組織の力

2017.08.07

最新の脳科学とモチベーション理論を応用した人事評価制度〈後編〉

パフォーマンスマネジメント制度の効果とは?

アパレル業界のリーディングカンパニーであるギャップジャパンは、従業員の意識改革や、新たな働き方の定着に向けて、2014年に最新の脳科学研究に基づいた新たなパフォーマンスマネジメント制度(GPS)を導入した。この新たな制度を推進してきた、ギャップジャパン人事部シニアマネージャーの佐藤陽子さんに、新制度の特徴や、導入後の社内の変化についてお聞きした。

チャレンジングなゴールを自ら考え、取り組んでいる
パフォーマンスマネジメント制度(GPS)とは

『Growth Mindset(成長させる考え方)』を基盤とした、従業員のパフォーマンス向上をめざすパフォーマンスマネジメント制度(GPS)。具体的には、どのような特長があるのだろうか。佐藤さんによると、4つの要素があり、『パフォーマンススタンダード』で社員に求められる行動や考え方の基準を共有し、『ゴール設定』、『対話とフィードバック』、『報酬』というプロセスを通じて従業員の成長を促進し、パフォーマンス向上を進めているという。

「まず1つめの要素『パフォーマンススタンダード』では、新たに設定したパフォーマンス目標の考え方(基準)を言語化しています。それが、『高い目標を掲げること』『誠実さを忘れないこと』『努力を惜しまないこと』『会社の価値観を大切すること』『失敗から学ぶように努力すること』『マネージャーは部下のやる気を高め、成長を促すフィードバックをすること』というポイントです」

「従来のように結果達成だけを見るのではなく、会社の成長につながる内容でチャレンジしているか、失敗から速やかに学び、次の行動目標を実行しているかなどを見るようになりました。
実際に『パフォーマンススタンダード』ができたことで、従業員も上司も結果だけでなく、そのプロセスや取り組む姿勢を、より重要視するようになりました。結果は外的要因で変動しやすいものもありますが、本人がどのように取り組んだかは、ほかの要因によって変化するものではありません。しっかりと従業員の成長に焦点をあてた会話が上司と行われるようになったと思います」

「2つめの要素である『ゴール』では、目標の期間などを柔軟に設定できます。従来の制度では、評価と同じく1年単位の目標でしたが、GPSでは1年というしばりはなく、3ヵ月や6ヵ月の短期間でもいいし、複数年でもかまいません。また、何をいつまでにやるかというような固定的でタスク的な目標ではなく、ビジネスにどんなインパクトを与えるかという実効性を重視した目標を考え、難易度の高い、頑張らないと達成できないような自身の成長につながるゴールを自ら設定するようにしています。そのため、以前のように多くの目標を設定するのではなく、挑戦すべきことをいくつかに絞って目標として持たせるようにしています」

具体的に、どのような目標を立てているのかと聞いてみると、
「人事部で例を挙げると、上司がメンバーに対して『ギャップブランドを社内外にもっと認知させていく』という大きな目標を与えます。それをもとにメンバーは自らの目標を具体的に考え、例えば『いろんなイベントに出て、ギャップについて語る機会をつくっていく』とか、『CSRの取り組みとして、無職の若者への職場体験といった就労支援を行い、若年層を中心にギャップブランドを広めていく』などがでてきます。ここで重要なのは、新しいアプローチを取り入れたり、これまでやったことがないことに取り組んだり、社員にとって困難な目標になっているかどうかです。従来通りのやり方を少し改善したり、繰り返すのではなく、少し難しいと感じても、高い目標を掲げ、努力を惜しまず挑戦する、そのプロセスが評価されるからです。また新たな制度では、柔軟にゴールを設定でき、状況にあわせて変更も可能で、それを上司もしっかりサポートしていきます」



文/西谷忠和 撮影/石河正武