リサーチ

2016.10.06

大人でも起こりうる「発達障害」

「発達障害」の1つ、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」は、大人になってから発症する可能性があるそうだ。発症した場合、病気とどのようにつき合えばいいのだろうか?

いつも落ち着きがない、周りの空気が読めない…こんな症状に代表されるADHDは、基本的に子どもの頃に発症する病気だと考えられてきた。脳の一部の機能に、生まれつき障害があるのが原因とされ、厚生労働省のサイトには「7歳までに現れます」とはっきり書かれている。
ところが2016年5月、大人になってから初めて発症する可能性がある、という研究結果が米国医師会(AMA)の精神医学専門誌「JAMA Psychiatry」に、イギリスとブラジルそれぞれの研究チームによる2件の論文として発表された。
 
まず、英ロンドン大学キングスカレッジなどの研究チームが、2000組以上の双子を対象に実施した調査では、成人期ADHDと診断された166人のうち、68%が小児期にはどの検査でもADHDの基準を満たしていなかったことが判明した。
一方ブラジルの研究チームが1993年に開始した5000人以上を対象とする追跡調査では、子どもの時にADHDと診断された成人の患者の割合は12%で、成人しても引き続き障害が見られた子どものADHD患者は17%と、ともに非常に少数となっている。
 
この結果で見えてくるのは、大人になってからADHDを発症する割合のほうが実は多いということだ。こうした「遅発型ADHD」は、子どものADHDとは発症原因が異なることが考えられると報告されている。また、遅発型ADHDは遺伝的要因の可能性が低いこともわかったという。
 
厚生労働省の情報によると、学童期の子どもの3~7%がADHD。これに対して、大人のADHD患者は成人全体の約4%を占めるといわれている。意外なほど大きな数字ではないだろうか。
しかも、今回の研究報告では、大人のADHDは子どもよりも症状が重くなることが多く、交通事故や犯罪行動などの増加をともなう傾向にあるという。さらに、大人のADHDのなかでも、遅発型ADHD患者は不安神経症やうつ病になりやすく、アルコールや大麻などの依存症に陥る割合も高いと報告している。
どうやら、決して人ごとではない、大人のADHD。よく見られる症状を下にあげるので、チェックしてみよう。
 

・会議中など、落ち着かず、そわそわしてしまう。
・気がつくと貧乏ゆすりをしている。
・忘れ物、なくし物が多い
・仕事でケアレスミスが多い。
・思ったことをすぐに口にする。
・衝動買いをすることが多い
・部屋が片づけられない。
・約束の期日に間に合わせることができない。
・時間管理が苦手
・仕事や作業を順序だてて行うことが苦手

 
もしかして、ADHD? と思ったら、早めに医療機関を受診することをおすすめする。専門医が生活における適切なアドバイスをしてくれるはずだ。場合によっては脳内の神経伝達を改善させる薬物治療を行うこともできる。
大人のADHDは決して特別な病気や障害ではない。しかし他の精神疾患を併発するなど、二次的な問題につながることもあるので、早めに適切なサポートや治療を受けることが大切だ。
 
 
(出典)AFPBB News「注意欠陥多動性障害、成人期に発症も 研究」、日本イーライリリー「ADHDの正しい理解と生活のヒント」をもとに作成

 

作成/MANA-Biz編集部