組織の力

2016.08.22

30年以上健康経営を支えるサンスターの「心身健康道場」〈前編〉

組織の活性化に必要な社員の健康

ワークスタイル変革のキーワードとして注目される、「ウェルビーイング(well-being)」。オフィスで働く人々が身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態にあることを意味し、労働意識の高い優秀な人材を確保するためにも、今後、自社内のウェルビーイングへの取り組みが企業の重要な課題といわれている。サンスターグループの社員向け福利厚生施設「心身健康道場」は、特定健診で積極的支援が必要とされた社員などを対象に生活習慣や健康バランスの見直しを支援している。ウェルビーイングを30年以上も実践し続けるこの施設について、現道場長の門脇敏夫さんに、その成り立ちや内容について話を伺った。

生活習慣病予防の
恰好の施設として利用

元々は、健康意識を高めるために、全社員がひと通り「心身健康道場」を体験することが必須だった。しかし、2008年から厚生労働省が始めた特定保健指導により、生活習慣病の予防のために、企業・自治体で取り組むよう全国的に指導が入り始めた。企業の健保組合などに生活習慣の改善指導が義務付けられ、特に生活習慣改善が必要な「積極的支援者」は腹囲や摂取カロリーなどに関する目標数値を設定して、面談や電話、メールでの定期的な指導を行うようになった。
それならば、とひと足早い2007年より、道場を活用した2泊3日の実践的な生活習慣病予防プログラムを開始して、明確に生活習慣病の予防施設として機能するようになった。
対象者は、特定保健指導の中での積極的支援対象者にあたる人。お腹まわりが85cm以上、またはBMI(肥満指数)が25以上で、高血圧、高血糖値、高脂血症、喫煙者、といううちから2つが該当する人である。あとは、メタボの人でこれ以上悪くなると病気になることが診断によって明確な人も対象となる。年齢層は幅広いが、多いのは40代の男性。
多くの企業において、健診で見つかったそれらの問題点は、本人任せにされるケースが多い。だがサンスターは、「まず社員が健康でなければ」という思いのもと、この「健康道場」で対象の社員全員に、改善の機会を提供している。
「道場に入れられる」というと体育会系のように厳しく指導されるイメージを抱いてしまうが、実際はホテルのような個室の宿泊部屋が各自に用意され、玄米菜食の食事や、豊かな自然の中を歩くウォーキング、水泳、体操といったさまざまな運動、健康に関する専門家の話を聞くなど、心身ともにリフレッシュできる体験が待っている。もちろん、2泊3日で一気に体質が改善される訳ではないが、ここに来て健康的な生活の素晴らしさを体験することで、普段の生活習慣を変えるきっかけになるのだ。
「いまのところ、道場を体験した人のうち、毎年約5割の人が改善し、次年度の検査では積極的支援対象者から外れています。厚生労働省の特定保健指導では、改善率は2割程度なので、かなり効果が出ているなと思います。もちろん次年度も連続で支援対象者になってしまう人も中にはいますが、前年より悪くはならず、現状維持の状態を保っているケースがほとんどです」(門脇氏)
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文/イデア・ビレッジ 撮影/上田浩江