チェックワード

2017.11.10

「負けずとも劣らない」は励ましワードにはならない

本日のチェックワード 50「負けずとも劣らない」

「コンペには負けたけど、負けずとも劣らない内容だったと思うよ」

 コンペで競合チームに敗れたとき、同僚から上記のような言葉をかけられたら、あなたは慰められますか?
 実はこの言葉は、互角であることを表す「負けず劣らず」という慣用句と、「勝るとも劣らない」(秀でていることはあっても劣っていることはない、互角以上である)を混同したものです。「とも」という接続助詞は「たとえ○○でも」という逆接の仮定条件を表すため、「負けずとも劣らない」という使い方をすると、「負けていることはあっても劣っていない」となり、意味不明の表現になってしまうのです。何気なく使っていた人は、今後は注意した方がよさそうです。

この使い方ならOK

・A案とB案、どちらも負けず劣らず魅力的ですね。
・うちの課には、昨年と比べて勝るとも劣らない優秀な新人が入ってきたよ。

監修/篠崎 晃一(Shinozaki Koichi)

東京女子大学教授。専門は方言学、社会言語学。『例解新国語辞典』(三省堂)編修代表や、テレビ番組「ワーズハウスへようこそ」(日本テレビ系)の監修など幅広い分野で活躍。『えっ?これっておかしいの!? マンガで気づく間違った日本語』(主婦の友社)など、日本語の誤用に関する著書も多い。