組織の力

2017.12.12

健康経営推進をサポートする睡眠の「技術」〈後編〉

ハイパフォーマンスは起床の時点から始まる

企業に向けて睡眠改善研修を行う株式会社ニューロスペース代表取締役社長の小林孝徳氏は、「眠りの質によってビジネスの生産性は大きく変わる」と説き、「睡眠の技術を身につければ、良質な眠りをとることは可能です。その技術習得は、決して難しいことではありません」と語る。後編では、提供していらっしゃる睡眠改善プログラムのエッセンスをお教えいただく形で、典型的なビジネスパーソンが午前中・午後・寝る前にどんな過ごし方をしたらいいのかアドバイスしてもらった。

起床4時間後が
クリエイティブワークに適している

 朝に起きるのがつらい、眠れなければならない時間に寝つけない、睡眠時間をしっかり取っているはずなのに疲れが取れない……など、睡眠に関して悩みを持ち続けているビジネスパーソンは多い。しかし、企業などに向けて睡眠改善研修を提供する株式会社ニューロスペース代表取締役社長の小林孝徳氏は次のように語る。
「睡眠は技術です。スキルを身につけさえすれば、眠りの悩みを解消し、良質な睡眠をとることができます。そして、眠りそのものだけではなく1日の身体リズムを知れば脳が働きやすい時間帯やルーティンタスクに向いている時間帯を見極められるので、身体のリズムにフィットする仕事のやり方に変えてパフォーマンスを上げることが可能になります」
 そこで今回は、6時に起きて24時に眠るビジネスパーソンの1日を想定し、よい眠りと生産性アップに役立つ過ごし方をお教えいただいた。もちろん、シフトワークで起床や就寝の時間が不規則になったり、残業のために理想的な過ごし方ができなかったりする局面も出てくるだろう。年齢や体質によっても、よい睡眠やパフォーマンスにつながる過ごし方は少しずつ変わってくる。しかし、寝る前の過ごし方など参考にできるところは多いはずだ。
 朝に大切なのは、起きたらすぐに日光をしっかり見ること。この行動によって、眠りのもとになるメラトニンというホルモンの分泌がストップし、身体が覚醒モードに入るからだ。そして、「午前中は頭が冴えて仕事がはかどりやすい」となんとなく実感している人も多いと思うが、これは時間医学の観点からも正しいという。
「特に起床4時間後からの1時間前後は、クリエイティブワークに向いた時間帯といわれています。例えば午前6時に起きている方なら、10時から11時ぐらいですね。この時間をメールチェックやルーティンタスクに使ってしまうのはもったいないので、新規プロジェクト立案など新しい仕事に充てるのがお勧めです」
 
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仮眠でほどよく睡眠圧を下げて
午後の生産性を上げる

 昼食後に眠気を感じる人は多いが、これは起床6時間後に深部体温が下がることが原因の一つだという。その対処法として小林氏はこのタイミングでの仮眠を推奨する。
「睡眠はよく圧力にたとえられます。起床6時間後は、睡眠圧がたまってくる時間帯。そのまま午後の仕事に入ると、集中力が低下し、ミスを起こしやすくなります。また、睡眠圧をためたまま午後を過ごすと、帰宅中の電車などで30分以上爆睡してしまうことにもつながりやすく、夜の眠りが浅くなってしまいます。昼食後などに、10分でもいいから仮眠をとってほどよく睡眠圧を下げるのが理想的です」
 効果的な仮眠にはコツがいくつかある。本格的な睡眠に移行しないよう、チェアに座ったままなど横にならずに眠り、時間は30分以内にとどめること。そして、仮眠に入る前にカフェインをとることもよい仮眠に役立つ。カフェインの覚醒作用は摂取30分後から現れるといわれており、仮眠から目覚めるころに効き始めるためだ。
「最適な時間帯に仮眠をとるのは難しいかもしれませんが、眠気を感じたときに少し目を閉じるだけでも効果は期待できます。ただし、夕方以降の仮眠は、夜の眠りに影響するので控えましょう」
 日中にわずかでも仮眠がとれた場合、夕方になると深部体温は再び上がってくるので、午後4時から5時頃は、午前中ほどではなくてもクリエイティブワークに向いているという。「会議などをこの時間帯に設定してもいいのではないでしょうか」と小林氏は提案する。
 

株式会社ニューロスペース

「睡眠の悩みに関するソリューションの提供」をミッションとして2013年に創業。外食産業やIT企業をはじめとする多くの企業に向けて、大学や医療機関と連携して開発した睡眠改善プログラム研修を提供している。その他、学校現場での睡眠リテラシー普及活動や、最先端技術を取り入れた次世代の睡眠テクノロジー開発などにも精力的に取り組む。

文/横堀夏代 撮影/石河正武
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