リサーチ

2016.12.09

座り方を工夫して疲れを溜めずに仕事の効率をアップ

正しい姿勢で座ることと適度に身体を動かすこと

いくらいい椅子に座っていても、座り方を間違うといい椅子も効果半減。仕事の効率もアップする疲れが溜まりにくい座り方を紹介する。

座りっぱなしは寿命を縮める?

近年、「座りっぱなしは喫煙と同じようなもので、寿命を縮める。」など、ネットでも研究論文が公開され、話題になっている。長時間のデスクワークを強いられるオフィスワーカーにとっては、このような記事はやはり気になるところではないだろうか。実際に寿命が縮まるという実感はないにしても、腰痛や肩こりなどの体の疲れや不調は多くの人が経験していることだろう。
座っている姿勢はあまり筋肉を使わないので、疲れをすぐに感じることは少なく、集中したデスクワークにも適しているので、長時間同じ姿勢を取ってしまいがちである。しかし、筋肉は長時間使わずにいると、血流が滞って酸素が供給されなかったり老廃物が排出されなくなったりして、気づかない間に疲れが溜まってくる。また、背中やお尻の筋肉は引き伸ばされた状態で緊張状態を続けていることで負担がかかり、腰痛や肩こりとなって現われる。
 
このように、長時間の座姿勢で筋肉を使わないことで疲れは溜まり、代謝も落ちて老化が進み、寿命が縮まる。というのがメカニズムであるが、これに対処するにはできるだけ同じ姿勢をとり続けないということが重要となる。
 
ということで最近、姿勢を変えて立った姿勢でも作業ができるよう、上下昇降できるデスクなどが発売され、特に長時間のデスクワークが多い企業や業界を中心に、取り入れられ始めている。デスクワークでの筋肉疲労の原因は長時間同じ姿勢をとり続けることにあることから、立ち座りをして姿勢を変えながら作業を行うことで疲れの軽減を図るというのはもちろん可能であるが、座り方を工夫することでも疲れを軽減することはできるので、ここでは座り方の工夫を紹介したい。
 
 

まずは背骨を自然なS字に

 
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四足歩行の動物の背骨はアーチ状であるが、人間の背骨は二足歩行をするためにS字形状に変化しており、それが垂直に掛かる荷重をバネのように吸収する役割を果たしている。
筋肉はこのS字形状を支えるために形成されているが、座るとS字形状が崩れてアーチ状になってしまいがちで、背中やお尻の筋肉が伸ばされて緊張状態となって疲れやすくなる。これを避けるには極力立っているときのS字形状を保つ必要があり、そのためにはしっかりと深く座り、背もたれに背中をつけて座ることをお勧めする。S字形状には個人差があるが、最近の人間工学を駆使した椅子はランバーサポート機能を搭載しているものが多いので、自分のS字形状に合うように調節することができる。
 
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また、座面の高さも膝下の長さに合わせることで、S字を保つサポートをするとともに、太ももへの体圧の分散を図り、お尻などに集中的に荷重が掛かるのを防いで疲れを溜まりにくくする。膝裏に指が一本は入るくらいに合わせることで、膝の裏側を圧迫することなく、血流の阻害をなくして冷えなどの改善にもつながる。
 
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適度に動くこと

自然なS字は身体への負担を少なくするが、どんなにいい姿勢でも同じ姿勢を取り続けると疲れは溜まりやすい。なので、適度に体を動かすことをお勧めする。最近のオフィスチェアはリクライニングの機能が充実しているので、この機能を使うとよい。しかし、背もたれをゆったりと倒して座るリラックス姿勢は、仕事をサボっているように見られるおそれがあるため、なかなかできない人も多いが、最も集中力の続く単位は15分程とも言われているので、それくらいの間隔で背もたれを少し倒してみてはどうだろう。身体の疲れが小刻みにリセットされるとともに、集中力の回復も期待できる。オフィスチェアの中には、背もたれが左右にしなるものもあるが、この動きも疲労のリセットには効果的である。
 
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ストレッチでリフレッシュを

適度に体を動かしていてもやはりだんだんと疲れは溜まってくるもの。人の集中力も90~120分が限界といわれているので、2時間に一度くらいはストレッチをすることで、血流も回復し、リラックスするとともに集中力も回復してまた作業に取り組め、仕事の効率も上がるのではないだろうか。ぜひ、日々のワークシーンで取り入れてもらいたい。

木下 洋二郎(Kinoshita Yojiro)

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部 
ものづくり本部 革新センター センター長
オフィスチェアーの開発を中心に、家具全般のデザイン、開発、およびデザイン戦略を担当。2014年より現職。人間工学視点でエンジニアリングとデザインを融合した先行開発に従事。ドイツiFデザイン賞金賞、グッドデザイン賞等、受賞多数。