組織の力

2018.09.03

健康経営を支える「ワーク・フード・バランス」〈前編〉

「食」環境が人材戦略と生産性向上をバックアップする

「優秀な人材の確保」と「生産性向上」は近年、多くの企業にとって大きな課題となっている。企業に向けて食のサポートサービスを提供する株式会社おかんの代表取締役CEOの沢木恵太氏は、「ビジネスパーソンが健全な食生活を送れる環境を企業が整えることで、この二大テーマにアプローチできる可能性は高い」と強調する。なぜ「食」は人材対策や生産性アップにつながるのか。株式会社おかんのビジネスモデルとあわせてお聞きした。

オフィスの一角に
いつでも食環境を用意

株式会社おかんにおけるサービスの柱の一つは、“ぷち社食”サービスというキャッチフレーズで提供する「オフィスおかん」だ。オフィスの1コーナーにお総菜や主食を常備し、冷蔵庫や電子レンジなどの設備も設置するのが、同社が提供するサービスのスタイル。導入企業が月額料金を負担、従業員は基本的に1総菜100円で購入し、ランチタイムをはじめ、いつでも食べることができる。まさに「小さな社員食堂」的存在というわけだ。ちなみに2018年6月のお総菜ラインナップは「長崎産あじの南蛮漬け」や「こだわりソースのトマトハンバーグ」など約20種で、それ以外に発芽米ごはんなど主食も用意されている。主食、主菜、副菜を組み合わせれば栄養バランスに配慮したランチを手軽にとることができる。
 
「オフィスおかん」のサービスは、IT企業や介護・福祉系企業をはじめ、すでに全国の約1200拠点で導入されている。栄養バランスを配慮したお総菜の品質やおいしさはもちろん、「仕事が立て込んでいるときは食事を買いに行く時間さえとれないので、手軽に食べられる」という使い勝手のよさや、「都心では外食もお弁当もそれなりの価格なので、手ごろな価格で購入できるのがありがたい」といった経済的メリットを挙げるビジネスパーソンも多い。
 
 
 

ビジネスパーソンのライフスタイルが
企業活動を左右する

おかんがこのサービスを開始した理由を、沢木氏は「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」という同社のミッションを掲げて説明する。
 
「例えば1日8時間勤務の人なら、起きている時間の約半分は働いていることになります。その働く時間を充実させるには、心身の健康や、私生活との両立がかせません。実際、体調やメンタルバランスを崩したり、育児や介護と仕事とのバランスが取りづらかったりして悩む方はたくさんいらっしゃいます」
 
 
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少子高齢化によって労働人口が減っていく背景もあり、企業にとって働き手の確保が一大テーマとなっているなかで、心身の健康や育児・介護を理由とした社員の離職は手痛い損失といえる。また、沢木氏は「離職以外にも問題はある」と指摘する。
 
「近年はビジネスパーソンのプレゼンティズム(職場で働いていても、何らかの理由で労働生産性が低下している状態)が問題になっていますが、働き手が健康状態を崩したり、育児・介護との両立に支障をきたした状態だったりすると、生産性が著しく下がることは簡単に予測できます」
 
つまり労働力と生産性の両面において、ビジネスパーソンのライフスタイルを豊かにすることが企業活動の充実にもつながることになるわけだ。
近年注目されている健康経営は、「社員を健康に導くことが企業の成長につながる」という考え方で、まさに「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」という同社の企業理念と重なっている。
 
 
 

企業側が関わりやすい「食」を切り口に
健康経営にアプローチ

「ビジネスパーソンの健康」が注目される中で、同社が選んだのは「食」という切り口からのアプローチだった。働き手の健康状態をよくするにはいろいろな手法が考えられるが、なぜ食だったのだろうか。
 
「健康を左右する三大要素は、運動・栄養・休養の3つだという考え方が一般的です。しかし休養(睡眠)と運動は、オフィス以外の場所で、勤務時間外にとることが多いのが実情です。それに比べると栄養(食)の場合、どんなに忙しくてもお昼には食事をするため、健康に配慮したお総菜を企業側が用意するなど介入がしやすく、社員の健康向上に向けた取り組みを比較的簡単に実現できるのではないでしょうか」
 
「また、お総菜とあわせてスマホのアプリで健康情報の発信も行っていますので、従業員の方々の健康意識が高まることも期待できます。さらに企業側から考えると、『従業員を大切にする企業』というプラスイメージをアピールできるので、優秀な人材の確保や継続的な雇用も期待できます」
 
食と生産性の関係はまだ明らかになっていない部分もあるが、WHOは過去に「適切な栄養素をとることによって生産性が平均より20%高まる」といった主旨の論文を発表している。少なくとも、栄養バランスのよい食品が用意され、いつでも食べることができれば、欠食による生産性の低下を未然に防げることは間違いない。
 
 
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株式会社おかん

2012年に株式会社CHISANとして創業し、個人向け総菜定期仕送りサービス「おかん」 を開始する。2014年に株式会社おかんに社名変更し、法人向けぷち社食サービス「オフィスおかん」を開始する。2016年に一般社団法人ワーク・フード・バランス協会を設立し、ワークプレイスにおける食環境の向上に向けた活動も行っている。

文/横堀夏代 撮影/荒川潤
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