仕事のプロ

2017.04.24

「BABAラボ」にみる、高齢化社会のコミュニティビジネス

地域のシニアがもつ経験やアイデアをビジネスに活用

地域社会とのつながりをもたず、生きがいを見いだせない高齢者が増えている。また、人口減にともなう労働者不足により、働き手として中高年の存在がクローズアップされつつある。これらの問題における一つのソリューションといえるのが、おばあちゃん世代の女性が集まって働く工房「BABAラボ」だ。設立者の桑原静さんに、地域社会の課題をビジネスによって解決する手法についてお話を伺った。

ものづくりにこだわらず
自分だけの役割を見つけてほしい

 
 BABAラボは創設から間もなく6年。『ほほほ ほにゅうびん』がキッズデザイン賞を受賞したことなどから、急速に認知度を高めている。そんな上昇気流の中で実現したのが、「BABAラボ ぎふいけだ工房」の開設だった。岐阜県池田町の育児雑貨メーカーであるラッキー工業株式会社の出資によって生まれた、第2号の工房だ。
「BABAラボのような組織は、大きく育てるというよりは、それぞれ小さい規模で各地に設立するのがよいと考えていました。全国のお年寄りが、自宅から通えるBABAラボでコミュニティをつくってほしかったからです。全国展開の道を探っていたところ、『BABAラボをつくりたい』と声をかけていただいたのです。願ってもないお話でした」
 ぎふいけだ工房以降も、東京都内などで新工房開設の動きは進んでいる。「各BABAラボは、600~1000万円程度の事業規模で無理なく続けていくことが理想です」と桑原さんは語る。
 
 一方、さいたま市のBABAラボ本部でも、新たな動きが進んでいる。これまでは「BABAラボ=ものづくり工房」というイメージが強かったが、今後は高齢者を対象としたマーケティングや調査事業にも力を入れ、お年寄りの本音を発信していきたいという。また、高齢者の経験やアイデアを活かした商品・サービス開発も、ますます活発化させていく。収入の内訳としては、マーケティング事業が6割、商品開発事業が3割、その他1割というバランスをめざしているそうだ。
「事業内容を拡げようとしているのは、おばあちゃんたちがさらに活躍できる場をつくるためです。商品になるものづくりのためには高い手芸スキルが必要ですが、登録者全員がスキルを備えているわけではありません。もっといろいろな役割の中から自分にしかできない業務を見つけ、100歳まで生き生きと働いてもらえればと思っています」
 
「お年寄りに生きがいを持ってほしい」と考えていた桑原さんは、高齢者にとっての生きがいを突き詰め、「自分ならではの役割や活躍の場があること」「地域の人と温かい交流をもつこと」という自分なりの結論を出した。そして、「役割」と「交流の場」という二つの要素をもとにビジネスモデルをデザインし、コミュニティビジネスの手法を用いてBABAラボを立ち上げた。また、お年寄りの気持ちに寄り添い、「おばあちゃんの経験やアイデアを形にするには?」と常に考えながらていねいにビジネスを育てていった。
 ラボで働くお年寄りたちの生き生きした姿を見れば、桑原さんの当初の願いが実現したことは明らかだ。
 
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BABAラボ

「100歳までいきいきと働き・暮らせる社会に」という理念のもとに、高齢女性が特技を生かしながら働き、地域社会とつながれる職場として2011年にオープン。おばあちゃんの意見を生かした「孫育てグッズ」の開発・製造や、高齢者の本音に迫るマーケティング・調査事業などを展開。2016年発売の、目盛りが見やすく持ちやすい哺乳瓶『ほほほ ほにゅうびん』は、キッズデザイン賞少子化対策大臣賞などを受賞。

文/横堀夏代 撮影/曳野若菜
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