食生活に関する研修も行っている。今回は同社で管理栄養士の資格も持つ大浦梢さんに、「ビジネスパーソンが押さえておきたい食生活の知識」として研修で伝えている内容のエッセンスをお教えいただいた。仕事で最大限のパフォーマンスが発揮できるよう、適切な食事の内容やタイミングを押さえよう。

昼食後の眠気をシャットアウトするために
腹八分目でよく噛んで食べる

昼食に関するビジネスパーソンの悩みとして多いのが、食後の眠気だ。大浦さんはこの悩みに関して、「食べる量を腹八分目にとどめることである程度は回避できます」と話す。

「たくさん食べると、消化・吸収のため胃腸に血液がいき、逆に脳の血流量が下がります。眠気が起きるのはそのせいです。眠気を誘わないためには、満腹にならない程度で食べるのを止める方がよいでしょう。また、胃腸の負担を減らすためには、よく噛んで食べることも大切です」

眠気をうまく抑えることができれば、午後の仕事においてもミスが少なく、生産性を下げずに乗り切ることができそうだ。



夕食が遅くなるときは煎餅などで小腹を満たし
帰宅してから不足の栄養を補う

近年は残業時間の規制が厳しくなってはいるが、それでも夕方以降まで仕事をしなければならない人も多い。そこで気になるのが空腹対策や夕食のタイミングだ。夕食をとる時間になっても仕事が終わらないとき、スナックなどで小腹を満たす人は少なくない。大浦さんは間食について、「身体と脳を動かし続けるためにはエネルギーが必要なので、ある程度はお菓子などで補給してもいいでしょう」と語る。

「ただし、お菓子には炭水化物と油脂以外の栄養があまり含まれていないので、野菜や主菜を帰宅してから補給した方がよいでしょう。私は個人的には、間食アイテムとして油で揚げていないタイプのお煎餅をよくつまんでいます。米をつぶしてつくられているので消化がよく、体内でエネルギーに変わりやすいのでおすすめです」

夜遅くに夕食をとるときの注意点は、消化のよいものを選んで、就寝の2時間前までに食べ終わることだという。「消化のよい」には、「柔らかいもの」「油が少ないもの」という二つの要素があるそうだ。

「例えば玄米は栄養豊富なので、昼食としてはお勧めですが、胃腸に負担をかけるため夜は白米の方がベターです。また主菜に関しては、ステーキよりひき肉料理や魚のお総菜を選ぶとよいでしょう。寝ている間は起きて活動しているときほど消化・吸収が進まないので、使われない栄養が脂肪として身体にたまりやすくなります」


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では、就寝2時間前までに食事ができない場合はどうすればよいのだろうか。特に女性は、ダイエットを期待して食べずに寝ることも多いが、実は逆効果だという。

「空腹のまま寝ると、体内のたんぱく質が分解され、エネルギーとして使われることになります。すると結果的に筋肉が落ち、体脂肪率が上がってしまうのです。ですから遅い時間に食べなければならないなら、消化によい雑炊などを少し食べてから休むとよいでしょう」

食に関して個人も企業も知識を持ち、「ワーク・フード・バランス」を生活シーンに取り入れていくことで、ビジネスパーソン個人の健康意識や満足度が高まる可能性は高い。一人ひとりがより生き生きと働くようになれば、企業の生産性向上も十分に見込めるだろう。

株式会社おかん

2012年に株式会社CHISANとして創業し、個人向け総菜定期仕送りサービス「おかん」 を開始する。2014年に株式会社おかんに社名変更し、法人向けぷち社食サービス「オフィスおかん」を開始する。2016年に一般社団法人ワーク・フード・バランス協会を設立し、ワークプレイスにおける食環境の向上に向けた活動も行っている。

文/横堀夏代 撮影/荒川潤