仕事のプロ

2018.04.17

エアークローゼットにみる行動力が導く新規ビジネスの展開法〈前編〉

「すべての人は正しい」が生んだ新しいサービス

プロのスタイリストが顧客一人ひとりに合わせて洋服を選び、レンタル制で毎月届ける――「airCloset(エアークローゼット)」はそんなユニークな形態の、女性向けファッションレンタルサービスだ。このサービスを運営する株式会社エアークローゼットの代表取締役社長 兼CEOの天沼聰氏は、「私たちは洋服ではなく、『新しいファッションとのワクワクする出会い』をお届けしたいのです」と強調する。前編では、先進的なビジネスモデルを支える天沼氏の発想法や信条についてお聞きした。

ジャンルにとらわれず
100件以上のアイデアを出し合う

 天沼氏はイギリスの大学を卒業後、コンサルティングファームや楽天株式会社で、ITやweb、戦略策定などを専門領域として活動してきた。その後、コンサルティングファームで共に仕事をしてきた2人の仲間と共に、「新しいライフスタイルをつくる」という理念のもとに株式会社ノイエジークを設立し、ビジネスを模索し始めた(その後、サービス名と会社名を統一するため、「株式会社エアークローゼット」に変更)。「ライフスタイル支援」という起業当初からの目的に加えて、設立メンバーに共通するバックグラウンドである「IT」、新しい社会のあり方としてメンバーが共感する「シェアリングエコノミー」(人と人がモノやサービス、時間などを共有しながら利用する社会的システム)という観点から、ビジネスアイデアを100件以上出し合ったそうだ。
「日用品のデリバリーや、ロンドンの街にみられるようなナイトバスの運行など、自由にアイデアを挙げていきました。最終的にファッションレンタルサービスが残ったのは、たくさんのお客さまにワクワク感を届けるサービスになると直感したからです」
 
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妻の行動に対する「なぜ?」が
アイデアの原点だった

 天沼氏の中でファッションとワクワク感が結びついたのには理由があった。アイデアの原点になったのは妻の行動習慣だ。彼女は天沼氏の10倍は洋服を持っているのに、外出前になるといつもクローゼットの前で「着る服がない」と悩んでいた。いざ買い物に出かけても決まったショップにしか行かず、買う服といえば数か月前に買ったものと似た色合いやデザインの服ばかり。創業メンバーのうちの1人も、「自分の妻も同じ」と共感した。
 ファッションが好きなはずなのに、なぜ新しいショップを見たり、今まで着たことがないタイプの服に挑戦したりしないのだろう。天沼氏は創業メンバーの2人と共に考えをめぐらせ、「環境やライフスタイルの変化により、新しいファッションと出会う機会が減っていくことが行動の背景にあるのではないか」と仮説を立てた。
 二十代後半以降の女性は、仕事で責任ある立場に立ったり、子育てが始まったりして自分の時間が減ると、ゆっくりいろいろなショップを回ったりファッション誌を見たりする時間は取れなくなる。するとどうしても、自分に確実に似合うと固定観念で思っている色や形の服を選んでしまう。
 一方で、新しいファッションを求めているのに、自分が持っているアイテムは似たものばかり。だから着る服がない、と悩むことになってしまうのではないかと考えた。ここから出てきたのが「仕事や子育てで忙しい二十代後半から四十代を中心とする女性に、新しいファッションとのワクワクする出会いを届ける」という基本コンセプトだった。
 
 

「ビジネスモデルありき」ではなく
目的からビジネスの形を構築する

 創業メンバーの3人はいずれもITのバックボーンを持っているため、ユーザーが新しいファッションに出会うための手段としてITを最大限に活用することは当初から考えていた。具体的なアイデアとして、いわゆるバーチャルリアリティの世界で新しい着こなしやブランドを体験してもらうアイデアなども挙がったという。しかし、ファッションは最終的に顧客が身につけて感じるものであり、周りの人にどんな印象を与えるかも重要だ。だから、洋服を実際に届けるサービスにこだわった。
「また、お客さま自身ではなくプロのスタイリストが服を選ぶことによって、もっと自由に新しいファッションに出会う環境がつくれると考えました。『ワクワクする新しいファッションとの出会い』というコンセプトが生まれたことで、具体的なアイデアがどんどん拡がっていきました。ビジネスモデルを先に構築したわけではなく、ワクワクする出会いをつくるにはどんなサービスにしたらいいだろう、とあくまで目的から手段を考えたのです」
 サービスに先駆け、天沼氏らはまずプレスリリースを発表した。前例のないアイデアは多くの媒体で取り上げられ、天沼氏が想定していたより1ケタ多い人数が会員として事前登録。そして2015年のサービス開始以降も会員は順調に増え、2017年12月には会員数15万人を突破した。「スタイリストが服を選ぶ」というサービスも強い支持を受けた。2017年10月に同社が月額会員に向けて実施した利用者アンケートでは、スタイリストがセレクトする“パーソナルスタイリング”に対するユーザーの満足度は91.8%となっている。
 
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株式会社エアークローゼット

“新しいライフスタイルをつくる”を理念に株式会社ノイエジークとして2014年設立(2015年に「株式会社エアークローゼット」に商号変更)。2015年2月に女性向けファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」の提供を開始し、現在は登録会員数15万人に。ファッションスタイリングサービス「pickss(ピックス)」や、不動産会社エイブルと提携運営する実店舗「airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)」など、新形態のビジネスも続々と展開している。

文/横堀 夏代 写真/石河正武
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