仕事のプロ

2018.04.26

企業内の常識にとらわれず新風を起こす〈後編〉

自ら働きかけて異業種間コラボを実現

「うちでは前例がないから」という声に勝てず、実現を見ない企画は多いのではないだろうか。しかし一方で、「社内の常識」という壁を越えて世に出る商品やサービスもある。そんな「社内初」を次々と実現するカゴメ株式会社家庭用営業三部の辻本美紀さんに、総合オンラインストアAmazon.co.jp(以下、Amazon)とのコラボレーション企画について経緯をお聞きした

Amazonとの共同企画で
男性向け料理キットを開発

カゴメ株式会社では2017年秋、Amazonと、「Amazonのお客様の野菜不足をゼロにする」というテーマで共同プロジェクトを立ち上げた。両社の社員が約20名ずつ出席してワークショップを開催し、新しい商品やサービスをつくりだす、という内容だ。
 
現在、いくつかのプロジェクトが実現に向けて動いており、2018年5月にはその第一弾として、『母の日に お手軽料理キット』と名付けられた、父親と子どもが一緒につくる料理キットの販売がスタート。両社で扱っている食品をセレクトしてボックスに詰め合わせてあり、セットされた商品を使って「燻製シーフードトマトパエリア+スパニッシュオムレツ」などのメニューを簡単につくることができるものだ。Amazonとの共同プロジェクト全般に携わる辻本美紀さんは、今回発売の商品について次のように語る。
 
「料理キットのアイデアを思いついたのは、男性向けの料理教室『メンズキッチン』を主宰する福本陽子先生の講演会を聞いたことがきっかけでした。男性が料理をすることが女性の社会進出やダイバーシティ推進につながるのはもちろんですが、それ以前に、男性が料理をするといいことがたくさんあるんだ、と感動したんです。実際に福本先生にメニューの監修者として企画に加わっていただいたことで、よりターゲットになる男性に刺さるレシピになったと思います」
 
 
 

課題感を常に持っていれば
チャンスを逃がさない

それにしても、Amazonとのコラボレーションという発想がなぜわいたのだろうか。辻本さんに聞いてみると、「大きいことがしたかったから」と笑いながら答える。
「大きいこと、というと山っ気が感じられるかもしれませんが、わかりやすく言えば、カゴメの命題である『日本の野菜不足をゼロにする』を解決したかったということです。営業の仕事をしていると、どうしても売上げにばかり目が向きがちで、大テーマになかなかアプローチできません。ただ、営業活動を通して、お客様のライフスタイルをよりよく変えたい、より健康に生き生きとした毎日を送ることに貢献したいという思いがありました。そこで、まずは社内でマーケティングや広告のセクションと一緒に何かできれば、とずっと考えていました」
 
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辻本さんは現在、家庭用営業第三部の一課で、eコマースに携わっている。Amazonは主要取引先の一つであり、年2回ずつ両社の部門のトップはじめ、関係者が一堂に集まってミーティングを開催している。辻本さんはその場でプレゼンテーションを行い、「日本の野菜不足をゼロにする」という課題に向けて両社で考える場を設定したい、と話した。
 
「そこで、Amazon様から、マーケティング領域での協業を広げる為のワークショップの開催を提案いただきました。ありがたいお話だと思い、『Amazonのお客様の野菜不足をゼロにしたい』という以前からもっていた強い思いをお話しし、『両社のリソースを出し合って、5年後、10年後の未来を一緒に考えていきましょう』ということになりました。ワークショップ実現が決まってからは、いくつかのチームに分かれて話し合うことを前提に、『地産全消・復興支援』、『ダイバーシティへの対応』など8個の大まかなテーマを設定しました」
 
こうしてカゴメとAmazonの社員が集まり、「1日に必要とされている野菜350グラムを取る」をテーマに、カゴメとAmazonのリソースを使ってどんなイノベーションを起こせるのかを、8チームに分かれて話し合った。その一つが今回リリースされた料理キットの企画であり、それ以外のアイデアも水面下で動いているというわけだ。
 
ここでまず注目すべきは、辻本さんの提案力だ。Amazonから興味を示された段階ですぐに、『野菜不足をゼロにする』というカゴメの命題にアプローチする行動につなげている。常に課題感をもち変化を恐れず行動しているからこそ、偶然もたらされたチャンスをしっかりと活かすことができたのだろう。
 
 
 

辻本 美紀(Tujimoto Miki)

カゴメ株式会社東京支社家庭用営業三部一課主任。2005年入社。九州支店での営業職を経て2010年にギフト事業部配属となり、カゴメ創業以来初の焼き菓子『トマッティーニ』の開発を手がける。2015年より東京支社営業三部一課でeコマースの営業に携わり、Amazonとの共同プロジェクトを実施。


カゴメ株式会社
1899年創業。トマトなど野菜の恵みを活かした飲料や食品を提供し、消費者の健康に貢献する食品メーカー。近年は“「トマトの会社」から「野菜の会社」に”というブランドステートメントを掲げ、生鮮野菜やジュース、調味料、冷凍素材、サプリメントなど野菜を手軽に摂取できる商品や、野菜に関する健康情報を提供している。

文/横堀夏代 撮影/荒川潤
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