組織の力

2018.07.30

フリーランス活用で企業が進化する時代へ〈後編〉

フリーランスは、同じゴールに向かうビジネスパートナー

前編では、フリーランスという働き方を選択する人が増え、その市場規模が拡大している背景、さらに、フリーランスの現状への満足度が会社員に比べて高いことを紹介した。また、株式会社Warisが提示する「変革型フリーランス」についても、その定義や特徴に触れた。後編では、企業によるフリーランス活用の現状・課題やメリット、さらに、企業はフリーランスとどのような関係を築いていく必要があるのかについて、引き続き、Waris ワークアゲイン事業統括/Waris Innovation Hubプロデューサーの小崎亜依子氏に伺った。

企業慣習と社会全体の理解の浅さが
フリーランスの活用を阻む

シェアリングエコノミーをはじめとしたビジネス構造の変化、ワーカーの働き方やキャリアへの意識の変化、企業を悩ます人材不足…こうした要素を背景とするフリーランスの増加に伴い、フリーランスを積極的に活用する企業も出てきている。Warisのクライアント企業数の変化を見ても、2014年8月末時点では240社あまりだったのが、2018年6月末時点では約1500社と、この4年あまりで6倍以上に増えている。ここ数年でフリーランスを取り巻く環境は大きく変わってきたとはいえ、日本の社会全体を見ると、「企業によるフリーランスの活用は、まだまだ浸透していない」と小崎氏は言う。
 
「まず、フリーランスという人材の存在を知らず、人材活用の選択肢にも上がらないという企業が多く、社内の規約で個人事業主(フリーランス)とは契約できないという企業もいまだに多くあります。また、雇用関係の下、出向先の企業に出勤し、決められた勤務時間内で業務を行なう派遣社員と違い、その道のプロとして業務を限定して契約を結ぶフリーランスとでは雇用関係がまったく違いますが、その違いへの理解が不十分なため、ビジネスパートナーやプロフェッショナルとして対等な立場で接していなかったり、本来の業務外のことまでやらせたりという企業も少なくありません」
 
「日本の企業を見ていると、業務の切り出しがうまくできていないところが多いように思います。解決したい課題はあっても、具体的に外注したい業務内容が決まっていない案件も多く、フリーランス側が提案することも多々あります。また、担当者レベルでしかフリーランスと連携できておらず、担当者が変わった途端にうまくいかなくなった、というケースも見られます。こうしたフリーランスと企業との間のコミュニケーション不足、そして、お互いへの期待値のズレが、トラブルの要因となることも多々あります」
 
「企業によるフリーランス活用が進んでいない現状は、フリーランスに対する社会全体の理解がまだ進んでいないことに起因します。弊社ではハイスキルのフリーランスを『変革型フリーランス』と称し、“高い専門性を持ち、取引先企業と対等な関係を通じて、企業の組織変革やイノベーション創出の触媒としての役割を担うフリーランス”と定義づけましたが、このあり方を社会に浸透させていきたいと考えています」
 
 
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専門的で高度な知識やスキル、幅広いネットワーク…
フリーランスが、社内にないリソースを提供する

企業慣習や社会全体の理解の浅さといった課題はあるが、Warisのクライアント数の増加が示すように、企業側のニーズは確実に高まっている。また、企業にとってフリーランスを活用するメリットは、不足する人材の補完以外にもある。
 
「フリーランスは、専門的で高度な知識やスキル、幅広いネットワークなど、社内にはないリソースを持っています。社内で共有している閉じた情報に加えて、フリーランスがさまざまな人と浅く広くつながる“弱いつながり”(マーク・グラノヴェッター提唱/接触回数が多い、一緒にいる時間が長い、情報交換の頻度が多い、心理的に近い、血縁関係にある、といったような関係が「強いつながり」であり、「弱いつながり」はその逆)からの多様な情報が流入することで、企業が新たなネットワークへアクセスできるようになり、イノベーションのきっかけにもなり得ます。そうした人材がプロジェクトに加わることで、企業が得るものは非常に大きいでしょう。また、プロジェクト単位で業務委託ができるため、必要なときに必要なだけ人材を確保することができます。これはとくに、人材確保にお金をかけられない中小企業や、スピード感を重視するスタートアップにとっては、大きなメリットになるでしょう」
 
 
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出典:「変革型フリーランス実態調査」より

 
「また、変革型フリーランスへの聞き取り調査から、その多くが仕事で求められる高度なスキルに加え、明確なビジョンやモチベーション、そして良質なネットワークを持っていることがわかりました。それをまとめたのが、フリーランスとして成長し、活躍し続けるためのトライアングル・モデルです。この3つが相互にポジティブに影響し合って、螺旋階段のようにフリーランスの成長を促進していると考えられます」
 

 

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出典:「変革型フリーランス実態調査」より

 
フリーランスは成果を出さなければ評価されず、次の仕事にもつながらない。つまり、常に成長し続けなければならず、言い換えれば、常に成長し続けている人材だと言える。そうした人材を活用することは、企業にとっても意義のあることなのだ。
 
 
 

小崎 亜依子(Kozaki Aiko)

株式会社Waris ワークアゲイン事業統括/Waris Innovation Hubプロデューサー。明治大学「女性のためのスマートキャリアプログラム」講師。日本テレワーク学会会員。北九州市未就業女性の活躍戦略策定事業アドバイザー(2017年) 。1996年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2002年ピッツバーグ大学公共政策国際関係大学院修了 (公共政策マネジメント修士)。野村アセットマネジメント株式会社を経て、留学・出産育児で 5 年のキャリアブランク後、NPOのアルバイトで復職。2007年より株式会社日本総合研究所で「なでしこ銘柄」における企業分析などを担当した後、2015 年(株)Warisに参画。自身の経験を活かし、キャリアブランクのある女性の再就職支援「Warisワークアゲイン事業」を手がけるとともに、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。著書に『女性が管理職になったら読む本』(翻訳・構成を担当)、『スチュワードシップとコーポレートガバナンス―2つのコードが変える日本の企業・経済・社会』(共著)、などがある。

文/笹原風花 撮影/荒川潤
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