仕事のプロ

2017.06.13

日本人がグローバルに活躍するためには〈後編〉

和の心と洋のロジックを併せ持つことで、最強の企業を築ける

海外赴任や、外国籍スタッフのマネジメントなどの機会が増え、グローバル社会での対応が求められるようになってきた。パナソニックにおいて、主任、課長、グループ会社の副社長などを歴任し、多国籍のスタッフで構成されるチームづくりなどのマネジメントも数多く経験してきた米山不器氏に、グローバル社会で求められる「リーダーの条件」や「世界で戦う日本企業に必要なこと」などをお聞きした。

語学以外のコミュニケーション手段をもてば
6億円超の売上増も実現できる

パナソニックでは合弁会社での交渉や新会社の立ち上げに携わった米山氏。その後も、同社においてイギリスのソフトウェア会社のM&Aを担当したり、ITシステムの海外事業のグループマネージャーなど、多国籍のチームづくりを経験。2008年には、計測器の外資系メーカーにヘッドハントされ、日本法人社長に就任。リーマンショックの不況を乗り越え、組織横断的な業務改善プロジェクトを指導し、6億円超の売上増を実現させた。

日本人と欧米人が一緒に働く組織を数多くマネジメントしてきた米山氏が考える、多国籍や他民族が共に働くうえで必要なこととは、いったい何だろうか。

「もちろんベースとなるのは、『論理的な説明』だったり、『会社とは違う場での交流』だったりしますが、管理職や経営者として多くの従業員をマネジメントするには、「経営指標やビジョン、ミッションなどを共有して、それに向かって組織全体で取り組むことが重要です」

これによって、組織として更なる上のステージを目指すことができる。前職の外資系の計測器メーカーで日本・韓国の事業責任者を担い、6億円超の販売を拡大できたのも、「トヨタの『カイゼン』という共通のミッションを導入したのが大きかった」と米山氏は話す。        日本では、企業の経営理念やバリューなどが従業員にさほど浸透しておらず、単に掲げられているだけ、ということが少なくない。それらを社員に目指すべき指針として共有し、アクションに結びつけられるかどうかが、多国籍の人たちをマネジメントする鍵になりそうだ。



良きリーダーに求められる資質や条件は
意外にも全世界共通である

「そして、もう一つマネジメントに必要なことは、リーダーとしての姿勢。『ポジティブ』 と『謙虚さ、潔さ』をもって課題に取り組むこと」だという。

「何事にも積極的にチャレンジし、間違ったときは素直に謝り、責任を潔く認める。そういう人は『リスペクト』を受け、『信頼』もされます。Action speaks louder than words.ということわざがあるように、アメリカで一番求められるのは、「有言実行」タイプ。昔からビジネスの場面では、取引先などに対して『絶対自分から謝るな、非を認めるな』と言われますが、それは訴訟などの争い事での話で、同じ職場で仕事するなら、ポジティブと謙虚さ、潔さが大切で、これは日本にある武士道などに通じ、日本人と共通する美学だと思います」

そして、意外にも良きリーダーとなる条件や資質は全世界で共通するようだ。
「会社によって異なるところは多少ありますが、『嘘をつかない』『オープンなコミュニケーションをもつ』『部下のレベルにあわせて、自身のリーダーシップを使い分けられる』この3つが良きリーダーになる条件だと言われており、それは国籍や地域によって、変わることはありません」

2_bus_036_01.jpg


米山 不器(Yoneyama Fuki )

1979年松下電器産業株式会社(現在パナソニック株式会社)に入社。国内営業、コロンビア大学MBA留学、米国合弁会社の設立、米国の現地経営責任者、欧米企業のM&A、海外営業などに従事。その間に、アメリカには7年間駐在。その後。2008年アメリカの計測器メーカーにヘッドハントされ、日本法人社長に就任。2016年からは韓国の事業責任者を兼務し、日韓の計測器販売の責任を持つ。業績を立て直し、2017年1月に退職。2017年2月から医療カメラやスマートフォンなどに搭載されているCCDやC-MOSセンサーの検査装置の世界トップメーカーである株式会社インターアクション社にて執行役員としてリーダーの育成に取り組んでいる。

文/西谷忠和 撮影/ヤマグチイッキ