PDCA

2017.11.08

PDCAサイクルの具体的事例 

PDCA5:成果を出すための方法を学ぼう

PDCAサイクルが明暗をわけた、
新商品開発プロジェクト

今回は、とある企業での実例から、PDCAを上手く活用して成功したプロジェクトと、PDCAをうまく回すことができずに失敗したプロジェクトを取り上げてみたいと思います。
その違いから、PDCAを回すコツを掴んで頂ければと思います。
 
その現場は、とある食品メーカー。「今までの当社にはない、今の消費者に受け入れられる新商品を開発せよ!」という社長命令が下りました。早速、社内に2つのプロジェクトチームが組まれ、メンバーが集められました。締め切りは、半年後の社長プレゼンです。
 
 

Plan:プロジェクトの計画作り

A、B両方のチームとも、メンバーが集まって、どう進めていくか、何をしていくか、計画を作成しました。
 
【Aチーム】
まずは、商品開発部に在籍経験のある人がリーダーに選ばれました。リーダーは新商品開発を進める上での手順が分かっているので、早速、メンバーと議論し、やるべきことをリストアップしました。そして、メンバー一人ひとりにテキパキとタスクを割り振っていきます。
 
【Bチーム】
リーダーがメンバーの推薦で決まると、リーダーはこう言いました「このプロジェクトの目的を再度、確認しよう」と。そこでメンバーは、プロジェクトのゴールである「今までにない新商品とは何か? 」という点から議論し、その上で、新商品を開発するために、いくつかの目標に落とし込んでいきます。
まずは、今の消費者のニーズは何か? を明確にして、データで示せるようにすること。次に、商品が完成するために必要な要素は何か、項目別に目標を列記しました。さらに、役割分担も協議の上、決定していきました。モレがないか、いつまでに誰が何をするか、を丁寧につぶしていったのです。
 
こうして2チームの商品開発はスタートしました。
 
 

Do:開発プロジェクトを進行させる

【Aチーム】
メンバーそれぞれが、リーダーが割り振った各種タスク(ToDo)を1つずつ実行していきます。ただ、担当業務を続けていく中で担当が不明瞭な部分が見つかる、という問題が起きていましたが、「誰かがなんとかするだろう」と他人任せになり、タスクにモレが生じてしまいました。さらに、メンバーによっては本業が忙しく、プロジェクトの方が進まないという状況も出てきました。リーダーは、その遅れに気づいてフォローしていましたが、メンバーによっては、「なんでこのプロジェクトやっているんだ・・・」と不満を口にする者も出てきました。
 
【Bチーム】
Plan段階で担当と役割を明確にしていたので、分担が不明瞭な点はありませんでした。また、業務フローに沿って、次の担当者への業務受け渡しもスムーズに行われていました。ただ、Bチームでも、本業が忙しくてプロジェクトの仕事が進まない、という事態が発生していました。リーダーは事態を改善させようと、フォローに入ると同時に「このプロジェクトは何のためにやっているのか」をメンバーと話し合いました。そして、プロジェクトが進まない原因が、緊急度が高い仕事を優先してしまっていることにある、とわかりました。そこでリーダーは、メンバー一人ひとりに、このプロジェクトの重要性について今一度考えさせたのです。このリーダーからの問いかけで、メンバーも仕事の優先順位を再度捉え直すことになりました。
 
 

Check:プロジェクトの進捗度合いをチェックする

【Aチーム】
リーダーが懸命にチームを引っ張りながら、プロジェクトが進んでいる状態でした。プロジェクトが4ヶ月を過ぎたところで会議が開かれました。当初の計画通りに進んでいるか、現時点での課題は何か、今後のタスクの優先順位はどうか、を共有するためです。各タスクの達成度を数値で確認していきますが、プロジェクトの計画段階で、数値での判断軸を入れていなかったため、なんとなくの感覚による達成度の確認となってしまいました。それでも、リーダーは達成度が低いタスクを中心に再度スケジュールを引き直します。ただし、本業が繁忙期に入っており、全員が、このスケジュールに若干無理があると感じながらも、「やるしかない」と言い聞かせて、取り組むことで会議は終了しました。
 
【Bチーム】
Bチームも毎月プロジェクトの進捗度合いをチェックしています。計画をつくる際に、タスクごとに点数を付け、その集計結果を元に進捗度合いを数値として図っていました。これを見ると、どのタスクが遅れているのか一目瞭然でした。各タスクの担当者は、この数値を見ることで、遅れを挽回しようと奮起します。また、他のメンバーのスコアもわかるので、自主的に他の担当者のヘルプに入ることもありました。こうして進捗の遅れを確認しながら、メンバーが可能な限り協力する体制でプロジェクトが進んでいきました。
 
 
 

原 佳弘(Hara Yoshihiro)

Brew(株)代表取締役。人材育成プロデューサー/マーケティングコンサルタント、中小企業診断士、中小企業基盤整備機構認定 人材支援アドバイザー。1973年生まれ。横浜市立大学卒業。(旧)建設省所管の市場調査機関にて経営企画を担当後、法人向け研修・コンサルティングを行う会社へ。階層別研修から営業やマーケティングなど専門領域の研修やコンサルティングの設計を10年以上行う。2014年、Brew(株)設立。専門分野を持った300人以上の講師コンサルタントとパートナーを組み、企業課題に応じたマーケティングコンサルティングや人材育成を企画提供している。著書に「研修・セミナー講師が企業・研修会社から選ばれる力(同文館出版)」がある。

イラスト/ちぎらはるな