リサーチ

2017.04.19

顕在化してきた「パタニティ・ハラスメント」

育児中の男性に対する理解欠如が生む“嫌がらせ”

「イクメン」という言葉が浸透しているように、男性の育児参加が増えてきている。とはいえ、いまだ男性の育児参加に理解が浅い職場も多い。そんな職場では、「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)」の問題が起こっている。「パタニティ」とは「父親であること/父性」の意味で、パタハラは父親としての働きを妨げられることを指す。

日本労働組合総連合会が20歳~59歳の男性有職者1000人を対象に行った調査によると、実際に職場でパタハラをされた経験がある男性は11.6%だった。割合は高くはないものの、その内容は見過ごすことはできない。パタハラの内容としては「育児のための制度利用を認めてもらえなかった」が最も多く、「上司に『育児は母親の役割』『育休をとればキャリアに傷がつく』などと言われた」、「子育てのための制度を利用したら、嫌がらせをされた」など、男女差別や職場内での嫌がらせという内容が主なものとして続いた。 
 
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女性の育児制度利用はだいぶ理解が進んできたが、男性の育児参加・育児制度利用はまだ認知も広まっておらず、実質制度利用ができていないという現状が見て取れる。
 
周囲でパタハラにあった人がいる人(10.8%)にその内容を聞いたところ、同じ結果となった。つまり、育児制度を設けている企業であっても実際に適用されない企業が多く、それどころかその姿勢を責められることが問題となっている。
 
 
ではこれに対し、当事者はどのような対応をとったのか。
パタハラ経験者がとった対応 のトップは「だれにも相談せず、子育てのための制度の利用をあきらめた」であり、6割を超えている。
 
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社内外や公的機関へ相談した人の割合はかなり低かった。パタハラが起こる原因としては、「上司や同僚の理解不足・協力不足」が最多であった。
 
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一連の結果から、企業が男性も利用できる育児制度を設けているにもかかわらず、周囲の人々の理解がないためにその利用を妨げられる事例が多いことがわかる。これでは男女の平等も、男性社員の仕事に対する意欲も失われてしまう。
パタハラをなくすために企業が積極的に進めていくべきことは、制度の設置だけではない。実際の現場での管理職や社員の「男性の育児参加に対する理解」を深める教育をすることが肝要だ。特に自分が子育てに参加していない、または子どもを持たない男性の理解を得るには時間がかかる場合がある。社内全体で理解を深めていかなければ、パタハラの問題は解決されない。
 
 
(出典)連合(日本労働組合総連合会)「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査」をもとに作成

 

作成/MANA-Biz編集部