チェックワード

2018.06.01

「憮然とする」の底には攻撃的な感情はない

本日のチェックワード 61「憮然とする」

「異動の内示を受けて憮然としました」

希望しないセクションへの人事異動が決まった後輩から上記のように告げられたら、あなたはどんなリアクションをしますか? 後輩をなだめようと、「気持ちはわかるけど、怒っても仕方ないでしょ」などと声をかける人もいるのではないでしょうか。

「憮然とする=怒りでムッとする」だと思っている人は少なくありません。しかし正しくは「失望や不満で虚しくやりきれない思いを感じ、呆然とすること」といった意味。攻撃に転じそうなニュアンスを含む表現として使われるようになってしまいましたが、本来は「がっかりして固まる」イメージの言葉なのです。今回のケースでいうと、後輩が正しい意味で「憮然とした」という表現を使っているのだとすれば「異動が決まって落胆した」と打ち明けていることになります。この場合、先輩としては「ひと皮むけるチャンスだよ」などとまず元気づけるのが正攻法といえるでしょう。

 会話の中で「憮然とする」という表現が出てきたら、「怒ってる!」と早合点せず、相手がどのニュアンスでこの表現を使っているのかを判断した方がよさそうです。

 

この使い方で差が出る

・新人のレポートを読んで、研修の成果が感じられず憮然としました。
・品質検査の結果に憮然としてしまいました。

監修/篠崎 晃一(Shinozaki Koichi)

東京女子大学教授。専門は方言学、社会言語学。『例解新国語辞典』(三省堂)編修代表や、テレビ番組「ワーズハウスへようこそ」(日本テレビ系)の監修など幅広い分野で活躍。『えっ?これっておかしいの!? マンガで気づく間違った日本語』(主婦の友社)など、日本語の誤用に関する著書も多い。