リサーチ

2016.09.08

ネット大学でスキルアップを!

受講者が1年で倍増したMOOC

インターネット上で誰でも無料で受講できる大規模講義、MOOC。社会人の新たな学びのスタイルとして、日本でも急速に受講者が拡大し、個人のみならず企業レベルでも積極的な活用が始まっている。

世界的に注目を集めるMOOC(ムーク)という教育システム。MOOC とは、Massive Open Online Coursesの略語で、WEB上で誰でも無料で参加ができる大規模かつオープンな講義。修了者に対しては修了証を発行する教育サービスのことを指す。2012年よりアメリカを中心とした地域でスタートし、各国の主要大学および有名教授によるオープンオンライン講座として公開されている。代表的なプラットフォームとしては海外では「Coursera」「edX」のシェアが大きく、日本国内では株式会社ドコモgaccoが提供する「gacco(ガッコ)」などが挙げられる。
 
世界中のMOOCが検索できる統合ウェブサイトClass Centralが行った調査によれば、2015年のMOOCの受講者総数(1講座以上の受講登録者)は3500万人。2014年の1600~1800万人(推計値)の約2倍に増大したことがわかった。プラットフォームの規模でいうと、最も多くの受講者を抱えるのはCourseraの1700万人。そしてedX、Futurelearnと続く。特にFuturelearnは、2015年に受講者数が前年比約3倍の300万人弱と急激に伸びており、利用者の関心を集めている。
 
国内のMOOCでは、2014年2月にサービスをスタートした「gacco(ガッコ)」が好調だ。10分程度の動画による授業がメインとなっているため、外出先やスキマ時間に学ぶことができる。第1弾の東京大学・本郷和人教授の『日本中世の自由と平等』講座は、2万人の受講生を集めメディアでも大きな話題となった。その後も、AI、脳科学、再生医療など社会的に関心の高いテーマを扱う講座を次々と開設していき、約2年で100講座を超えるとともに、延べ受講者数が50万人を突破する勢いだ。
 
また、ビジネスパーソンを対象とした講座が増えてきているのにも注目したい。今年3月、総務省は“日本政府初のMOOC講座”として、データサイエンス・オンライン講座「社会人のためのデータサイエンス入門」を開講した。これは統計学の基礎やデータの見方など、データ分析の基本的な知識を学ぶことができる内容で、データに基づいて課題を解決する能力の高い人材、すなわちデータサイエンス力の高い人材を育成し、やがては国際社会における経済成長の加速化を担ってもらうことが狙いだ。4月には続編の「社会人のためのデータサイエンス演習」も開講した。
 
さらにgaccoには企業や教育機関、自治体等における法人での受講者を限定とした法人向けサービスがあり、こちらは受講者数が1万人を突破した。大学などが提供する情報セキュリティに関する講座や、経営(マネジメント)入門、イノベーション入門、新規事業開発スキルといった講座が特に支持され、企業内研修などに活用されている。
 
新しいオンライン教育の流れを牽引するMOOC。夜間や休日にビジネススクールに通ったり、参考書を片手に独学で学ぶしかなかったスキルアップの方法が、大きく変わり始めている。まずは知的好奇心を満たすためでも、この新しい学びの形を体験してみるのもいいかもしれない。
 
 
(出典)Class Central「By The Numbers: MOOCS in 2015」、総務省「平成26年版 情報通信白書」をもとに作成
 
作成/MANA-Biz編集部