組織の力

2018.09.25

ワークプレイスのグローバルトレンドとは? vol.1

第3回 働き方大学
「働き方の変遷、高度化するオフィス」編 セミナーレポート

グローバル企業を中心に、ワークプレイスのトレンドが日々変化している昨今。日本でも「働き方改革」が叫ばれるなか、企業にとっても、ワーカーにとっても「働きやすい環境」 について考えるシーンが増えている。ワークスタイルを追求する先進国では、センターオフィスのあり方のみならず、その都市ならではの魅力を企業競争力に活かして、コワーキングやシェアリングなどをCREの一部としてポートフォリオに組み込むケースもあり、日本でもこれらを手本に、今後ますますワークスタイルは変わってくると予測される。そこで今回は、2018年8月27日(月)にコクヨ株式会社のライブオフィスで開催されたセミナー「ワークプレイスのグローバルトレンドとは?」の様子を3回に分けてレポートする。

テクノロジーが変える
ワークプレイスの役割

今回の講師は、コクヨ株式会社クリエイティブセンター主幹研究員であり、働くしくみと空間をつくるマガジン「WORKSIGHT」編集長の山下正太郎氏。9年間で30カ国、50都市、1000箇所以上のオフィスを取材した山下氏が海外現地取材での最新事例をもとに、世界のオフィスのダイナミックなトレンド動向を紹介する。その第1回。
 
 
 

日本の働き方改革と
オフィス形成の変遷

近年、海外を中心にワークプレイスの役割が目まぐるしく変わってきています。この変化の主な要因は、テクノロジーの進展によるものです。自分たちの状況を振り返ると、現在の日本は長引く低成長時代。中国やインドなどアジア圏が伸びている中で、成長率の差は広がっています。また人口も急速な減少傾向にあり、とくに15歳〜64歳の生産年齢人口の割合も少なくなってきています。これから、どうやってイノベーションを起こして経済を活性化させるか、柔軟な労働力を確保して働き手をどうやって確保していくのかが日本の抱える2大問題です。
 
 
1_org_051_01.png
 
現在、日本が行なっている働き方改革は、将来的に生産年齢人口が減ってくることに対して、柔軟に働き手を増やしていったり、より長く働けたりするようなリテンションを目的とした方向性に進んでいます。
 
 
1_org_051_02.png

出典:「ワークプレイスのグローバルトレンドとは? WORKSIGHT編集長が語る働く環境の変遷と今」投影画像

 
ところがグローバルトレンドを見てみると、この考え方はややマイナーで、どちらかというとリテンションよりもイノベーションを志向しているように思います。またどちらも歴史的にみると第四世代のオフィスに該当しているといえます。
 
 
1_org_051_03.png

出典:「ワークプレイスのグローバルトレンドとは? WORKSIGHT編集長が語る働く環境の変遷と今」投影画像

 
第四世代は、2010年ごろから始まったとされていますが、まだはっきりとした定義がありません。一つのポイントは「ミックスオフィス」という考え方。第三世代までは、インターネット空間とリアルスペースを分ける、ワークライフバランスを重視した考え方が主体でしたが、第四世代では「そこを分けたり、バランスを取ったりするのはやめましょう」といった発想になりました。むしろワークもライフも、インターネット空間もリアル空間も全部混ぜていきましょうというのがミックスオフィスという考え方です。
 
 
1_org_051_04.png
 
また、イノベーションの側面から話すと「エコシステム」というキーワードが出始めています。これまでのように一企業の中で完結するのではなく、複数の企業が協働しながら、新しいものをつくっていく場をつくっていきましょうという考え方です。
 
 
 

AIの到来による
オフィスワークの変化

オフィスの変化を促しているテクノロジーの進展について話します。
 
「InnoCentive(イノセンティブ)」というサービスをご存知でしょうか?これは、企業内だけでは解決できないようなさまざまな課題をインターネットで開示して、世界中から回答を集めるというサイトです。このサイトは巨大なグローバル企業も利用しています。こうしたクラウドソーシング型のサービスは従来の単純作業だけでなく、課題解決の部分までカバーし始めています。
 
こういったサービスは、自分たちで研究員を雇わなくてもいい、あるいは研究所をつくらなくてもいい、結果的にオフィスの縮小にもつながりやすくなります。日本は非常に自前主義が強いですが、世界に視野を広げると自前主義に頼るのではなく、むしろスピードを持って自分たちの問題を多少開示しても解決を先に急ぐようなやり方が増えていきています。
 
「AI(人工知能)」がオフィスワークに与える変化も、見逃せません。このところ毎日、メディアをにぎわせているので皆さんもご覧になっていると思います。もっとも悲観的な調査/予測によりますと、今後10〜20年の間に人間の仕事のうち49%が、AIに奪われるのではないかと言われています。楽観的な指標になると9%という数字も出ていますが、いずれにせよホワイトカラーの仕事が代替されることが予想されています。
 
 
1_org_051_05.png

出典:「WORKSIGHT」https://www.worksight.jp/issues/609.html

 
これによって人材のニーズも二極化すると言われていて、たとえば「問いを設定する」などのAIによる解決が難しいハイスキルな仕事と、逆にAIではリーチできないような「機械をサポートする」「直接人に優しくする」といったロースキルの仕事で、ワーカーが二極化すると予想されています。つまり、その中間に存在するこれまでホワイトカラーがやっていた手順を追って進める管理型の仕事が、人工知能によってごっそりと奪われる可能性があるのです。
 
こうして将来的にさまざまなテクノロジーが人間の仕事を代替し、あるいは産業の構造を変化させていくと、もうオフィスには人は来ず、不要なのではないかと思われるかもしれませんが、最近ではまったく逆の状況が起きている点が面白いところです。
 
日本でも話題になった『ワーク・シフト』や『ライフシフト 100年時代の人生戦略』の著者であるリンダ・グラットン氏も、「非常にハイスキルで複雑、かつグローバル化した仕事をこなすために、あるワーカーが特定の物理的な場所に集まってきている」と言っています。実際に、東京やサンフランシスコ、ロンドンでも、非常にハイスキルなホワイトカラー人口がずっと増え続けていて、かつオフィスで仕事をすることを望んでいるという状況が世界的にも見えています。そこで考えなくてはいけないのが、「オフィスで何をするか」が変わってきているということです。
 
 
 

もうオフィスはいらない?
求められる新しい機能

今まで、我々はオフィスの役割をこんな風に定義していました。
 
 
1_org_051_06.png

出典:「ワークプレイスのグローバルトレンドとは? WORKSIGHT編集長が語る働く環境の変遷と今」投影画像

 
1.単純作業=答えがわかっていてやり方を工夫すればいい作業
2.課題解決=答えを出すために知恵を絞る作業 
 
今まではこの2つの作業に、個人、チーム、社外という3つをかけ合わせ、オフィスの中は図のような6象限で役割が分類できるという考え方でした。しかし近年では、左側からからどんどんITやさまざまなテクノロジーによってすでに代替され始めていて、人がやらなくてもよくなってきています。事実、単純作業のための場の面積は減少していると言っていいでしょう。先ほどご紹介したInnoCentiveのようなサービスが増えたおかげで、課題解決ですらテクノロジーが一部代替し始めています。
 
 
1_org_051_07.png

出典:「ワークプレイスのグローバルトレンドとは? WORKSIGHT編集長が語る働く環境の変遷と今」投影画像

 
では、オフィスはいらないのかという話に戻ると、先進的な企業を見ているとそうではありません。むしろ役割がさらに高次元に移っているのです。たとえば、単純作業はもうオフィスでやらなくてもよくなり、課題解決や今後起こりうる解くべき課題を探求するような機能が、オフィスに求められてきているのです。
 
さまざまな企業がフューチャーセンター、コワーキングスペース、リビングラボ、といった新しいワークプレイスをつくり始めていて、もっとも変化の激しいところでしょう。これらの場は、バウンダリーつまり会社の中ではなく、かといって会社の外でもないような中間領域に生まれています。
 
結論、ここ数年のオフィスの変化を端的に表現すると、オフィスがいらないのではなく、テクノロジーの進化によって役割がシフトしたといえます。
 
ここまでのお話を踏まえて、vol.2「注目されるABW、海外事例と成功のポイント」編では新しい試みにチャレンジするオフィスの具体例をご紹介します。
 
 

 

 

山下 正太郎(Yamashita Shotaro)

コクヨ入社後、戦略ワークスタイル実現のためのコンサルティング業務に従事。2011年グローバル企業の働き方とオフィス環境をテーマに創刊したメディア「WORKSIGHT」の編集長を兼務。

文/株式会社ゼロ・プランニング 写真/新見和美
PAGE TOP