チェックワード

2018.08.29

「間が持たない」という表現は辞書に載っていません

本日チェックワード 66「間が持たない」

「次のアポまで1時間半か。この辺にはカフェもないし、間が持たないね」

 得意先回りをする中で、先輩社員が上記のようにつぶやきました。あなたも「そうですね」と相づちを打つかもしれませんが、実はこの言い方に間違いが含まれていることを知っていますか?
「間が持たない」は、時間を持て余したり、会話が途切れて気まずい時間ができたりする状況を説明するときに用いられる表現ですが、辞書に載っているのは「間が持てない」という言い方のみ。「間」という言葉にはさまざまな語意があり、「ひと続きの時間」という意味もあります。上記の例でいえば、「空き時間ができてしまって“間”が途切れてしまう(=間が持てない)」となるわけです。ただ、「持つ」には「持ちこたえる、その状態が保たれる」という意味もあるため、「一続きの時間が続かない=間が持たない(保たない)」と考える人が増えています。実際、文化庁が発表した2010年実施の「国語に関する世論調査」によれば、60パーセント以上の人が「間が持たない」を正しい言い方ととらえています。
 ビジネスシーンで時間を持て余しそうなシチュエーションになったら、さらっと「間が持てないですね」と口にしてみてはどうでしょう。「間が持たない、じゃないの?」と突っ込んでもらえば、まさに「間が持てる」でしょう。

この使い方で差が出る

・休憩時間が2時間もあるなんて、間が持てないですね。
・お客さまが乗り気でなくて、間が持てなくて困りました。

監修/篠崎 晃一(Shinozaki Koichi)

東京女子大学教授。専門は方言学、社会言語学。『例解新国語辞典』(三省堂)編修代表や、テレビ番組「ワーズハウスへようこそ」(日本テレビ系)の監修など幅広い分野で活躍。『えっ?これっておかしいの!? マンガで気づく間違った日本語』(主婦の友社)など、日本語の誤用に関する著書も多い。