リサーチ

2016.08.10

ものづくり産業の成長には人材定着が必要

生産性の高い企業が行う取り組みとは?

高い生産性を維持するには、人材定着に向けた取り組みが不可欠だ。生産性の高い企業は具体的にどのような取り組みを実施しているのだろうか。

日本の経済を根本から支えるものづくり産業、いわゆる「製造業」の業界では、人材定着の重要性が増している。優秀な人材が定着することが、高い生産性を維持し、技術に磨きをかけるためには不可欠だからだ。実際、ものづくり産業において、自社の労働生産性が同業他社と比べて 「高い」 と考える企業と「低い」と考える企業では、人材の定着に向けた取り組みに関して差がある。
 
経済産業省「2016年版ものづくり白書」にある、独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JLPT)の調査による「ものづくり産業における労働生産性向上にむけた人材確保、定着、育成等に関する調査(2015年)」を基にした上記グラフでは、人材定着のための取り組みをしている企業ほど他社に比べて生産性が高いという結果が出ている。
 
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特に差がみられる内容は 「賃金水準の向上」、「業績を処遇に反映」、「能力を処遇に反映」、「福利厚生の充実」といった項目だ。一方、「能力開発・教育訓練の実施」、「『提案制度』など従業員の意見を吸い上げる取り組み」などは、両者で大きな差はない。やはり、賃金やその他の待遇が良くなることが、労働者の意欲を高め、さらに生産性を高めている。従業員が、自分たちの労働対価が給与や福利厚生といった、実利に反映されるのを好んでいることは明らかだ。自分の労働がどのくらいの価値があるのかがわかりやすく、頑張れば頑張っただけ対価が大きくなるというシンプルな方程式だからだ。
 
これは、日本の景気低迷を反映した結果でもあるだろう。自分の生活が保証されることで、安心して仕事に取り組めるという基本的な姿勢が、結果として生産性の高低に現れている。企業が従業員の生活基盤を安定させることで、長期的に見て生産性の向上というメリットをもたらす。ものづくり産業では、従業員の待遇を改善する取り組みが、会社の未来を決めると言えるだろう。
 
また、人材の育成・能力開発を目的とした取組について見ると、どちらも 「日常業務の中で上司や先輩が指導する 」 という OJT を人材の育成・能力開発の基本としている。それとは別に、労働生産性が 「高い」 と考える企業ほど、「主要な担当業務のほかに、関連する業務もローテーションで経験させる」、「仕事の内容を吟味して、やさしい仕事から難しい仕事へと経験をさせる」 という項目を挙げていた。
前者では、幅広い業務を経験することで将来の幹部候補の育成にも繋がる。後者では、無理のない体系的なスキル向上によって業務にストレスを感じずにすむとともに、より向上心をかきたてる効果もあると考えられる。
 
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今後ものづくり産業では、自動化・機械化や生産設備の改善などといったことも含む「IT化」にともない、今までの状況を把握しつつ新たな知識や技術を有する人材が必要となってくる。人材を定着させること、そして体系的・実践的訓練を通じて企業の生産活動・競争力を支える基幹的人材を育成することは、ますます欠かせないものとなるだろう。
 
 
(出典)経済産業省「2016年版ものづくり白書」をもとに作成
作成/MANA-Biz編集部
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