組織の力

2018.09.03

健康経営を支える「ワーク・フード・バランス」〈前編〉

「食」環境が人材戦略と生産性向上をバックアップする

「優秀な人材の確保」と「生産性向上」は近年、多くの企業にとって大きな課題となっている。企業に向けて食のサポートサービスを提供する株式会社おかんの代表取締役CEOの沢木恵太氏は、「ビジネスパーソンが健全な食生活を送れる環境を企業が整えることで、この二大テーマにアプローチできる可能性は高い」と強調する。なぜ「食」は人材対策や生産性アップにつながるのか。株式会社おかんのビジネスモデルとあわせてお聞きした。

「従業員の健康意識が
向上した」という声も

「オフィスおかん」のサービスを導入した企業からはさまざまな反響が届いているが、多くよせられるのが「社員の健康に対する意識が高まった」という声だ。沢木氏も「以前は肉のお総菜ばかり売れていた企業様が、魚や野菜のお総菜もバランスよく出るようになったケースが目立ちます。健康に対する弊社のこだわりが、お惣菜の購入を通して社員の方々にも届いている」と指摘する。

他にも、サービス業などでは、健康的なまかないをつけることによってアルバイトの応募が増えた、という声もある。さらに、朝食利用の場合は企業側がお総菜の料金を負担したり、家事負担を軽減するために夕食として自宅に持ち帰ることを推奨したりする企業もあり、いずれも好評だという。

「経済的負担の軽減や、調理の手間を省くためなど、『オフィスおかん』の利用目的が必ずしも健康向上である必要はありません。結果的に行動が変わることで健康的な食へのきっかけがつくれれば、私たちのミッションはかなえられたことになります」



企業側の意識向上を
目指して他業種とも協働

おかんでは、食を通じてビジネスパーソンの豊かなライフスタイルを後押しするため、オフィスメーカーや有識者などと連携し、2016年に『ワーク・フード・バランス協会』を設立した。ワーク・フード・バランスというネーミングには、「企業側も働く側も『働く』と『食べる』を同様に大切なことととらえてほしい」という願いが込められている。

「働く人の食生活向上を実現するには、企業側の意識変革が重要です。そこでワーク・フード・バランス協会では、企業に向けて食生活のセミナーなどをはじめとする発信活動を行い、啓発・啓蒙に努めています」

食が健康を大きく左右することや、精力的に働くための土台が健康にあることは企業も社員もわかっている。それでも、「健康は個人責任という面もあり、強くて介入しづらい」とためらう企業は多い。しかし、生産性向上や人材確保などに向けて食など従業員の健康環境を充実させていくことは、企業にとって未来を見据えた重要な投資といえるのではないだろうか。

後編では、「オフィスおかん」のメニュー開発を手がける管理栄養士が、ビジネスパーソンにすすめる食事のとりかたを1日の流れに沿って紹介する。


株式会社おかん

2012年に株式会社CHISANとして創業し、個人向け総菜定期仕送りサービス「おかん」 を開始する。2014年に株式会社おかんに社名変更し、法人向けぷち社食サービス「オフィスおかん」を開始する。2016年に一般社団法人ワーク・フード・バランス協会を設立し、ワークプレイスにおける食環境の向上に向けた活動も行っている。

文/横堀夏代 撮影/荒川潤