リサーチ

2017.08.04

日本企業では有給休暇を消化できない?

世界一「休みはいらない」日本のビジネスパーソン

有給休暇は労働者にとって当たり前の権利である。しかし、現実には1年間に付与する日数を完全に消化できている人は少ない。どうやらその背景には日本人ならではの気質も関係しているようだ。海外のデータとも比較しながら、有給利用の実態を見てみよう。

厚生労働省が平成28年に発表した「就労条件総合調査」によると、平成27年の1年間に、企業が付与した年次有給休暇の平均は18.1日で、実際に取得したのは平均8.8日だった。週休2日の企業のおよそ1か月分の労働日数に相当する有給を与えられていても、半分も使えていない状況ということになる。
 
ちなみに業種別で見てみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」(71.3%)や「複合サービス事業」(63.7%)といった公共性の強いものや、「情報通信業」(55.5%)は、取得率が高かった。一方、「宿泊業、飲食サービス業」(32.6%)「生活関連サービス業、娯楽業」(39.4%)では取得率が低く、どれも規定日数の4割以下という結果になっている。
 
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いずれにせよ、与えられた有給休暇を使いこなせていないようだが、海外ではどうなのだろうか?
 
総合旅行サイト・エクスペディアの日本語サイト、エクスペディア・ジャパンで実施した、有給休暇の国際比較調査によると、日本の有給消化率は最下位という結果が出た。消化率7割、8割という国が多く、100%という国ですら何ヵ国もある中で、日本は圧倒的に少ない割合だ。
 
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ところが、現状で「休みが不足していると感じる人」の割合を比べたところ、日本が最下位という結果になった。有給の消化率が低いにもかかわらず、7割弱の労働者は「休みが足りている」と考えているようだ。
 
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これには、マーサーが2014年に発表した「年間祝祭日数世界ランキング」で示すように、日本の祝日が世界最多レベルの日数ということも関係しているのかもしれない。しかし、有給消化が格段に少ないため、トータルで見るとやはり日本人が取得する休日は、世界と比べても少なくなる。
 
 
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注記:本データは2013年上半期(1~6月)に各地域のマーサーコンサルタントにより集計された。データには注記が無い限り祝祭日に土日は含まれない。祝祭日の定義については、各国の慣習により違う場合がある。

 
また、「休暇中でも一日中仕事のメールを見るか」との問いには、2割以上が「はい」と答えており、これは韓国の23%に次いで2位となっている。有給休暇のような自分だけが休んでいる場合は、会社ではいつもどおり業務が動いているため、仕事のことを気にする人が多いようだ。
 
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これらの結果から考えてみると、まずは最小限の人数で仕事を回すことが常体化し、「慢性的な人手不足」や「1人が抱える業務量が多い」といったキャパシティの問題が蔓延していることが、日本の有給消化の低さの背景としてあるだろう。特に、消費者に身近なサービス業などではなおさらだ。しかし、同時に「そこまで休まなくても気にしない」「休暇中ですら仕事のことが頭から離れない」という、日本人が持つ勤勉さも背景として考えられる。労働者自体が休養を取ろうとしていないのだ。
 
内閣府でもワークライフバランスを推進するなど、仕事と生活とのバランスの見直しが求められている中、休養は体も精神も健康を保ち、仕事をし続ける上で大切な要素だ。そのためにはまず、労働者自身が本当の意味での休養を取るよう、意識を変えていくことが必要だ。勤務時間外のメールチェックの禁止を制度化したフランスのようにはまだいかないが、日本でも、企業で「休みベタ」な人たちが、有給が使いやすくなるような職場の体質や雰囲気づくり、制度改革などをして、休養をサポートできる環境を整えていかなければならないだろう。
 
 
(出典)「平成28年就労条件総合調査(労働時間制度)」(厚生労働省)、「世界28ヶ国 有給休暇・国際比較調査2016」(エクスペディア・ジャパン)、プレスリリース「マーサー、年間祝祭日数世界ランキングを発表」(マーサー ジャパン株式会社)をもとに作成。
 
作成/MANA-Biz編集部